早朝の胸奥で弦楽オーケストラがこそりと鳴ったので、取り敢えずメモしてみた。今日もこれから仕事。
杖突きし諭吉の背中が消えてゆく第七十八国立銀行
リュックの重みが諭吉の背を苦しめてゐたらし 行員に背中揉ませて
物資とお金はこれで充分でせうか 諭吉の杖凭るる頭取室ソファー
町が壊滅する程の揺れでした 窓の外を通りゆく数多の死者たち
死者たちは大浴場へと入つてゆく 長旅疲れと傷癒やすため
河渡る大きなる靴 靴のなかに諭吉のリュックと物資とお金
靴の船頭は鬼面被りし頭取一人 あちら岸に待つ婆に渡河賃わたして
靴の船はいつの間にか頭取の靴になる 頭取の鬼面もいつしか消えて
日本銀行前の歩道に点々とこぼれて続く 靴からの水
頭取は靴よりの水こぼしつつ日本橋河岸の青き船に入る
譜面メモ。