欧米日 やらせの景気回復 | |
副島隆彦 | |
徳間書店 |
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【私のコメント】
今年の3月、ギリシア危機に際して、世界中にばらまかれたCDSという保険証券が消された。
ギリシアの『選択的デフォルト』という言葉で。
デフォルトという言葉はあるが、これはデフォルトではないということになった。これは詭弁である。
なぜそんな詭弁を使ったのかというと、デフォルトにすれば、アメリカの金融機関が発行した(売った)ギリシア国債に付随しているCDSという保険証券が、発動してしまうからである。
そうなると発行したアメリカの金融機関に支払義務が生じる。
売った先は主にヨーロッパの金融機関である。
この支払義務を発動させないために、あらかじめ、ECB(欧州中央銀行)は、CDSの保険金額に相当する約100兆円をヨーロッパの市中銀行に供給している。
こういうことがあったから、ヨーロッパの市中銀行はギリシア国債の債権放棄を申し出たのである。
『自主的債権放棄』といいながら、これは出来レースである。
その結果儲かったのはどこかといえば、ゴールドマン・サックス社をはじめとするアメリカの金融機関である。
本来はここでゴールドマン・サックスは潰れるはずだったのだ。
アメリカがヨーロッパに支払うべき保険金を、代わりにECB(欧州中央銀行)が支払ったということだ。
ECBは、何の担保もないままに、ユーロ紙幣を増刷してこれを市中銀行に供給した。こんなことをすればヨーロッパ経済はユーロで水ぶくれした経済になってしまう。
こんなことを敢えてしたのである。
一番得したのはゴールドマン・サックス社をはじめとするアメリカ金融機関である。
利益が上がったときは自分たちのもの、損失が生じたときには他人がその損失をかぶってくれる、そんな構造ができあがっている。
ECBはよくこんなバカげたことをしたもんだと思ったら、ECBの総裁であるマリオ・ドラギ総裁は、2002~2005年までゴールドマン・サックスの国際部門の副会長を務めている。
つまりアメリカの私企業であるゴールドマン・サックスを助けるために、もとゴールドマン・サックスの副会長(マリオ・ドラキ総裁)がヨーロッパの公的資金を使って、100兆円の資金供給をしたということである。
アメリカの前財務長官であるポールソンもゴールドマン・サックスの社長であり、その前任のルービン財務長官ももとゴールドマン・サックスの社長である。
今ではそれがアメリカ国内にとどまらず、ECB総裁にまでその人脈が及んでいる。
この時点でECB(欧州中央銀行)は、事実上ゴールドマン・サックスに乗っ取られているのだ。
またイタリアのベルルスコーニ首相が退陣した後を受け継いだマリオ・モンティ首相もゴールドマン・サックスの国際的顧問を務めている。
財政破綻の当事者のギリシアでも、パハンドレウ首相退陣の後を引き継いだパパデモス首相は、もとECB(欧州中央銀行)副総裁である。
つまりアメリカの私企業であるゴールドマン・サックス社の元社員が、ヨーロッパの公的組織であるECB(欧州中央銀行)の総裁になり、
ECBの副総裁がギリシアに派遣され、首相に納まったというわけだ。
国際金融の動きは国民救済のためではなく、ゴールドマン・サックスの救済のために動かされているようなものだ。
そのアメリカはといえば、QE1、QE2という量的緩和により約200兆円を金融機関に供給しながら、まったく景気は回復していない。
つまり、アメリカもヨーロッパもカンフル注射で注入しただけの紙幣増刷では、それに見合った景気回復をしていないということだ。
このような紙幣増刷を続けていけば、通貨価値の下落につながる。
ドルもユーロも下落する。
そうやって世界経済の辻褄が合うのだ。
1ドル=50円、1ユーロ=60円、そういうことになる。
短期的に円安に振れることはあっても、長期的にはそうなる。
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