昨日の仕事中の昼間に予約録音しておいたNHKFMのかけクラで流れた「ブルー・トレイン」(廣瀬量平:作曲)(演奏)東京フルート・アンサンブル・アカデミー(6分57秒)<東芝EMI TOCZ-9138>、実に美しくてチャーミング、しかも格好よくて耳を奪われた。
空気が冷えて重くなった。幕府外国方の小花作之助と松濤権之丞は、その日は朝早くから仕事をして昼頃には連れ立って下城し、根津権現さまにでも寄ろうかとお茶の水を抜けて本郷辺りまで歩いてきた。あまりに寒かったので、取り敢えず権現さまの前に追分の高崎屋へ一杯引っ掛けようと立ち寄り、ちょうど店を出かけたとき、中山道板橋宿方面から「したあにい、したあにい」の声が響いて来た。二人は踏み出した足を引っ込めて、つい今しがたまでいた高崎屋の軒の下に身を引いた。「権さん、加賀さまだ。お前さんの本当の親父さまのお通りだ。」作之助が権之丞の肩を軽く小突いた。権之丞は苦笑いを浮かべた。「作さん、子は親を選べず、だよ。一度も会ったことがないのに親父なんてさっぱり思えんさ。わしの親父殿はやはり山崎庄兵衛さんだと思うとる。」「そうか。たしかに、そういうものかもしれんな。」二人は行列をやり過ごしてから、中山道を外れて根津権現へ向かう脇道へと入った。その角にお寺があった。山門の看板に、立派な筆文字で浄土真宗本願寺派涅槃山西教寺とあるのが見えた。「作さん、実はわしはフランスから帰ってから民草の本当の幸せとか平等思想とかちゅうもんを考えるようになった。で、こんなんを読み始めたんじゃが、なかなかよろしいんじゃ。」と、歩きながら権之丞は袂から『歎異抄』を取り出し、作之助に見せ、小声で「わしがもしも死ぬようなことがあったら、この浄土真宗のお寺に埋葬してほしいと思うようになった。」と真顔で続けた。「おやおや、権さんらしくない縁起でもないことを言いなさんな。お互いにせいぜい長生きしようぜ。」と作之助は笑った。権之丞も、はははと笑った。二人は根津権現への坂を下っていった。
昨晩ラジオ中継された原田マエストロのNHK交響楽団演奏会は、まことに凄かった。本当に素晴らしかった。こころに響いた。今朝は、早く目が覚めたので、西村先生解説のラジオ『現代の音楽』の過去の〈伊福部先生の作品特集〉の回の予約録音をしみじみ聴いた。〈シャモにこのまま政権を任せてはおけぬ。この自然のために我々が第一党になって政権を獲得しなければ。〉という物語の着想がふつふつと湧いてきた。
記事メモから。
高輪ゲートウェイ駅工事に伴う再開発工事で、明治初期に建造された鉄道が走る海上堤の保存状態のよい素晴らしい遺構が出土したらしい。
https://www.tokyo-np.co.jp/amp/article/69843?__twitter_impression=true
【11/25(水)19時~ N響公演FM生放送】
今夜は、サントリーホール @SuntoryHall_PR から、名匠ロリン・マゼールの家に住み込みを許されて指揮者として生きるためのあらゆる勉強を師事し、アメリカでキャリアを積んできた原田慶太楼 @KHconductor 氏の指揮で、コープランド/バレエ組曲「アパラチアの春」、マルケス/ダンソン 第2番など、アメリカン・プログラムをお届けします。
https://t.co/k7PEYdGfdg
今宵のラジオのNHK交響楽団演奏会がまことに素晴らしかった。原田慶太楼マエストロ、神尾真由子さんのバーバーの傑作ヴァイオリン協奏曲の圧倒的名演、コリリャーノ『航海』の繊細緻密な音響美、ドヴォルザーク『新世界』の雄弁明快なストーリー語りへの感動。神尾さんのアンコールの演奏も凄かった。
いまは亡きふたつ。中央食堂の壁にあった宇佐美圭司氏の《きずな》のたどった運命と、カザルスホールにあったアーレント氏のパイプオルガンのたどった運命とが、繋がり合って緩く悲しみを産み出し、心を悲しみに沈めるしづもり。ブルックナーの交響曲第2番をしみじみ聴きたくなる朝。
https://youtu.be/A0u1Ov8ytOQ