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円高=株安は正しくない

2016-08-25 22:25:10 | 国際金融

木曜日

日経ビジネスオンライン より
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/243048/082200010/



円高=株安は正しくない

ポイントは金利、世界経済とリスク許容度

  •  

    大和住銀投信投資顧問/経済調査部部長

    アジア株ファンドマネージャー、チーフストラテジスト、投資戦略部長などを経て、2014年より経済調査部部長。 同社ホームページに「市場のここに注目」を掲載中。

2016年8月25日(木)

 日本では「業績や株価は為替次第」が常識です。
現在の安倍晋三政権にとっても、為替レートは重要な政策テーマになっています。
2012年末の政権発足から15年半ばにかけては1ドル=125円まで円安が進み称賛を浴びました。
しかしその後は円高に転換、足元は1ドル=100円割れ寸前となり、金融市場は「大変だ、大変だ」の大合唱です。

(図表1)円の対ドルレートの推移(週次)
出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成
 

 しかし、実際には円高が業績や株式に与える影響はそれ程大きくありません。
悪影響は誇張されています。
それだけではありません。
日本では常識となっている「自国通貨高=株安」は世界的には間違いといってよいものです。
円高に対するこうした誤った思い込みは、市場や政策に大きな悪影響を与えています。
今回と次回は円高に対する誤った思い込みとその影響について説明します。

世界の常識は「自国通貨高=株高」

 まず、なぜ「通貨高=株高」が間違いなのか。
理由は簡単です。
世界的には「通貨高=株高」の国が圧倒的に多いためです。

(図表2)円の対ドルレートとTOPIX(月次、2005-15年)
出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成
 

 まず日本について東証株価指数(TOPIX)と円の対ドルレートの関係を見てみます。
2005年以降の両者の動きを見ると、2005年や2013~14年のように円安の時は株高。
2007~08年のように円高の時は株安となっています。
円と日本株は逆相関の関係にあり、日本については「自国通貨安=株高」といえそうです。

(図表3)韓国ウォンの対ドルレートとKOSPI(月次、2005-15年)
出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成
 

 しかし、日本以外ではそうではありません。
例えば韓国です。
日本同様に輸出企業が多いとのイメージなので、ウォン高は韓国株にマイナスと考えてしまいそうですが、事実は逆です。
ウォンと韓国株は強い順相関の関係にあります。

 世界の主要15ヵ国(地域)について2005~15年にかけての通貨と株価指数の関係を調べたところ、
相関係数がある程度マイナス(両者が逆相関)なのは、日本、スイス、米国の3ヵ国だけで、
ほぼゼロの中国を除けば、他は全てプラスです。
日本の「自国通貨高=株安」を間違いというかどうかはともかく、少なくとも日本は例外であり、
世界的には「自国通貨高=株高」が一般的であることは、市場関係者であれば認識しておくべきだと思います。

(図表4)主要通貨と株価指数の相関係数(月次、前年同月比、2005-2015年)
出所:ブルームバーグ、株価指数は各国の代表的な指数、スイスフランと英ポンドは対ユーロレート、米国はドル指数、その他は対ドルレートを使用
 

 一方、日本同様に通貨と株価が逆相関の関係にあるのがスイスです。
ただし自国通貨高を抑制するための為替管理政策を中央銀行が開始した2011年以降は、スイスフランが小幅の動きに止まっているため、逆相関の関係が薄れつつあります。

(図表5)スイスフランの対ユーロレートとSMI(月次、2005-15年)
出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成
 

「金利」「世界経済」、そして「リスク選好」

 ここからは、「自国通貨高=株高」の国と「自国通貨高=株安」の国があるメカニズムについて考えてみます。
キーワードは「金利」「世界経済」、そして「リスク選好」の3つです。

 「自国通貨高=株安」の日本、スイス、米国に共通するのは金利が低いことです。
そこで便宜上、この3ヵ国を低金利国、その他の国を高金利国と呼ぶこととします。
低金利国では「自国通貨高=株安」、
高金利国では「自国通貨高=株高」になるメカニズムは、図表6のフローチャートのようなものです。

(図表6)景気・リスク許容度と株式・通貨の関係
出所:大和住銀投信投資顧問
 

 世界的に景気が好調な時は、世界的に企業業績は拡大、投資家のリスク許容度も高まって、株式市場は上昇します。
ここまでは低金利国も高金利国も同じです。

 しかし、為替市場では事情が異なります。
投資家のリスク許容度が高まれば、資金は日本のような低金利国からブラジルのような高金利国に移動します。
その結果、低金利国では「自国通貨安=株高」、高金利国では「自国通貨高=株高」となります。

 世界経済が不調な時はこの逆です。
企業業績は悪化、投資家のリスク許容度は低下して、株式市場は世界的に下落します。
一方、為替市場では、低金利国から高金利国に移動していた資金が元に戻ろうとします。
そのため、低金利国では「自国通貨高=株安」、高金利国では「自国通貨安=株安」となります。

 以上が、
低金利国では「自国通貨高=株安」、
高金利国では「自国通貨高=株高」となるメカニズムです。


業績モデルとの比較

 従来、通貨と株式の関係については、図表7のように考えられてきました。
通貨変動が企業業績への影響を通じて、株式の変動を引き起こすとの考え方です(以下、業績モデル)。
このモデルでは通貨の変動が原因、株式の変動が結果になります。

(図表7)業績モデルと景気・リスク許容度モデル
出所:大和住銀投信投資顧問
 

 一方、今回のモデルでは(以下、リスク許容度モデル)、通貨と株式の動きはどちらが原因でどちらが結果というものではなく、
世界経済の動向などによるリスク許容度の変化が原因で、
それに応じた低金利国、高金利国それぞれにおける通貨と株式の動きが結果です。
通貨と株式は、それぞれ独立して動いていることになります。

 リスク許容度モデルは株式の動きだけでなく通貨の動きも説明していることが特徴です。
これで今まで説明できなかったことが説明できるようになります

 北朝鮮のミサイル発射など日本近辺で地政学リスクが高まる時、日本株が売られ、円が買われます。
この場合、円が買われる理由はうまく説明されていませんでしたが、このモデルではリスク許容度の低下が円高の理由として説明できます。

 地政学リスクのように世界経済に関係なくリスク許容度が変動することはあります。
であれば、世界経済を外してリスク許容度以下だけにしても問題ないのですが、
地政学リスクなどのイベントによるリスク許容度の変動は通常一時的なものに過ぎません。

 これに対して例えば世界経済の悪化を理由としたリスク許容度の低下は長期にわたって持続する可能性があります。
また世界経済の動向はリスク許容度を介した経路以外にも、業績を通じて株式に影響します。
これがリスク許容度でなく、世界経済を起点にしている理由です。

通貨変動の業績への影響は大きくない

 通貨変動が業績に及ぼす影響にも触れておきます。
いわれているほど大きなものではないとの見方です。

(図表8)TOPIXの予想EPSと円の対ドルレート(月次)
出所:ブルームバーグ、トムソン・ロイターより大和住銀投信投資顧問作成、EPSは今後12カ月ベース
 

 証券会社のアナリストによる業績見通しに基づくTOPIXの予想EPS(一株当たり利益。通常、企業の税引き後利益を発行済み株式数で割ったものを指す)と
円の対ドルレートの動きを比較するとどちらかといえば逆相関の関係にあるように見えますが、
2007年や2009~10年のように、円高にもかかわらず予想EPSが増加している時期も珍しくありません。

 株式市場では円高に振れるたびに、業績を懸念する声が沸き起こりますが、図表8を見るだけでも、市場参加者の反応は行き過ぎだといえそうです。

(図表9)KOSPIの予想EPSとウォンの対ドルレート(月次)
出所:ブルームバーグ、トムソン・ロイターより大和住銀投信投資顧問作成、EPSは今後12カ月ベース
 

 図表9を見ると、業績に対する通貨変動の影響が限定的であることが、更に明らかになります。
韓国では2009~11年のようにウォン高の時にEPSが増加、2008年や2014~15年のようにウォン安の時に減少しています。
このようにEPSとウォンが同時に動いているのは、業績に対する通貨の影響よりも、世界経済の動向の影響の方が大きいためです。
典型が2008~09年です。

 2008年は大幅ウォン安になりましたがEPSも大幅減、これはリーマン・ショックにより世界経済が悪化したためです。
逆に2009年にウォンは急反発しましたが、EPSは増加しています。
これは世界経済がリーマン・ショックから立ち直ったためです。

 日本の場合は、世界経済が悪化する際に円高が進むので、業績悪化が世界経済のせいなのか、円高のせいなのか区別がつきません。
その結果、全部まとめて円高に責任を押し付けている気がします。

 しかし、韓国では通貨変動よりも世界経済の動向の影響の方が大きいことが見て取れること、
また日本でもリーマン・ショック後の2009~10年には円高にもかかわらずEPSが増加している点から見て、
業績への影響は通貨変動よりも世界経済の動向の方が大きいと考えています。

 以上、日本では円高が業績や株式市場にとっての大きなリスクと見られていますが、
通貨変動と業績や株式の関係は誤って理解されており、円高の悪影響は誇張されていると考えています。

 この誤解はゆゆしき問題です。
このために日本株は不当に低く評価されており、またこうした誤解にもとづく政策はかえって日本経済や金融市場に混乱を招いています。
次回はそうした点についてお話しします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【私のコメント】

こんな記事始めてみました。
疑問を封印して、為替一辺倒で株価を説明していた今までの私の頭の中を広げてくれる記事です。

日本の株価が不当に低く評価されている、かどうかは私には分かりません。

でもこの記事は長年の私の疑問に答えてくれる記事です。

今でも、『株価は為替次第』という記事がマスコミにはあふれています。
その結果何か本質的なものが封印されています。

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ロシア敵視とドーピング

2016-08-20 06:30:52 | 軍事・外交(日米関係)

土曜日

田中宇の国際ニュース解説 より
http://tanakanews.com/160818russia.htm


ロシア敵視とドーピング 2016年8月18日   田中 宇


 8月5日からのリオ五輪で、ロシア選手団の一部がドーピング(薬物使用)の問題で出場禁止になっている。
昨年11月、世界反ドーピング機関(WADA)の報告書を受けて、ロシアの陸上競技の分野で組織的なドーピング隠しが行われていることをロシア政府自身が認め、
国際陸上競技連盟(IAAF)がロシア陸上競技連盟(ARAF)を活動停止処分にして以来、
陸上競技を中心に、過去にドーピング違反の経験を持つ選手ら(過去の出場停止処分の期間が終わっていてもダメとされるようになった)、ロシア勢の国際大会への出場禁止措置が続いている。
Russia thinks doping scandal is latest Western plot) (The Biased Report that Led to Banning Russian Athletes

 米国からの資金の比率が高いWADAは、世界的な注目度が高い五輪に関して、ロシア選手団を、陸上だけでなくすべての分野において出場禁止に追い込むべく、
カナダの弁護士マクラーレンに「ロシアはスポーツの全分野で、国家ぐるみでドーピングをやって隠している」と読み取れる報告書を急いで書かせた。
報告書は、7月18日に発表され、7月21日の五輪の選手団リストの提出期限にぎりぎり間に合った
(報告書の発表が選手団リスト提出後になると、ロシアを国ごと締め出すための議論と手続きの時間が短くなってしまう)。
報告書の発表の直前、WADAの上層部は、米国やカナダのスポーツ選手らに、ロシアボイコットへの協力を要請するメールを大量送信した。
Can Politics Be Enough to Throw Entire Country Out of Sports?) (STATEMENT BY PAT HICKEY, PRESIDENT OF THE EUROPEAN OLYMPIC COMMITTEES

 だが、ロシア敵視が強いWADAと異なり、国際五輪委員会(IOC)には米国による冷戦型の圧力を嫌う勢力もいるため、
IOCはロシア選手団を国ごと出場禁止にする決定を出さず、
各競技の国際連盟ごとの判断に任せる決定を7月24日に下した。
WADAや米英マスコミは、IOCがロシアに甘すぎると非難した。
Wada criticises IOC for failing to ban Russian team) (IOC chooses obfuscation and chaos on Russia competing at Olympics) (WADA Urges IOC to Consider Banning Russian Athletes From 2016 Rio Olympics


 その結果、ロシアのドーピング問題の中心である陸上競技(出場予定68人)と、重量挙げ(同8人)では、ロシア選手団の全員が出場禁止になったが、
水泳、レスリング、ヨット、自転車など7種目では、過去にドーピング違反の経歴があったり、WADAの報告書で違反隠匿の疑いで名前が出てくる選手を除き、出場許可が出た。
卓球、柔道など15種目では、ロシア選手に対する出場禁止措置が行われなかった。
陸上競技では、米国で練習しておりロシアでのドーピング問題に関係ないと認められた走り幅跳びの一人(Darya Klishina)だけ最終的に出場が許された。
一方、パラリンピックの国際委員会は、ロシアを国ごと出場禁止にした。
Rio Olympics 2016: Which Russian athletes have been cleared to compete?


▼国ぐるみドーピング隠しを認めたロシア

 昨年から騒がれているロシアのドーピング問題の最大の要点は「ロシアの組織的ドーピング隠しを指摘した昨年11のWADAの報告書(ポンド報告書)の内容を、ロシア政府が全面的に認めていること」である。
WADAの報告書を受け、陸上の国際連盟(IAAF)がロシアの連盟(ARAF)を活動停止処分にした時、
ロシア側は、権利として与えられている弁明・反論の機会を設けることを申請せず、報告書に書かれている不正行為の「罪」を全面的に認めた。
この時点で、米英などのプロパガンダ機関(マスコミ)は、ロシアのスポーツ界の「底なしの腐敗」を叩き放題になった。
WADAの報告書を全面的に認める決定は、プーチン大統領の鶴の一声で決まったといわれている。
ARAF ACCEPTS FULL SUSPENSION – IAAF COUNCIL MEETING, MONACO) (Russia accepts full, indefinite ban from world athletics over doping scandal


 昨年11月のWADAの報告書は、14年末にドイツの公共テレビ局ARD(ドイツ公共放送)が放映した、ロシアの組織的ドーピング隠しに関するドキュメンタリー番組の内容がもとになっている。
WADAは、番組に出てくる陸上選手ら関係者、ロシア当局の関係者などに追加的な聞き取り調査や資料集めを行なって、11カ月かけて335ページの報告書を作った。
The secrets of Doping: How Russia makes its winners


 報告書によると、ロシアではソ連時代からドーピングがさかんだった。
陸上競技を中心に、ロシアのスポーツ選手は、コーチや露陸上連盟から、薬物を使用するよう持ちかけられ、断ると、国際大会に出させてもらえなくなるなどの嫌がらせを受ける状況だった。
ロシアのドーピング検査機関(RUSADA)は、薬物を使用した選手の尿サンプルを、運送途中や保管中に、薬物を使っていない時にあらかじめ採取しておいた同じ選手の「きれいな」サンプルとすり替えたり、
モスクワ市内に表裏2つの検査所を設け、問題ないサンプルは「表」で検査し、薬物使用者のサンプルは「裏」で検査して結果をねじ曲げていた。
検査所には諜報機関(FSB。連邦保安庁。プーチンの出身母体)の要員が出入りし、ドーピング隠しに協力したがらない検査職員に圧力をかけていたという。
これが事実なら、ロシアのドーピング隠しは「組織ぐるみ」「当局ぐるみ」「国家ぐるみ」である。
露政府が、このWADAの報告書を、何の反論もせず全面的に認めているのだから、ロシアが陸上競技において「国家ぐるみ」でドーピング隠しをしていたことが確定している。
THE INDEPENDENT COMMISSION REPORT #1


 この報告書の元になった独ARDの番組は、ロシア人のステパノフ夫妻(Stepanov)による証言と提供資料が主な証拠となっている。
妻のユリア・ステパノバ(Yuliya Stepanova)はロシアの陸上800m走の選手で、
13年にドーピングの疑いで国際陸上連盟(IAAF)から2年間の出場禁止処分を下され、
11年以降の記録を無効にされ、賞金も返却を命じられた。
彼女自身の証言によると彼女は、ロシア国内のドーピング試験で10年から薬物使用の判定が出ていたが、
3万ルーブル(当時の換算で約10万円)を払って隠蔽してもらっていた。
賞金の返却で生活資金を失った彼女は、そこでARDの番組に情報提供して「不正警報者(ホイッスル・ブロワー)」としての国際名声を得る一方、夫と子供とともにARD番組放映直前にドイツに移住し、さらにカナダに亡命申請して移住した。
彼女は陸上選手の夢を捨てきれず、今回のリオ五輪にも出場申請したが、過去のドーピング歴を理由に却下された。
Yuliya Stepanova From Wikipedia


 夫のビタリー・ステパノフ(Vitaly Stepanov)は、ロシアで育ったが15歳から米国に留学して化学を学び、ロシアに帰国して08年からロシアのドーピング検査機関(RUSADA)に勤務し、その関係で09年にユリアと知り合い結婚した。
米国帰りのビタリーは、当初から米国のエージェントとして機能するつもりだったのか、
自分の妻の分も含め、RUSADAのドーピング隠しに関与しつつ資料や動画(他の選手のドーピングに関する私的な証言など)を夫婦で集め続けた。
10年には、それをWADAに持ち込もうと連絡をとったが、WADAは無視した。
その後、西側のマスコミに情報提供する方針に転換し、14年の独ARDの告発番組として結実した。
ARDの放映を受け、ようやくWADAも動き出し、15年11月に報告書が作られ、ロシアを「国家ぐるみのドーピング隠し」の罪に落とし込むことに成功した。

 ARDの番組は、自分たちもドーピング隠しに関与した末に亡命したステパノフ夫妻の証言と情報を主力にしている。
一般的に亡命者は、亡命生活を向上させるために、亡命先が好む方向(今回の場合はロシアを極悪に描くこと)に話を誇張する傾向がある。
たとえば03年のイラク侵攻の大義となったサダム・フセインの極悪さの多くが、亡命イラク人たちによる誇張だった。
その意味で、ステパノフ夫妻は、不正警報者として問題がある
(夫妻が言うとおり、ロシア選手の多くが半強制的にドーピングに手を染めているのなら、自らはドーピングに関与していない不正警報者を探すのは困難だが)。


 ステパノフ夫妻の話を中心に作られた番組をもとに書かれたWADAの報告書の内容を、ロシア政府は全面的に事実と認めている。
この時点でステパノフ夫妻の問題は消えた。
もしビタリー・ステパノフが、ロシアの不正を暴いてへこませる「冷戦の戦士」として機能するつもりが最初からあったのなら、その策は大成功した。
彼はプーチンを打ち負かした。
The Olympics As A Tool Of The New Cold War


 WADAの報告書を受け、陸上の国際連盟(IAAF)はロシアの連盟(ARAF)を活動停止処分にしたが、
IAAF自体が、薬物使用の判定が出た選手から賄賂の金を受け取ってドーピング検査の結果を歪曲・隠蔽していたことが暴露されている。
1999ー2015年にIAAFの会長をしていたラミーヌ・ディアック(Lamine Diack。セネガル人)らが、収賄の疑いでフランスの警察に逮捕されている。
IAAF上層部は、トルコ人の長距離走の金メダル保有者(Asli Cakir Alptekin)に薬物使用の判定が出た時、もみ消してやるからといって賄賂を要求しており、腐敗はロシアだけが対象ではない。
IAAF braced for hammer blow of Dick Pound report with athletics in crisis


▼ロシア敵視のあまり拙速のマクラーレン報告書

 昨年11月のWADAの報告書は、陸上競技におけるロシアのドーピング隠しが中心になっている。
陸上競技においては、ロシア勢をリオ五輪から締め出すことができるようになったが、
他の種目においては、まだロシアを追放するのに十分な根拠がなかった。
そこで出てきたのが、今年5月中旬の、米ニューヨーク・タイムスが、ロシアのドーピング検査所のグリゴリー・ロドチェンコフ前所長(Grigory Rodchenkov)にインタビューした記事だった。
この記事でロドチェンコフは、ロシアが14年冬のソチ五輪に際し、当局ぐるみでドーピング隠しを行なっていたと述べている。
夏季五輪の陸上競技だけでなく、冬季五輪のスキーやボブスレーでも国家ぐるみのドーピング隠しが行われていたとなれば、ロシアがスポーツの全種目で国家ぐるみのドーピング隠しを行なっていたと言うことができ、米国のロシア敵視策としてふさわしい、ロシアをリオ五輪から完全に締め出すことに道が開ける。
Russian Insider Says State-Run Doping Fueled Olympic Gold


 NYタイムスの記事を受け、WADAは、以前からロシア問題の報告書作成にたずさわっていたカナダ人弁護士リチャード・マクラーレン(Richard McLaren)に、
NYタイムス記事を検証する形で、ロシアが陸上以外の多くの種目で国家ぐるみのドーピング隠しを行なってきたことを示す報告書を急いで書くように依頼した。
7月下旬の、各国(ロシア)のリオ五輪選手団リストの提出前に報告書を完成させるべく、マクラーレンに与えられた作成期間は57日しかなかった。
陸上競技に関する昨年11月のWADAの報告書が11カ月間かけて作られたのと対照的だ。
マクラーレンは、NYタイムスの後追い的にロドチェンコフに数回話を聞いただけで、他の筋に話を聞かずに報告書を作った。
他の筋からの情報提供の話もあったが、時間がないので検証しなかったとマクラーレンは報告書で書いている。
RICHARD H. MCLAREN - INDEPENDENT PERSON - WADA INVESTIGATION OF SOCHI ALLEGATIONS) (Mutko: Total of 320 Russian Athletes Qualify For 2016 Olympic Games


 ロドチェンコフは、ロシアのドーピング隠し暴露のそもそもの発端となった14年末の独ARDのテレビ番組にも登場するし、昨年11月のWADAの報告書にも登場する。
これらの時点において、ロドチェンコフはまだモスクワのドーピング検査所の現役の所長で「ドーピング隠しなどやっていない」「賄賂などもらっていない」「いろんな噂があるが全部間違いだ」と答えている。
WADAの報告書は、ロドチェンコフを「信頼できない人物」と結論づけている。
昨年11月のWADA報告書の発表後、ロシア政府はロドチェンコフを解雇し、ロドチェンコフは身の危険を感じたという理由で米国に移住(亡命)した。
そして今年5月のNYタイムスのインタビューとともに、彼は「ロシアの不正を暴く(正義の)不正警報者」に変身し、
NYタイムスでもマクラーレン報告書でも、ロドチェンコフの発言は全て正しいとみなされ、検証なしに「事実」として扱われている。
Russia's doping scandal: who's telling the truth?) (INCONSISTENCIES HIGHLIGHTED IN WADA IP REPORT) (WADA Report Based on Single Testimony Politicized - Ex-Armenia Official


 マクラーレン報告書は、ロシアをまるごとリオ五輪から締め出す目的が先走った「拙速」の観がある。
このため、IOCや各種目の国際連盟を納得させることができず、陸上と重量挙げ以外の分野でロシア選手の出場を許す結果になった。
全体としてみると、独ARDの番組と昨年11月のWADA報告書は、ロシア政府にとって反論不能な強い論拠を持ったものだったが、
今年のNYタイムスの記事とWADAマクラーレン報告書は、米国主導のロシア敵視策が目立ちすぎて稚拙さが露呈し、成功しなかった。
Richard McLaren receives `deluge' of requests after Wada doping report

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ポリアモリー 複数の愛を生きる

2016-08-11 07:23:50 | 女性
ポリアモリー 複数の愛を生きる (平凡社新書)
 
平凡社
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ポリアモリー(複数愛)考

2016-08-11 06:37:51 | 女性

男は女をゲットしたがる。
逆に女は男にゲットされたがる。ゲットされて満足する。

俺は昔はもてたんだ、と男が言う場合、それは聞くに堪えない自慢話だが、
私は昔はもてたのよ、と女が言う場合、それはうなづける自慢話になる。

男は自ら求める。
女は求められるのを待つ。そのために女は着飾って、自分を魅力的に見せる。

それは非常に理にかなったことだ。
昔、男は惚れさせて結婚せよ、ということが言われた。

しかしそれはちょっと違う。
ナンパするのも、プロポーズをするのもやはり今も昔も男からなのだ。

これが男と女の性の特徴である。

女は男から惚れられて、他の男とつきあわないでくれといわれれば、喜んでそうする。
そこには誇らしささえある。

しかし男はそうではない。
いくら惚れた恋人がいても、絶えず他の女に目移りする。それも男の性の特徴だ。

だから男は浮気性である。
ポリアモリー(複数愛)などという言葉を喧伝する人たちが女性の中にもいるが、体は頭で考えているだけであり、体で考えていない。

モノガミー(1対1の男女関係)がこれだけ多く世界中に広がっているのは、それなりの理由がある。
それは人類の知恵の蓄積である。

子供が育つまでは、人間以外の他の動物でもそうする。
人間と違って他の動物は子供が巣立つのが早いから、子供が巣立った後はまた別のつがいを組むだけのことだ。

人の一生は短い。人の一生よりも大事なことは、子供を育てるということである。
そのことを中心に社会は構成されている。

必然的にそうならざるを得ない。
人間の英知はそういうことを大切にしてきた。

今も昔も社会の中心は女である。しょせん男は消耗品である。
男は何のために戦うか、女房・子供を守るためである。

これは多くの自然界の掟でもある。
人間の社会もその一つにすぎない。

男も女も多くの人を好きになれる。
「なぜ好きな人を一人に限定しなければならないのか」というのが、ポリアモリーの原点である。
しかし世の中はそれほど都合よくできていない。

子供を育てる、この一点において多くの動物社会は構成されている。
もちろん恋愛は刺激的で魅力的なものである。

そして多くの男女が1対1の男女関係に倦んでくるというのも事実である。

「人を平等に愛する」というキリスト教の教えを、アメリカ人を中心とするポリアモリー主義者たちは勘違いしている。
家庭というのは基本的には、愛に支えられて子供を育成する場所である。

凹と凸は結合したがる。これは自然がしくんだ摂理である。遺伝子を混ぜ合わせるためにはどうしても必要なことである。
陰陽は二つで一つになって初めて完成する。
そうやって男女は求め合う。

男は求めてそれが得られたときに満足するが、
女は求められて満足する。それは子供を育てる条件を成立させるための自然がしくんだものである。
そういう意味で、女こそ惚れさせて結婚しなければならない。

しかし今そのことに満足できない女が増えている。
女性の社会進出が増えるにつれてそうなってきた。
また一つにはSNSの普及がそれに輪をかけた。
その一方で少子化に歯止めがかからない。
私は当然だと思う。

女が子供よりも自分の恋愛や自己実現という実体のない殻の中にとじこもった場合、育児は二の次になる。
女は求められて満足する。求められて幸せになる。

しかし今の多くの女性は、夫以外の刺激を求めている。
結婚は日常であり、日常に特段の刺激を求めるのは無理である。
しかしその無理な刺激を女が求めた場合どうなるか。
「人を好きになるのがなぜ行けないの」と既婚女性がいう場合、そこには一種のごまかしがある。

自己実現や夢の実現は空の彼方にあるものではない。
青い鳥はいつも自分の家の中にいる。

働く女性が増え、自分一人でも子供を育てていける、という女性が増えている。
しかし本当にそれだけの社会的力を持つ女性は多くはない。
多くのシングルマザーは貧困である。

男が目移りするのは今に始まったことではないが、
今新たに起こっていることは、女の家庭からの脱出である。
それが男との出会いを求めるという方向に進んでいる。
ここ20年、女性が急に若くなった。
いつまでも若作りをするようになった。
昔のような堂々としたおばちゃんが少なくなった。
そのことは女性が何を求めているかを象徴している。

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天皇陛下の生前退位の御発言

2016-08-10 08:42:56 | 自民党政策

明治以降、天皇の一世一元制がとられてすでに150年がたつ。
天皇陛下の生前退位の御発言が現実化すれば、どうなるか。

これは今だけの問題ではない。
100年後、200年後の問題である。
天皇が政治的に利用されるのではないか。
また逆に天皇の政治的発言力が強まるのではないか。
その双方があり得る。
明治以前、天皇の在位期間が4~5年で、天皇がコロコロ変わるといったことはざらであった。
そうなる危険がないとはいえない。

マスコミによる道行く人のコメントは、天皇陛下の御発言に好意的なものばかりだが、
果たしてそれでいいものか。

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日本は自動運転技術の「世界標準」を奪取できるか

2016-08-10 07:59:30 | 経済

水曜日

ダイヤモンドオンライン より
http://diamond.jp/articles/-/98425


日本は自動運転技術の「世界標準」を奪取できるか

上野ヒトシ
2016年8月10日

日米欧の自動車メーカーやITメーカーが開発にしのぎを削る自動運転車。
安倍晋三首相は2020年の東京五輪までに普及させる方針を表明したが、わが国は規制の厳しさから後塵を拝している印象がある。
自動運転の開発・普及に向けて、わが国の産官学はどのような取り組みをしているのか。
その目指す方向と解決すべき課題を読み解く。

ついに日本でも発表された「自動運転」車
一体どこまで“自動化”しているのか?

 2016年7月13日、日産自動車は国内の自動車メーカーとしては初となる、自動運転技術を搭載した新型「セレナ」を発表した。
すでに米国・テスラモータースが自動運転車両「モデルS」を販売していたためか、新鮮な驚きを持って受け止められているとは言い難いものの、
普及価格帯の乗用車に自動運転技術を搭載したことは、非常にチャレンジングな試みとの評価を得ている。

自動運転の技術発展レベルには、レベル0からレベル4までの「定義」がある

 しかし、「自動運転」とひとことで言い表されるこの先端技術が、いまだはっきりとしたイメージを描きづらい“謎のテクノロジー”に留まっている感は否めない。

 人々いわく「結局、人がハンドルを握っていないといけないんでしょ?」、
また「高速道路しか走れないの?」、
さらには「事故の責任は誰がとるんだ?」。

 ではいったい、現在の「自動運転」はどこまで「自動」なのだろう。
また、安倍首相が実現すると宣言した「自動運転車」とテスラや日産の「自動運転車」とは何が異なるのだろう。

 実は、自動運転の技術発展レベルには、各国のメーカーが参照している米国運輸省・NHTSA(国家道路交通安全局)の定義がある。

レベル0:“非自動化”=人間が常に運転操作を行う
レベル1:“補助”=加減速かハンドルの一部機能を自動化
レベル2:“複合的な自動化”=加減速とハンドルの両機能を自動化し、コンピュータの判断を超えた場合に人間が運転する

−−−(ここより下は運転の責任をシステムが負う)−−−

レベル3:“条件付きの自動化”=コンピュータが常時運転し、故障や凍結路面など難しい条件の時のみ、システムの要請で人間が操作する。自動運転中は人間が交通を監視する必要がなく、セカンドタスクが許容される
レベル4:“完全自動化”=いかなる場合でもシステムが運転操作を行う

 注目すべきは、誰が運転の責任を負うか、という点だ。

 NHTSAの基準では、「レベル2」までは人間の運転手が運転を監督する必要があり、
「レベル3」からはコンピュータ、つまりシステムの開発者である設計者・メーカーが責任を負うことになっている。

 ヨーロッパのほとんどの国が批准しているウィーン交通条約では、
14年、「運転者がいつでも機能を無効にでき、運転を引き継ぐことができること」を条件に、レベル3の公道における使用が認められた。
このことが、ヨーロッパで自動運転車実用化への動きを加速させている。

今の技術では完全自動はほど遠い
難易度の高い「レベル3」の壁

 一方、日本が批准しているジュネーブ道路交通条約では「ドライバーは運転に責任を持つこと」と規定されているため、
現状の制度下ではレベル3以上車両の「システムの責任による」自動走行が許可されていない。
したがって、いかに優れた技術を持っていたとしても、すべてのメーカーはレベル2までの車両しか販売することができないのだ。

 とはいえ、こうした制度が開発を妨げているわけでもない。
 
 たとえば、先述の日産の自動運転技術「プロパイロット」では、高速道路の単一車線のみ、前を走る車に追従して走ることができる。
想定されている使用シーンは高速道での長時間のクルーズ走行と渋滞時であり、
たとえ先行する車両がノロノロ運転していても、システムによる追い越しはできない。

 大半の自動車ユーザーが一般道での近・中距離移動を使用目的としていることを考えれば、現状の「自動運転車」にできることは極めて限定的であり、
到達している開発段階もレベル2の初歩の初歩であることが分かる。

 将来的にレベル3の走行を認めるように法が整備されたとしても、その時点におけるメーカーの技術がレベル3のクルマを市場に投入できるほど洗練されているかは不透明だ。

 想像してみてほしい。
自動運転車を購入し、気楽な気分でクルージングしながら映画鑑賞を楽しんでいるさなか、突然クルマが「路面が凍結しました。運転を代わってください」と機械音声で告げる瞬間を。
ほんの数秒前にその恐ろしい事実を告げられ、パニックを起こさず運転を交替することが、果たしてあなたには可能だろうか?

 たとえ「開発者側が責任を持つ」といえども、この心理的な問題は自動運転開発に大きく立ちはだかっている。
「レベル3の壁」はまだ高く険しいのだ。

 なお日産は、18年に高速道の複数車線走行=追い越しが可能な車両、
20年には一般道の走行が可能な車両の市場投入を予定しているが、
いずれもレベル2の枠内にとどまっている。

 しかし、これほどまでに難度の高い「レベル3の壁」突破を、世界中の政府やメーカーが目指すのには理由がある。
巡航運転や渋滞時のアシストなど、運転手の負担軽減のみを追求していると目されがちな自動走行技術だが、
実は、日米欧の各国が最大の目標として掲げているテーマは「交通事故の削減」なのだ。

本当の狙いは交通事故削減
事故死者数を4割以上減らせるか?

 米・ランド研究所は、米国における年間衝突事故530万件のうち、自動運転によって3分の1の削減が可能だと見積もっており、
ドイツ・英国政府は90%以上の事故がヒューマンエラーに起因するものだとしている。
また日本政府も、自動運転技術の普及により、18年をめどに日本全体の交通事故死を、現在の約4000人から2500人以下にする国家目標を掲げている。

 「自動走行システムは、130年前に自動車が登場した際と同じぐらい、われわれの社会に巨大なイノベーションをもたらすと考えられています」

 こう語るのは、一般財団法人・日本自動車研究所ITS研究部部長の谷川浩氏だ。

 「交通事故の大幅な減少はもちろんですが、慢性的な赤字に悩まされている過疎地の移動サービスにも、自動運転は一役買うに違いありません。
他の手段と比較して赤字が少なければ、導入する価値が生まれます。
しかしその場合、政府や自治体など行政の強力なリーダーシップが必要となるでしょう」

 高齢化が進む過疎地の交通は、先進国共通の悩みの種だ。
テクノロジーの進化によって「レベル4」、つまり無人のバスが走るようになれば、人件費の節約に繋がり、赤字を極限まで抑え込む事ができる。

 問題は、どこの自治体も“一番乗り”を警戒することだ。
自動運転の導入をいち早く進めるためには、実証実験に必要な専用レーンや管制システムなどのインフラ整備に加え、地域住民の理解が不可欠になるなど、ハードルが高い。
しかし、ビジョンを持ったリーダーが音頭を取って成功を収めれば、他の市町村も続々と実験参入を望むに違いない。

 「自動車はこれまでメーカー間の競争によって進化を遂げてきましたが、
自動運転車の完成を目指すことが至上命令となったことで、各社が共通のビジョンを持ち、『競争領域』と『協調領域』を戦略的に切り分ける必要が出てきました。
『協調領域』とは、『自動運転をどのように発展させ、そのために必要な技術は何か』という『ビジョン』と、産業を健全に成長させるためのビジネスモデルです。
今や、各国やメーカーの視線は『新しい交通社会の実現』とも言うべき国家的な命題に向けられているのです」(同)

安倍首相の肝いりでスタート
自動運転技術開発は国家プロジェクトに

 わが国では伝統的に、メーカーとサプライヤーのタテの繋がりは強固でも、各メーカー間のヨコの連携はほとんど顧みられてこなかった。
しかし、首相自らが『第4次産業革命』と呼ぶこの変革点に当たっては、官がイニシアチブを発揮し、国内の総力を結集して、日本から世界基準のフォーマットとなる技術を発信することが不可欠だ。

 「『自動走行システム』は、安倍首相の肝いりでスタートした『戦略的イノベーション創造プログラム(SIP、エスアイピー)』11分野の1つに選定されています」(同)

 SIPは、社会に不可欠、かつ日本の経済・産業競争力にとって重要な課題を、府省を超えた視点で推進するために内閣府に設置されたプログラム(SIP資料より)だ。
メーカーや大学からプログラムディレクター(PD)を選定し、分野ごとに予算を計上する。
自動走行システムのPDにはトヨタ自動車の葛巻清吾氏が就任し、今年度は26.2億円の予算が配分された。

 目標は「10年代半ばを目途に準自動走行システム(レベル2)を、20年代前半を目途に、レベル3を市場化する。
さらに、20年代後半以降には完全自動走行システムの市場化を目指す。
20年東京オリンピック・パラリンピックでは、レベル3を先行的に実用化」(同資料より)だという。

 「内閣府、警察庁、総務省、経産省、国交省と産学が一体となって同プログラムを構築しています。今までに例を見ないこの横断的な組織編成から、政府の自動運転技術に対する並々ならぬ意気込みがうかがえます」(同)

 また、国際的な標準化競争においても、日本は攻勢を強めているという。

 「国際的な自動車の安全・環境基準を策定している国連の組織“WP(ワーキングパーティ)29”では、
『自動運転分科会』の議長を日本と英国が共同で務め、議論を主導しています。
また、WP29では『自動操舵専門家会議』においてもドイツと共に議長を務め、ドイツやフランスで禁止されている『10km/h超での自動操舵』に関する規則改正を精力的に進めています。
国際ルール作りに遅れを取っているイメージを持たれている方も多いでしょうが、決して手をこまねいているわけではないのです」

レベル3以上実現に不可欠な
リアルタイム情報の入った地図開発もスタート

 レベル3以上の自動運転車を実現させるためには、これまで述べた法整備、社会の理解、運転主体のスムーズな引き継ぎに加え、既存技術の革新が求められている。
そのひとつが「地図」だ。

 
 先述した通り、レベル3の自動運転では、自動走行システムが運転の主導権を握る。
それを実現するためには、目的地を入力するだけで経路をシステムが決定し、安全に走行するための高精度な3次元地図データが必須となる。

 これに加え、この地図はリアルタイムの工事や事故、信号や渋滞などの道路状況を伝える“動的”な地図、「ダイナミックマップ」でなくてはならない。
今年の5月には三菱電機、ゼンリン、パスコ、アイサンテクノロジー、インクリメント・ピー、トヨタマップマスターの6社と自動車メーカー9社が手を結び、
「ダイナミックマップ基盤企画株式会社」が設立された。

 三菱電機など上記の6社は、15年にSIPの「ダイナミックマップ構築に向けた試作・評価に係る調査検討」を受託している。
この成果を受け、莫大な費用と手間を要するダイナミックマップの作成や仕様の標準化に向けてさらなるオールジャパンの体制でダイナミックマップ構築に挑む仕組みが整えられた。

 「ダイナミックマップは、自動走行システムへの利用はもちろん、将来的には防災や社会インフラの維持管理など、デジタルインフラとして付加価値を生んでいくものと見込まれています」(同)

 ダイナミックマップについては、欧州でもアウディ、BMWとダイムラーが共同で地図会社のヒアを28億ユーロで買収するなど、基盤作りを積極的に進めている。
アメリカのグーグルは、言うまでもなくグーグルマップのノウハウをより深化させてくるだろう。
地図フォーマットの標準化レースは日米欧の激戦地となっているのだ。

 他にも、センシング技術の低コスト化、車間ネットワークの構築、システム消費電力の削減など、課題は山積みである。
1メーカーの「ものづくり」の努力だけではとうてい太刀打ちできないほど、乗り越えるべきハードルは高い。

 「今はまだ手探りの状態ですが、目指すべき方向さえ見つかれば、わが国は一丸となって突き進む国民性です。
大げさな言い方になるかもしれませんが、『移動とは何か』、さらに言えば『これからの日本をどういう国にするか』という明確なビジョンと、人材を動かす強力なリーダーシップが求められています」

 “最後の国民産業”と称される自動車産業は今、間違いなく大きな変革期を迎えようとしている。
猛烈なスピードで追い上げを図る産官学のスクラムが、世界の標準化競争を制することができるか。
底力が問われている。

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つまりアメリカは矛盾している

2016-08-10 07:18:40 | 国際金融

つまりアメリカは、
1.利上げをにらみつつ(それはドル高株安になるはずだが)、
2.その一方で、矛盾したことに、ドル高を嫌がっている。それはつまりドル安株高になるということだ。

そして市場は、2のほうを信用している。
アメリカの政策が矛盾しているにもかかわらずである。

アメリカの政策が矛盾していることには目を向けず、アメリカの力を信用している、ということだ。
そのとばっちりを一番強く受けているのがいつものように日本である。
アメリカがドル高を嫌がれば、日本は円高になる。
円高になれば日本株は下がる。海外勢が買わないから。

論理よりも力で動く世界は、一種のインサイダーの世界である。
こんな相場にいつまでもつきあってはいられない。

高校野球もオリンピックもつまらなくなったが、今はそれでも見て、寝て過ごすしかあるまい。

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通貨戦争が明暗を分けた米株の割高・日本株の割安

2016-08-10 07:01:43 | 国際金融

水曜日

ダイヤモンドオンライン より
http://diamond.jp/articles/-/97993


通貨戦争が明暗を分けた米株の割高・日本株の割安

高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
2016年8月10日
 
 

米株は史上最高値圏だが割高

 米国の株式市場は2016年半ば以降、史上最高値を更新する堅調な水準となった。
ダウ平均は史上最高値が続き、米国株式市場への安心感が高まっている。
その背景には、夏場になって再び米国経済への楽観的意識が再び生じたことがある。

 一方、英国のEU離脱等も含め国際的な金融市場の不安底性からFRBの緩和的スタンスが予想以上に続くとの見方も生じた。
すなわち、米国経済回復と金融緩和の「良いとこどり」状況でもある。

 米国を含め世界的に金利低下が続くなか、
図表1に示されるように、債券の利回りから株式の配当利回りを引いたイールドスプレッドは低下基調にあり、
債券対比で株式の割高感が台頭していないことも高値を支えている。
かたや、株価のバリュエーションの指標となる予想PERは18倍を超え、明らかに割高感が生じている。
従って、今後の企業決算の状況によっては米国では株価の調整も生じうる。

◆図表1 米国の株式市場の予想PERとイールドスプレッド推移



日本の株式市場は大幅な割安水準

 PERとイールドスプレッドでのバリュエーションからみると米国株式市場は割高であったが、
それでは、同じ尺度で比べて日本はどうだろうか。

 図表2は、日本の株式市場のバリュエーションを確認するために、図表1の米国と同じ、PERとイールドスプレッドを示したものだ。

◆図表2 日本の株式市場の予想PERとイールドスプレッド

 

現在、日本のPERは英国のEU離脱の国民投票の結果を受けて12倍程度まで落ち込んだ後、足元、13倍台にまで戻した水準にある。
歴史的にみてもかなり割安であり、さらに先述の米国と比べて大幅に割安である。

 一方、イールドスプレッドはマイナス2%を大きく超える水準にあり、歴史的に見ても債券に比べて株式が極端に割安な状況にある。
同様に、イールドスプレッドでも米国と比べても大幅な割安である。

日本が通貨戦争の負け組に

 このように、日本は米国に対して割安であるにもかかわらず、
米国は史上最高値更新、日本は年初来の水準からみて停滞が生じており、
両者に明暗があるのはなぜだろうか。

 そのカギを握るのは年初来の為替市場の転換、通貨戦争状況に因るものではないか。
為替市場においては、長年の経験則上、子どもの遊びである「達磨さんが転んだ」のように、その主導権を握る「鬼」は常にアメリカである。
「達磨さんが転んだ」の鉄則上、アメリカが円安を好まない以上、日本がいくらマイナス金利幅を拡大させても円安にはなりにくい。

 日本は、2015年までの世界の通貨戦争における勝ち組から、今年は一転し負け組に転じる四面楚歌状況にある。
年初来、米国の為替政策がドル安誘導に転換し、米国自らが為替による経済の底上げ「米国第一主義」に転じた。
反面、日本はそれまでの円安・株高トレンドのアベノミクス・トレードが逆流する状況にある。
その結果、海外投資家の目は日本株に目が向かず、米国の株式市場に期待が向かう両国の明暗が生じている。

日本株に逆風は続くが割安な日本の見直しも

 7月以降、日本のヘリコプターマネー導入への期待やポケモン関連で日本株は一時的に戻ったものの、年後半を展望すれば再び円高不安が生じやすい。
従って、日本株が日米の通貨戦争のなか「敗者」として下押し圧力を受ける不安が続くと展望される。
また、アベノミクスも終わったとの見方も生じやすい。

 ただし、先に示した日本株のバリュエーションは明らかに割安である。
ここで日本の救いは図表3のように政治がG7で最も安定した状況にあることだ。
しかも、世界が混乱のなか、日本社会のボラティリティは低く安全である。
また、円高を活かしたM&Aや海外投資等の着実な変化によって日本企業の在り方も進化している。

◆図表3 G7各国のトップの支持率比較

 

 年内を展望すれば、日本の株式市場の冬の時期が続くが、来年にかけて為替戦争が一巡するなかでは、再び日本株が見直される時もある。
今日の状況はそれまでの間の我慢の局面ではないか。

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米国株は、なぜ史上最高値を更新できたのか

2016-08-10 06:52:59 | 国際金融

水曜日

東洋経済オンライン より
http://toyokeizai.net/articles/-/131150


米国株は、なぜ史上最高値を更新できたのか

カギはケインズ政策にある

 
史上最高値を更新し続ける米国株。リスクはないのだろうか(写真:UPI/アフロ)


世界的に歴史的な長期金利の低下が進行している。
英ポンド金利の急低下により、先進国でまともな金利がついているのは米国だけとなった。

なぜ「世界危機シナリオ」はいったん消えたのか

当初「この金利低下は暗い将来の予兆である」というのが、市場では多数意見であった。
そして悲観論の根拠とされる「4要因」はいずれも説得力を持っていた。
(1)資金需要が乏しいこと→人々は悲観的になりリスクを取ろうとしない、
(2)過剰な中銀の金融緩和→マネーの過大供給という間違った政策の結果、さらに金利が下げられている、
(3)世界的に生産性上昇率が低下している、
(4)世界的金融不安・株価下落と共振、
という4要因である。

しかし、それにしては奇妙なことに、米国の株価が史上最高値を更新したことで、世界的金融不安・株価下落はいったん、はっきりと終わってしまった。

あれほど確かに見えた世界危機シナリオが否定された。
もともと企業業績は高水準で、見通しも暗くはなかった。
米国企業は株価に対して2%の配当と3%の自社株買いの合計5% を株主に還元しており、
それは1.5%の長期金利の3倍以上であり、バリュエーション上も経済合理性の面からも株高は十分に正当化できる状況であった。

また空前の技術産業革命が進行し、人々のライフスタイルが劇的に変化しつつある。
米国では雇用が顕著に回復し、物価の上昇圧力が高まっている。
いずれも悲観論では説明できない事柄である。

なぜ米国株式が先進国でいち早く史上最高値を更新したのかと言えば、
米国が先進国で唯一長期金利をまともな水準に保ち、銀行利ザヤが確保され、年率5%ペースの信用増加が続いている、
つまり「流動性の罠」を回避している国だからである。

米国は日欧が陥った「流動性の罠」を回避できそうである。
そうなれば米国の成功体験が教訓となり日欧が「流動性の罠」から生還できる。
米国の経済展望は明るい。
ここ数年は経済拡大が続きそうである。
つまり、
(1)サービス消費起点の好循環、
(2)アップサイド余地の大きい住宅、
(3)本格起動準備の公的需要、
(4)活力ある信用拡大、
の4つの景気拡大の推進力が健在である。

ただ米国は景気サイクルの後半に入り、インフレリスクが高まりつつある。
雇用増、労働需給のひっ迫が賃金上昇圧力を高め、労働分配率を上昇させ、物価上昇率を高めている。
完全雇用の実現、2%インフレターゲットの実現と言う量的金融緩和の目的がほぼ達成されつつあることを示している(日本・欧州は成功とはいえないが)。

なぜ米国だけが流動性の罠を回避できたのか

それでは米国だけが、先進国で唯一流動性の罠を回避できた理由は何か。
それを可能にしたものとして、
(1)前FRB議長バーナンキ氏による迅速・適切な政策選択、
(2)効率的、弾力的な労働、資本市場
の2要因、が指摘できる。
政策力と市場の効率性の二つこそ、米国が世界で最も優れている要素である。

失業率変化とGDP変化の相関度を国ごとに図示すると、米国が最もスティープ、つまり弾力的であることが明瞭である(日本は最低)。
また資本市場においても、金利低下を活用した、裁定的投資がおこなわれ、資本の最適配分が担保されている。

現在米国の債務拡大を担っているのは、企業と家計の消費者ローンであり、
ともに合理的金融財務活動を推進している。
企業の債務増(年7%増)のうち半分は自社株買い用であり、企業は低金利を利用し資本の債務化(Equity to Debt Swap)を活発化させ財務効率を高めている。
また家計は雇用回復によりリスクテイク能力が高まり、消費者ローンを7%成長に復帰させている(住宅ローンは1%台と低調)。

とはいえ、米国も「流動性の罠」に陥るリスクがあるとすれば、それは世界的金利低下の波が米国に押し寄せ、「長期金利を潰すこと」である。

世界景気の後退と米国の独り勝ちがドル高、米国への世界の余剰資金の集中をもたらし、
「dollar cash is king」つまり、ドル現金選考が際限なく進むケースだ。
米国経済パフォーマンスの圧倒的優位性が明確な今、この可能性は十分に考えられる。

理由は何であれ、米国長期金利が日欧のように潰されれば、金利スプレツドがなくなり、金融市場が不能化する事態も考えられる。

カギはケインズ政策にある

その場合の鍵は、空前の長期金利低下を是とする政策を打ち出せるかであり、
カギはケインズ政策にある。
資本が潤沢化し金利が限りなく低下したとして、米国政府は本格的ケインズ政策に乗り出すだろう。
何に投資するか、インフラ、国防、技術開発、環境などだろうか。

次期大統領候補の民主党クリントン候補、共和党トランプ候補共に、積極的財政政策を、アジェンダとして挙げている。
実際米国インフラの老朽化が進んでおり、財政赤字もGDP比10%(2010年)から2%台(2015年)まで低下しており、
長期金利は空前の低さ、となれば絶好のケインズ政策環境と言える。

考えてみればよい時代だ。
ふんだんに資金があり、その使い道に困っているということなのだから。
人間の英知でこの前人未到の事態を切り開くことができないわけがない、と考えるべきである。

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日本株は「日銀の買い」がないといくらなのか

2016-08-10 06:45:17 | 国際金融

水曜日

東洋経済オンライン より
http://toyokeizai.net/articles/-/130970


日本株は「日銀の買い」がないといくらなのか

「官製相場」に乗ってハシゴを外される危険性

 
 
1万8000円や1万9000円説も出てきた日経平均。筆者は「無理に割高なものを買う必要はない」という。なぜか(2015年12月、写真:AP/アフロ)


いよいよ本格的な夏休みシーズンに入った。
今来週は会社全体で「連続休暇」のところも少なくない。
夏の高校野球が始まり、夏季五輪も真っ盛りだ。
気温も上がり、晴天続きとまさに夏本番である。
今年の夏は、暑さ対策をしながら、ゆっくりと涼しいところでスポーツ観戦するのがよさそうだ。

「売りで儲けよう」という投機筋はいなくなった?

先の日銀金融政策決定会合では、ETFの買い入れ額の増額が決定された。
市場では、この決定に対して様々な論評がなされているが、その理由や背景は別として、日銀が決めてしまったものは仕方がない。
日銀は粛々とETFを買い続けることになる。
普通に考えれば、株価は下がりにくくなる。
何らかの事情で下げるようなことになったとしても、日銀が買い支えてくれる。
市場参加者の多くが、株価は大崩れしにくくなったと考えるのも当然である。

そもそも、1日の買い入れ額が700億円にも達する日があるなどという、とてつもない買い需要である。
それも、売りが出てこない、一方通行の買いである。
これはものすごいインパクトである。
まさに「株価維持政策(PKO)」そのものである。
したがって、日本の事情だけで株価が下げるようなことは、よほどのことがない限りないだろう。

このような市場構造になってしまうと、投機筋もやりようがない。
売り込んでも、日銀が買い支えるのだから、下値は限られている。
その下値水準が、日経平均株価ベースで1万6000円程度であるとすれば、ショートして売り崩す妙味はなくなる。
とにかく、彼らからすれば、「やりづらくなった」というのが実態であろう。

では、買いに回ればよいのだろうか。
単純にそういうものでもないだろう。
市場関係者の中には、「日経平均株価とドル円の相関がなくなり、円高になっても株価は上がりやすくなる」といったコメントが聞かれる。
楽観主義も行き過ぎると、このような発言も出てくるのだろう。

2012年末以降の政府・日銀による「官製相場」で株価が上昇し続けたことが、そのような思考にさせてしまったともいえる。
しかし、現状では、ドル円は依然として円高基調である。
その一方で、株価は日銀によって買い支えられている。
ここに「悪質な乖離」が出来つつある。

今の日経平均には約2000円のプレミアムがついている

筆者がこれまで参考にしてきた、アベノミクス相場が始まった2012年12月以降のドル円と日経平均株価の相関から導き出される、ドル円を基準にした日経平均株価の理論計算によると、
現在の102円のドル円相場に相当する日経平均株価の妥当な水準はせいぜい1万4600円程度である。
つまり、現在の日経平均株価には2000円ものプレミアムがついていることになる。

この2000円の一部は少なくとも日銀のETF買いによる押し上げが寄与していると考えられる。
無論、このような相関がいつまでも続くことはなく、ある時期を経て、その関係が徐々に希薄になることは少なくない。
しかし、日本株とドル円は、少なくとも現状の日本の産業構造からみれば、まだまだ切っても切り離せない関係にある。
日銀によるETF購入による日経平均株価とドル円のかい離は、今後ますます乖離するだろう。
それでも、ある時点で急激にその水準が修正されるときが必ずやってくる。

そのきっかけは、海外市場の変調になるはずだ。
先週末に発表された7月の米雇用統計は、きわめて堅調な内容となり、市場では利上げ観測がやや高まっている。
第2四半期のGDP速報値が市場予想を下回ったことで、いったん米国景気の鈍化懸念が高まったが、今回の雇用統計によって、その不安はやや後退した感がある。

とはいえ、米国にはそう簡単に利上げができない事情がある。
ドル高は絶対に避けたいのが、今の米国の事情である。
引き続き株高を維持するには、ドル安傾向の維持は最低必要な条件である。
これを自らの手でドル高に向かうような利上げを行うことはできない。

では、実際はどうだろうか。
英中銀が大胆な緩和策を導入したことでポンド安が進み、ユーロも対ドルで下落している。
米国サイドから見れば、「これ以上ドル高になるような無茶な政策はやめてほしい」というのが本音である。
その結果として、なかなか進まないのが円安である。

日本政府・日銀、そして株式投資家は、とにかく円安になってほしいと願っている。
しかし、米国サイドの事情もあり、なかなか円安になりそうもない。
日本サイドが何かを言えば、必ず釘を刺してくるのが米国である。
昨年来、「円安に期待した投資行動は避けるべき」と繰り返してきたが、その状況は今も変わっていない。
おそらく、今後も数年間、変わらないだろう。

いずれにしても、今回のように「人為的に」操作された市場への興味は著しく低下してしまった。
このようなときには、冒頭にも書いたように、今夏はゆっくりとスポーツ観戦を楽しむのが賢明である。

ただし、昨年のこともあるため、急落に対する備えだけはしておきたい。
プットオプションを保有して、日銀がコントロールできない「海外市場の要因」で株価が下げるようであれば、それを収益化できるかもしれない。
海外市場では、過去の9月株安の傾向を前提に、「9月暴落説」なども出始めているという。
そうなるかはもちろんわからないが、備えだけはしておいた方がよいと考えている。

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ソニーさえ撤退に追い込んだ電池事業の苦境

2016-07-30 11:51:49 | 経済

土曜日

東洋経済オンライン より
http://toyokeizai.net/articles/-/129677


ソニーさえ撤退に追い込んだ電池事業の苦境

今や自動車が主戦場、日本メーカーは岐路に

 
 
ソニーは成長市場のリチウムイオン電池で、果実を得ることはかなわなかった(撮影:梅谷秀司)


世界で初めてソニーが実用化に成功してから四半世紀。
リチウムイオン電池は軽くて高電圧・高容量という特長から、スマートフォンやノートパソコン、デジタルカメラなど幅広い機器に使われてきた。
今後も電気自動車の普及に伴い拡大が期待されている。

しかし、その生みの親は市場からの撤退を選んだ。
7月28日、ソニーは電池事業の譲渡に関し、電子部品大手の村田製作所と協議中であると発表したのだ。
譲渡価格など条件交渉を経て、2017年3月末の取引完了を目指すという。

6期連続の赤字を計上

譲渡の対象となるのは福島や栃木、シンガポール、中国などの拠点とそこで働く計8500人の従業員。
ソニーの電池事業の売上高は約1600億円(2015年度)だが、家庭用アルカリ電池などのBtoCビジネスは続けるため、うち1300億円弱が切り離される見込みだ。

近年は主力のスマートフォン向け電池が米アップルなど大手メーカーからの受注を得られず苦戦したことに加え、
自社スマホ「Xperia」やウォークマン向けも販売台数の減少に伴い出荷が減ったことが、同事業の業績悪化に拍車をかけた。
2015年度は170億円の営業損失を計上し、6期連続の赤字となった。

7月29日に行われたソニーの2016年度第1四半期決算会見で吉田憲一郎CFOは
「電池の容量や充電速度といった機能面で課題があり、(大手スマホメーカーからの)採用に至らなかった。
課題解決には技術のある村田製作所に譲渡するのが最善だと判断した」
と譲渡の理由を説明した。

一方の村田製作所は、これまでリチウムイオン電池の開発を行っており、
「製品の評価は高かったが、実績がない点が厳しかった」(竹村善人上席執行役)という。
そのため、ソニーの電池事業を足掛かりに事業を拡大したい考えだ。

今後は世界シェア首位を誇るコンデンサー(蓄電や放電をする電子部品)や高周波フィルターの販路を活用し、
スマホ向け電池のテコ入れを図るほか、
産業用ロボットなど工場向けや家庭用蓄電池を強化する。

市場を切り開いたソニーが去るリチウム電池市場だが、残るプレイヤーも厳しい戦いを強いられている。

体力勝負のタフな市場

リチウムイオン市場は、
首位サムスンSDI、
2位パナソニック、
3位LG化学の3強が世界シェア6割を占める。
ただ、2015年度の各社の電池事業の業績は、
サムスンSDIが赤字、パナソニック、LG化学も営業利益率0.1%以下という惨憺たる状況だ。

スマホなどに搭載されているソニーのリチウムイオン電池


背景には、ノートPCやスマホ向け電池の需要が鈍化する中、
成長が見込める車載用電池での生き残りをかけ、各社とも研究開発費がかさんでいることがある。

車載用リチウムイオン電池市場では、米西海岸の電気自動車ベンチャーであるテスラ・モーターズに独占供給を行うパナソニックが一歩リードしているものの、
韓国勢もテスラへの供給に関心を示しており、
その地位がいつまで続くかは不透明だ。
また、事業を買収する村田製作所も長期的には車載用電池の開発を狙っており、
熾烈な戦いが予想される。

主戦場がスマホから電気自動車へとシフトし、
新たなステージに入ったリチウムイオン市場。
日本勢は今度こそ世界をリードする存在になれるのか。
投資がかさむビジネスだけに、待ち受けているのは体力勝負のタフな戦いだ。

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孫さんガッカリ?IoT普及阻む決定的な問題

2016-07-30 11:34:23 | マスコミ操作

土曜日

東洋経済オンライン より
http://toyokeizai.net/articles/-/128808


孫さんガッカリ?IoT普及阻む決定的な問題

ケヴィン・ケリー氏が斬る!

 
 
ハイテク界の思想家、ケヴィン・ケリー氏が考えるIoT普及を阻むハードルとは?


3.3兆円もの大金を投じて、英ARM(アーム)ホールディングスを買収すると発表して世間を驚愕させたソフトバンクグループ。
買収の目的はただ一つ、これから来るであろう、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)時代を先取りすることだ。
ありとあらゆるモノがネットにつながり、互いにやりとりをすることで、遠隔から操作・制御したり、計測することが可能になるIoTには、
多数の企業が投資しており、今後関連ビジネスの急拡大が見込まれる。
しかし、WIRED誌創刊編集長で、テクノロジー界の思想をリードする存在として知られるケヴィン・ケリー氏は、IoT普及には高いハードルがあると見る。
日本で7月23日発売となった
〈インターネット〉の次に来るもの ~未来を決める12の法則(原題はThe Inevitable)』
で、人工知能(AI)やヴァーチャル・リアリティ(VR)など今後30年間に起こる、12の不可避な(inevitable)テクノロジーの潮流をまとめているが、
IoTの未来にはやや懐疑的だ。
一体なにが「足かせ」となるのだろうか。
インタビュー前編「ケヴィン・ケリー、『人工知能の未来』を語る

最大の課題は「バッテリーの寿命」

――先般、ソフトバンクが英ARMを3兆円強で買収しました。
ソフトバンクの孫社長は、IoTが将来ビッグビジネスになると見ているようですが、
ケヴィンさんはどうですか。

1998年、『ニューエコノミー勝者の条件』にもIoTについて書いたが、実現するのにこんなに時間がかかるとは思わなかった。
今後、実現により近づくだろうが、革命的で破壊的な技術になるとは思わない。

ただ、モノ同士をネットでつなぐだけでなく、そこにAIの要素を足せば大きな技術革新になるだろう。
確かにIoTの流れは不可避だと思うが、今回の本でもIoTについてはあまり触れていない。
最大の課題はバッテリーの寿命だ。
バッテリー技術は着実に向上してはいるが、私たちの予想を超えるほどに著しいとは言えず、
すべてのモノが「ずっと」つながり合っている状態に行き着くには時間がかかるのではないか。
たとえば、毎週土曜日の朝に家中のバッテリーを替えないといけないなんて考えられるかい?

空気で充電できるとか、バッテリーに代わる充電方法が出てこないかぎりはIoTの実現には時間を要するだろう。
そんな技術がはたしてあるかわからないが。
それが、私がなかなかIoTに関しては熱狂できない理由だ。
不可避だと思うし、重要な技術でもあると思うが、AIほどのインパクトはないだろう。

――ケヴィンさんは多くのテクノロジーの潮流の中でも、
AIの影響力が最も大きいと話していますが、
IoTはAIの機能向上にも一役買えるのでは?

確かに長い目で見た場合、IoTによってAIの効果を最大限に享受できるようになるだろう。
それぞれのAIが単独でスマートになっていくことは可能だが、
それぞれが、自分が学んだことをシェアできればよりスマートになることができる。
互いにつながり合うことでより柔軟で、使いやすい技術にもなる。
25年後はわからないが、100年後くらいにはそういう状態になっているだろう。

どの会社が勝者になるかは予測不能だ

――今後20〜30年でIoTはどの程度の進化が見込めるでしょうか。

Kevin Kelly/WIRED誌創刊編集長、著述家、編集者。
1984~90年に雑誌、ホール・アース・カタログなどの発行編集を行い、1993年にWIREDを創刊。
1999年まで編集長を務めるなど、サイバーカルチャーの論客として活躍。
現在はニューヨーク・タイムズ、エコノミスト、タイムなどで執筆するほか、
WIRED誌のSenior Marverickも務める。著書は
『ニューエコノミー勝者の条件』(ダイヤモンド社)や
『テクニウム--テクノロジーはどこへ向かうのか?』(みすず書房)
など多数


バッテリーの技術がどの程度進化できるかによる。
たとえば、タブレットの近くにスマホを置くだけで充電できるとか、近距離無線通信の技術を使って家中のモノを一気に充電できるようになれば、ものすごい進化だが。
スマートにする技術はあるが、エネルギーの問題は大きい。
なんぼなんでも、コーヒーカップや傘をコンセントにつないで充電したくはないだろう。

――IoTの世界で勝者になるのはどの会社でしょうか。

本でも強調していることだが、私たちは未来のトレンドを予測することはできるが、特定のことを予測するのは不可能だ。
谷に雨が降ったとして、その雨が地面に落ちて川に向かっていくことはわかるが、どの道を通って谷を下っていくかはまったく予測できない。

IoTは不可避だが、その中でどの会社が覇権を握るかは予測不可能だ。
たとえばそれは、経営者だったり、ファイナンスの状況だったり、複数の要素によっていくらでも変わりうる。
勝者を予想することは時間の無駄だ。

電話の誕生は不可避だったが、iPhoneは不可避ではなく、予測はできなかった。
インターネットの普及は不可避だったが、ツイッターが出てくるとは予測できなかった。
私には今後どんなタイプのソーシャルメディアが誕生するかは予測することができても、どの会社が勝者になるかは予測できない。

――講演などではトラッキングも人間社会に大きな影響を及ぼす一つだとお話しされていますが、
私たちがよりトラッキングや監視に対してよりオープンで自らの透明性を増す、
つまりプライバシーを「あきらめる」ことが、
利点を享受するうえで重要だという視点はユニークです。

(トラッキングを)パーソナルサービスと考えればいい。
私たちは誰もが、「個人」として扱われたいと思っている。
私は自分の友人に自分のことを知ってもらいたいし、その情報に基づいて私を扱ってもらいたい。
同じように私は、企業や政府にも私個人として扱われたいと思っている。

たとえば、スピード違反で捕まったとする。
でも、私が通常はスピード違反をしないことや、チケットを切られた経験がないことがその場で警察官にわかれば心象は変わるだろう。
私たちは、自分たちの個人的な履歴や好みにも基づいて扱われることを望んでいる。

最高にパーソナルなサービスを受けるには、最大限の情報を提供しなければならない。
そうしたくない人もいるだろうから、そこは選択できるようにすればいい。
しかし、そういう人は誰からも「数」のように扱われるだけだ。

選択できれば多くの人がプライバシーを公開する

――具体的にはどのような運用が考えられますか。

どの程度までパーソナル化を望み、プライバシーを公開するかを個々で選べるようにすればいい。
驚くかもしれないが、その選択ができる場合、多くの人がよりパーソナルなサービスを望み、自らの透明性を高めるチョイスをする。
アマゾンやネットフリックスを使う場合はそうすることで、より自分の好みにあったオススメを受けることができるし、
友人には写真や誕生日などを公開することでより自分のことを知ってもらうことができる。

自らの情報を提供することによる問題は、多くの企業や政府が情報を一方的に受け取りながら、私たちにはその見返りがないことだ。
政府は私たちの情報を集め、逐一監視しているにもかかわらず、私たちはそのメリットがない。

それだったら、私たちからどんな情報を集めてどう使っているのかに関して企業や政府の透明性を増す「共監視(Co-veillance)」になるように求めなければいけない。
トラッキングは不可避だが、共監視は私たちが求めなければできない。
トラッキングされるのであれば、それを行う企業や政府との間に正当な関係を構築するべきだ。

――私たちがどんどんパーソナル化を望むようになっているのは、テクノロジーの存在が大きいのではないでしょうか。

今、私が君のスマホを取り上げたら、君はものすごくアンハッピーになるだろう。
それはスマホでつねにコミュニケーションをとりたいと考えているからだが、そんな欲求は200年前には存在もしなかった。
テクノロジーはつねに新たな欲求を作り出す。

過去と未来を選べるなら誰もが未来を選ぶ

――このまま行けばどうなるのでしょう?

「〈インターネット〉の次に来るもの ~未来を決める12の法則」
(画像をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)


テクノロジーは今後も、私たちが考えもしなかった欲求を生み出していくだろう。
30年後には、今日の私たちが思いつきもしないモノやサービスに対する強い欲求を持っていることになる。
たとえば、自分の子孫に受け継ぐために自らの記憶をすべて記録する機能や、自分の子供の記録VRの中に残して、子供が大きくなったときにVR上で母親が自分を抱いている感覚を味わえるといったような機能は今でもニーズがある。

――私たちは今よりもよい世界へと進んでいるのでしょうか。テクノロジーによって今よりよい暮らしができるのでしょうか。

それは間違いない。
たとえば、過去でも未来でも好きなタイミングに生まれることができるとする。
ただし、過去に行こうと未来に行こうと、どこの国で誰に生まれるかは選ぶことができない。
ひょっとしたらマウイの女の子になるかもしれないし、どこかの国の国王になるかもしれない。
ほとんどの人は過去に行くことを選ばないだろう。
なぜなら奴隷に生まれ変わる可能性もあるからだ。

過去のほうが今よりもずっと不平等な世界だった。
今でも不平等はあるが、平均的には今のほうが過去よりよい暮らしを送れるようになっている。
そして未来はもっとよくなる。
私は進化の効果を信じている。
実際、過去200年間で人々の暮らしが向上し、環境も改善されたことは科学的にも証明されている。
私の楽観的な予測は歴史に基づいているんだ。

(撮影:今井 康一)
















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「日銀ショック」で日本株が追い込まれる日

2016-07-30 00:17:33 | 国際金融

土曜日

東洋経済オンライン より
http://toyokeizai.net/articles/-/129649

「日銀ショック」で日本株が追い込まれる日

「必要なら追加緩和」は言い続けられない

 
日銀は追加金融緩和を決定、なんとか面目を保った。だがいつまでもETFや国債などを買い支えることはできない。どこかで買い増し額の減額をいう瞬間がやって来る(写真:長田洋平/アフロ)


株の買い支えに徹する日銀

7月29日昼過ぎに、日銀の金融政策決定会合の結果が発表された。
市場が期待する大規模緩和はなかったが、
ETF(指数連動型投資信託)の買い入れ額を年間3.3兆円から6兆円に増額する、大規模な株買い支え策が発表された。

大規模緩和がなく円高は防げなかったが、
株(ETF)の買い支え策発表が効いて、株安は防ぐことができた。
ドル円は7月29日の午後3時20分時点で前日比1円62銭円高の1ドル103.66円だった。
日経平均は前日比92.48円(0.56%)上昇して、1万6569.27円で引けた。

一方、マイナス金利の拡大がなかったことを好感して銀行株が急騰した効果で、TOPIX(東証株価指数)は前日比1.20%上昇した。

4月28日、6月16日は、日銀が「追加緩和なし」を発表した直後に、円高・株安のダブルショックに見舞われた。
4月28日の日経平均は前日比624円安、
6月16日は同485円安であった。
今回の7月29日も、円高を嫌気して一時日経平均が302円安になる場面があったが、
株買い支え策の発表が効いて、その後、上昇に転じた。

ただ、株安は防いだものの、円高は防げなかった。
また3回連続で大規模緩和の期待を裏切ったことで、日銀の緩和策の限界を感じさせる結果となった。

さすがに「ヘリマネ」には踏み込まなかったが・・

市場の一部では、ヘリコプターマネー(ヘリマネ)のような大規模緩和を期待する声も出ていた。
ヘリマネ自体は、財政法で禁止されていて、できないことはわかっていたが、日銀のやっていることは、少しずつヘリマネに近づいていた。

ヘリマネの定義は必ずしも明確ではないが、
日銀が
「政府が発行する無利息・無期限の債券を引き受けること」
との解釈が一般的だ。
これは、実質、日銀が政府にマネーを譲渡するに等しい。
それは財政法で禁止されている。

今回、市場で期待が広がっていたのは、日銀が「ヘリマネのような」緩和を行うことである。
たとえば、以下のような財政・金融策の協調がイメージされていた。
「政府が大規模財政出動を決め、新規に40年国債を発行する。日銀はそれにあわせて、40年国債の大規模買い増しを発表する」。

日銀が無利息無期限の国債を直接引き受けるわけではないので、ヘリマネではないが、
40年という超長期の低利回り国債を大量に買い入れれば、それは限りなくヘリマネに近い金融政策となる。
日銀は、今回は、そうした財政出動と連携した大規模緩和には踏み込まなかった。

黒田日銀総裁は、29日の記者会見で
「必要な場合は、量・質・金利の3次元で追加緩和を講じる」
と従来通りのコメントを述べ、先行きの追加緩和の期待を残した。
デフレ色が強まる中、毎回、大規模追加緩和を見送り、「必要なら追加策を行う」と言い続ける、いつものパターンだ。

日銀は、2016年3月時点で総資産が405.6兆円まで膨らんでいるが、純資産は3.5兆円しかない。
日銀券を刷り続けることで、資産規模を膨らませ続けることはできるが、
純資産をすり減らすマイナス金利の国債買い取りには、いずれ限界が来る。

日銀は、3月末時点で、日本株ETFや不動産投資信託などを、すでに約9兆円持っている。
ここから、年6兆円のペースでETFの買い増しを続けると、純資産に比べたリスク資産の保有はいずれ過大になる。

「日銀ショック」が訪れるときはいつか

日銀は、自らの財務を痛める大規模緩和を制限しなければならない日が来る。
「年80兆円のペースで買い増ししているマイナス金利の国債を、年70兆円に減額しなければならない」
といったことを議論しなければならなくなる。
そうなると、金融市場に大きなショックをもたらすことになる。

米FRBが大規模緩和を終了した時のプロセスが参考になる。
2013年5月、当時、米FRB議長であったバーナンキ氏が、
「将来、金融緩和を縮小しなければならない」と発言しただけで、世界中の株が暴落した「バーナンキ・ショック」が起こった。

黒田日銀総裁が今、「将来、国債買い増し額の減額が必要になる」と口にすれば、同様のショックが東京市場に起こるだろう。
黒田総裁は、日銀の「出口」を誰にも意識させないためにも、「必要ならば、追加緩和をする」と言い続けなければならなくなっている。

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日銀はついに「ヤバイ」領域に足を踏み入れた

2016-07-30 00:04:03 | 国際金融

土曜日

東洋経済オンライン より
http://toyokeizai.net/articles/-/129633



日銀はついに「ヤバイ」領域に足を踏み入れた

追加緩和で外国人も日本から遠ざかる?

近藤 駿介
:金融・経済評論家/コラムニスト 近藤 駿介Shunsuke Kondo金融・経済評論家/コラムニスト
1957年東京生まれ、
早稲田大学理工学部土木工学科卒業後、
総合建設会社勤務を経て、
31歳で野村投信(現野村アセットマネジメント)に入社。
株式、債券、先物・オプション取引等を担当した後、
野村総合研究所に出向しストラテジストとして活躍。
再び、野村アセットに戻ってからは、
担当ファンドが東洋経済の年間運用成績第2位に選出されるなどファンドマネージャーとして活躍。
その他、運用責任者として、日本初の上場投資信託(ETF)である「日経300上場投信」の設定・上場を成功させ、
1996年に野村アセット初のプロフェッショナル・ファンドマネージャーとなる。
現在は金融や資産運用に関する客観的な知識を広めるべく、合同会社アナザーステージを立ち上げ、会長兼CEOとして、一般向けの金融セミナーや投資セミナーなど専門家向けセミナー等も開催中。
自身が手掛けるメルマガ『マーケット・オピニオン』は、個人投資家から圧倒的な支持を得る。
日銀の追加緩和発表後、7月29日の日経平均は結局、前日比92円高で終了した。だが筆者は今回の追加緩和は「苦し紛れ」「悪手」だという。なぜか(撮影:大隅智洋、写真は1月撮影)


市場の大方の予想通り、日銀は追加緩和に踏み切った。

内容は
「ETFについて、保有残高が年間6兆円に相当するペースで増加するよう買い入れを行う(現行の約3.3兆円からほぼ倍増)」
(7月29日付日本銀行「金融緩和の強化について」)
という、ETFの買入れ額をほぼ倍増させるというものだ。

一方で、金融政策の目標となっているマネタリーベースについては
「マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う」
と、現状維持とした。

「金融緩和の目標は株価」と暴露したも同然

日銀は、追加緩和に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれていた。
その日銀が今回打ち出した「苦し紛れの追加緩和」は、
追加緩和手段が限界に達したことを示すとともに、
中央銀行の信頼を失墜させる悪手だった、
と筆者は考える。

なぜ悪手なのか。
日銀は今回
「マネタリーベース増加ペース(年間約80兆円)の現状維持とETF買入れ額倍増」
という追加緩和策を打ち出したが、
これは日銀の政策目標が「マネタリーベース」ではなく
「株価」にあるという本音を暴露したようなものである。

中央銀行のタブーの一つは、「株価」を金融政策の目標にすることだ。
「株価」を金融政策の目標においてしまう、あるいはおいていると見做されることは、
株式市場の変動に合わせて金融政策の変更を迫られるようになるからだ。

株価が下落する際には市場で緩和期待が膨らみ、日銀がその期待に応えた政策を打ち出さなければ、さらなる株価の下落を招くという悪循環に陥ることになる。
今回の「ETF買入れ額の増額」に対して、
木内委員が「株価を目標にしているとの誤ったメッセージになる」として反対票を投じたのは当然のことである。

もしETFの買入れ額を3兆円増やすのであれば、少なくともマネタリーベースの増加ペースを83兆円に拡大するべきだったといえる。
日銀は3兆円など、80兆円に比較したら誤差の範囲であり、緩和効果に大きな影響を及ぼすものではないと考えたのかもしれない。

日銀は「異次元の相場介入」の領域に足を踏み入れた

しかし、マネタリーベースの増加ペースを維持する中で
ETF買入れ額を増やすということは、
国債の買入れ額をその分減らすということである。
これは、国債の買入れによるマネタリーベースの増額が限界に達したこと、
国債の買入れ額を減らしても金融緩和効果は変わらないというメッセージでもある。
これは、これまでの緩和策の限界を認めるようなものである。

今回の追加緩和によって、「マイナス金利付き量的・質的緩和」は「異次元の金融緩和」から外れ、
中央銀行にとってタブーとされる「異次元の相場介入」の領域に足を踏み入れたといえる。

メディアではほとんど触れられていないが、
今回ETF買入れ額増額とともに決まった緩和策に、
「企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置」がある。

これによって
「企業の海外展開を支援するため、最長4年の米ドル資金を金融機関経由する制度」
の総枠が現行の120億ドルから240億ドルへと倍増された。

これは日本の企業や投資家がベーシススワップを利用して外貨を調達する際の上乗せ金利が上がってきている(ドル調達コストが上昇している)ことに対応した措置だ。
この措置によって、国内企業や投資家のドル調達コストは低下する可能性が高い。
しかしそれは海外投資家からみれば、円の調達コストが上昇するということでもある。

日本国債の利回りは15年債までがマイナス金利となっている。
こうした現象は、日銀が準備預金の一部にマイナス0.1%の金利を付利していることとは直接的には関係ない。

市場金利がマイナスになっているのは、日銀がマイナス金利下でも国債を積極的に買い入れている(日銀がマイナス金利に伴う損失を被る)ことに加え、
海外投資家の円調達コストがマイナスになっていてマイナス利回りの国債を購入できる状況にあることを反映したものだ。

海外投資家は今後ますます日本に投資しなくなる?

今回国内企業・投資家の米ドル調達コストを下げるための措置によって海外投資家の円調達コストが上昇し、
海外投資家による国債や日本株への投資意欲は衰える可能性があることには注意が必要だ。
これは日銀のETF買入れ額増額による効果を打ち消すものになるからだ。

「英国のEU離脱問題や、新興国経済の減速を背景に、海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場では不安定な動きが続いている。
こうした不確実性が企業や家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止する…」
(日銀)

日銀は今回追加緩和に踏み切った理由をこのように説明している。
しかし、英国のEU離脱ショック後の世界の金融市場は、
米国株式市場が史上最高値を更新、
新興国株価指数も5%近い上昇、
日本株も英国のEU離脱ショック前の水準を上回るなど、
不安定な動きどころか安定的な動きを見せている。

懸念されるのは、日銀が誤った世界経済認識に基づいて金融政策の舵取りをしているということだ。
6月の時点では、英国民投票による米国経済や金融市場への混乱の可能性が指摘されていたにもかかわらず、
7月26~27日に開催されたFOMC(米公開市場委員会)ではFRB(米連邦準備制度理事会)が「短期的な経済見通しへのリスクは低下した」という認識を明らかにしている。

にもかかわらず、日銀は
「英国のEU離脱問題や、新興国経済の減速を背景に、海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場では不安定な動きが続いている」
という理由で追加緩和に踏み切ったわけだ。

験を担いだのか、今回日銀は2013年4月の「異次元の金融緩和」と同様に「ETF2倍、米ドル資金2倍」という緩和策を打ち出した。
しかし、世界経済に対する「異次元の認識」を示した日銀は、これで海外投資家からの信頼を回復することが出来るのだろうか。

今回「苦し紛れの悪手」を放った日銀にとっての唯一の「救い」は、市場がすでに「日銀の追加緩和は効果がない」ことを織り込んでいたことかもしれない。

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ヘリコプターマネーは、どう考えても危ない

2016-07-29 07:04:04 | 国際金融

金曜日

東洋経済オンライン より
http://toyokeizai.net/articles/-/129390


ヘリコプターマネーは、どう考えても危ない

高インフレが発生して制御できない

誰も負担せずにおカネが空から降ってくる?!(Caito/PIXTA)


7月中旬に来日中だったベン・バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)前議長と安倍首相が首相官邸で会談したことで、
金融市場では政府・日銀がヘリコプターマネーに踏み切るのではという思惑から一時円安が加速した。
バーナンキ氏は、日本がデフレから脱却する方法として、おカネをばらまくという議論をしていたことから、「ヘリコプター・ベン」というあだ名がある。

ヘリコプターマネー(ヘリマネ)は、もともとは、ミルトン・フリードマンが
「ある日ヘリコプターが飛んできて、空からお金を落として行ったと仮定しよう」という例えを使ったことに由来する。
しかし本来の趣旨は、必要以上におカネ(マネー)を供給することに対する警告とみるべきだ。

フリードマンが使った1万円札などの紙幣を大量にばらまくという例は、具体的に何が起きているのかイメージしやすいので、以下ではこれを使って原理の説明を続けよう。
ただし、現実の経済では現金だけがおカネとして使われているのではなく、むしろ預貯金の方が圧倒的に多い。
後で述べるように、紙幣のような現金はヘリコプターマネーで供給されるおカネのごく一部に過ぎないので、
現金をばらまく話よりも現実ははるかに大きな規模の問題が起こる恐れがある。

ヘリコプターマネーを実現する方法

現実にフリードマンが言ったとおりに空から何兆円もの1万円札をばらまいたら、お札を拾おうとする人で大混乱に陥ってしまうが、
ヘリコプターマネーと同じ効果があることを実際に行う方法はいろいろ考えられる。

例えば、政府が赤字国債を発行して日本銀行に購入させ、
かつての地域振興券のような商品券や給付金を家計に配る方法だ。
財政赤字で公共事業を行ったり物資を購入したりすることも、単純にお金をばらまくというやり方とは違うが、
企業や消費者が持っているおカネを増やすという点では同じ効果がある。
二つはともに財政政策で、違いはお金が支払われると同時に何か経済活動が行われていてGDP(国内総生産)が増えるかどうかという点だ。

財政赤字を賄うために政府が発行した国債を日本銀行が市場から買い入れることは、
通常の金融緩和政策で行われている。
では、何をもってヘリコプターマネーというのか。
論者によってまちまちだが、ここでは日銀が協力することで償還する必要のない方法で政府が資金を手に入れて使うこととしよう。

永久に日銀が国債を保有し続ければ供給された紙幣はずっと日本経済を循環し続ける。
ヘリコプターで空からばらまいた紙幣を回収することが不可能であるのと同じだ。
現在の建前では政府は将来財政黒字を出して国債を償還することになっているが、
ヘリコプターマネーではその必要はない。

一見、誰も費用を負担することなしに、政府が資金を手にすることができるように見える。
だが、そんなうまい話はなかなかない。

現金取引だけが行われている社会を考えてみよう。
誰かが買い物をしようと思うと、まず、現金が必要になる。
買い物に使用された現金は、それを受け取った人がまた支払いに使うということが繰り返され、何度も使われる。
現金が1年間に使われる回数の平均(貨幣の流通速度)がほぼ一定だとすると、
経済全体で行われる経済取引と現金の量の間には比例関係があるはずだ。
これが「貨幣数量説」の最も単純な説明である。

経済が拡大していくと、それに合わせてより多くの現金が必要になるので、
日銀は追加で紙幣を供給することになるが、
この分の紙幣が経済から回収されることがなければ、
ヘリコプターマネーだと見ることができる。

90年の2倍以上の現金、でもタンス預金に


現実の日本経済を見ると2016年6月末時点の現金(紙幣と硬貨の合計)は、
100兆6587億円で、
名目GDP比は20%程度となっている。

1990年代にバブルが崩壊して金融緩和が続くまでは、企業や家計が保有している現金は日本の経済規模の6~8%程度だったから、かなりの上昇だ。

日本経済の現在の規模=名目GDP500兆円に対して、
貨幣の使用回数が1990年代以前と同じ状況であるならば40兆円の現金があれば十分だが、
現在はこの2倍以上の現金が出回っている。
100兆円の現金の過半は、経済的な取引に使われずに、いわゆる“タンス預金”として引出しや金庫の中で眠っていることになる。

デフレが続いていれば現金の価値は減らないので、今以上に多くの現金が保有し続けられることはありうる。
しかし、デフレから脱却すれば物価上昇のために現金の価値は下がる。
たとえば1万円で買える商品の量は減少していく。
人々はタンス預金をやめて、商品や不動産などの実物に置き換えようとするだろう。
少なくとも、金利や配当が付く金融資産に置き換えようとして、現金の保有は減少するはずだ。

デフレ脱却ができた後の経済では、これまでに供給してきた現金分だけでも十二分なはずだ。
だから、物価上昇率を高めるためにこれからヘリコプターマネーで新たに現金をばらまくということは、一度大きく現金残高を増やした後で、
デフレ脱却後には大量の現金が不要になるので、大幅に残高を削減するということを前提にしていることになる。

ヘリマネでデフレ脱却後の物価はどうなる

今後電子マネーの普及やインターネットバンキングでの決済がさらに広がり、買い物に現金を使用することは減っていく可能性が高い。
デフレ脱却後の経済活動に最適な現金残高の名目GDPに対する比率は昔よりも低くなるはずだが、
影響を小さめにみて1990年代末の10%の水準にまでしか低下しないと仮定しよう。

名目GDPを600兆円にするという目標が達成できたとして、
現金は名目GDPの10%に相当する60兆円程度であれば経済はバランスよく動くと考えられる。
このためには日銀が保有している国債を40兆円売って現金を吸収することになるが、
売却した国債を購入するのは民間金融機関や個人、海外の投資家であり、
政府は期限が来れば元本分を支払って償還する必要が生ずる。
これでは、ヘリコプターマネーではなくなってしまう。

そこで、日銀が国債を保有し続けて現金残高は今と同じ100兆円が続くと仮定した場合、
名目GDPに対する現金の保有比率が10%に低下するには、
名目GDPは1000兆円になっていなくてはならない。

 たとえば5年後に名目GDPが1000兆円になるような、実質GDPとGDPデフレーターの年平均の伸び率の組合せを考えてみる。
GDPデフレーターはGDPの物価指標であるので、実質GDPの成長率が高ければ物価上昇率は低くてよいことになる。

この間の実質GDP成長率が平均で年率2%ならGDPデフレーター上昇率は年率12.5%必要だ。
しかし、実質成長率が平均で年率5%でもデフレーター上昇率は年率9.3%必要で、
年率7%という高率の実質GDP成長率が実現したとしても、
デフレーターの上昇率は年率で7.2%にもなってしまう。

どれほど生産性の伸びを高めても一定期間の実質GDPの伸びには限度があり、
ハイパーインフレとまでは言わないが、
第一次石油危機以来、日本経済では経験したことのないような高い物価上昇を甘受しなくてはならないだろう。

ヘリマネは後始末できないもの

さて実際に日本銀行が供給しているおカネは、現金(紙幣と硬貨の合計)の約100兆円だけではない。
銀行が貸し出しを増やせるように、日銀に保有している当座預金の口座を通じて供給している約300兆円の資金も含む。
現金とこの当座預金の合計がマネタリーベースである。
2016年6月末のマネタリーベースの残高は約404兆円だ。
デフレ脱却後にはマネタリーベースの名目GDP比も昔の水準に戻るとすれば、300兆円を超える資金を吸収する必要があることになる。

銀行は預金の一定割合を日銀の当座預金に常時預けておく義務があるので、
この準備率を大幅に引き上げれば、日銀が保有する国債を売却しなくてもマネーストックを減少させてインフレを抑制することは原理的には可能だ。
超過準備として日銀に預けられている資金が貸出に回ってマネーストックが大きく増加しないようにするのである。
現在の日銀当座預金約300兆円の内で、法定準備に対応する所要準備額は9兆円程度に過ぎないので、準備率の引き上げだけで対応するには、準備率を現在の30倍程度に引き上げる必要がある計算になる。

デフレ脱却に成功して金利が上昇する際には、
預貯金金利の上昇で資金の調達コストが上昇する一方で、
資金の運用利回りの上昇速度が遅く、
金融機関の収益は圧迫されている可能性が高い。
準備預金制度に基づく所要準備には金利が付かないので、
準備率を引き上げることは銀行からより多くの手数料を徴収するようなものだ。
このため経営の悪化を招くなど金融システムを不安定化させてしまう恐れが大きい。
現実には大幅な準備率の引き上げは難しいだろう。
無理に準備率を引き上げれば、金融システムの安定化のために多額の税金を投入する必要性が発生するかもしれない。

ヘリコプターマネー政策を貫いて発行した国債を償還せずに日銀が国債を永久に保有し続ければ、かなりの高インフレを許容することになってしまう。
一方、日銀がインフレを抑制しようとすれば保有している国債を売却せざるを得ず、
結局、この分の国債は政府が元本を返済しなくて済むヘリコプターマネーではなくなってしまう。

ヘリコプターマネーによって、誰も費用を負担することなしに政府が資金を手にすることができるといううまい話はないはずなのだ

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