ひょうきちの疑問

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「八百長相場」の日本株できっちり儲ける方法

2016-09-11 10:33:22 | 国際金融

日曜日

東洋経済オンライン より
http://toyokeizai.net/articles/-/135216


「八百長相場」の日本株できっちり儲ける方法

日銀のシークレットブーツ効果はハンパない

 
 
 
ブーツで底上げされているような日本株。「八百長」のような市場で勝つための方法がある (写真:MoustacheGirl / PIXTA)


日銀製の「シークレットブーツ」相場とは?

俗に「シークレットブーツ」と呼ばれる製品がある。普通の靴に見えるのだが、靴の内部で底が数センチ上がっていて(筆者は現物を見たことがないが、そういうことらしい)、使用者の身長を伸びたように見せる。

誰とは言わないが、有名芸能人で使用者がいるという話は、週刊誌やネットの記事で時々見かける。見映えを気にする商売にあって、数センチの差は大きいのだろう。

実は、われらが株式市場の「株価」がシークレットブーツを履いている。しかも、以前からそこそこの高さの物を履いていたのだが、つい最近、もっと高さのある物に履き替えた。

大半の読者は言わなくても分かるだろうが、シークレットブーツとは、日銀によるETF(上場型投資信託)購入のことだ。年間3兆3000億円から、6兆円に目標額が増加し、「出動日」にあっては、これまで300数十億円だったものが、700億円台に増額されたことも、ご存知の方が多いだろう。当日中には反対売買のない一方的な買いとして入ってくるのだから、この規模は無視できない。

「今日は、そろそろ出る頃ではないか」、「株価が下げたから、きっと出るだろう」などと、ともすれば相場の話題の主役に躍り出る有り様だ。

問題は、このシークレットブーツのおかげで、真の身長ならぬ、真の株価、言い換えると「自然体で形成される株価」が分からなくなったことだ。

芸能人の本当の身長が分からなくても実害はない。だが、「ETF買いがなければ、株価は幾らなのだろうか?」ということが分からない投資家の悩みは案外深い。

株式投資の基本は長期投資だ。「異次元緩和」が終わった後に、我が持ち株がどうなるのかを考えてから、株は買いたいと思うのが人情だ。結婚して(≒株主になってみて)一緒に住んでみて、靴を脱いで暮らしたら、相手はずいぶん背の低い人だった、というような事態は、できれば避けたい。

相場は「八百長!」も同然だが、投資家は当てたい

加えて、「細工」はシークレットブーツ(ETF買い)だけではない。年間80兆円の国債購入とマイナス金利政策によってマイナスゾーンにまで落ち込んだ長期金利も悩みの種だ。シークレットブーツに加えて、頭上には高く盛られたカツラまで乗っているような有様だ。益々、真の身長は分からない。

この政策がいつかは終わるだろうと予想することは当然だが、「自然に形成された長期金利を前提とすると、適正な株価は幾らなのだろうか?」という悩みも投資家には存在する。

もっとも、これらの政策をいつになったら止められるのか、止めるときに無事に済むのかを考えると、本当に悩みが深いのは日銀の方かも知れない(筆者は、さっさと財政的政策を組み合わせるべきだと考えている)。

現在、自然でない株価が形成されていることは、なにがしかの事実だ。我々の好きな競馬にたとえると、いわば、明らかに軽ハンデなのだが斤量の分からない馬が混じっているレースで馬券を買うような状況が目下の株式投資だ。

思わず「八百長だ!」と叫びたくなるかも知れないが、この八百長は、主催者公認であり、馬券は販売されているのだから、私に言わせれば買うからには当てなければならないのが、投資家であり、ギャンブラーだ。「八百長も競馬のうち」と割り切って、好き嫌いを抜きに冷徹に予想し、賭けるのが、正しい勝負師の姿だ。

 

しかも、人間ではまず起こらないことだが、株価にあっては、シークレットブーツを履いている間に、履いている本人の背が伸びるようなことが起こり得る。この場合に、八百長を嫌って「見」(「ケン」。馬券を買わずにレースを見ること)を決め込んで、みすみす当たり馬券を見逃すのは惜しい。

見かけ上のリスクが低下している

日銀のETF買いは、「下がっても、買いが入る」という、なにがしかの安心感につながっていることは確かだ。心理的にも影響の大きな八百長だが、主催者公認であり、ご親切にも、当面止めないことが予告されている。

そして、その他の要因も「見かけ上のリスクが低下する」方向に動いているように見える。

いわゆる「ブレグジット」(英国のEU離脱)は当面深刻な影響をもたらさないらしいことが、分かってきた。何より、英国の株価が元気だ(本当に問題なのは、むしろ欧州の側だが)。

もし米国で「トランプ大統領」が実現したら、一気に不確実性が増大しそうだったが、彼の奇妙な人気は、当面のムードとしてピークを過ぎた。色物タレントが賞味期限切れを起こしたような案配だ。トランプ・リスクも、以前よりも低下した。

原油価格の下落は、発生当初は金融的な不安要因だったが、急激に起こる問題がないとすれば、少なくとも日本経済にとって、時間の経過と共にプラスだ。

ここで、円高のリスクさえ押さえ込めるなら(日銀の今後の対応にかかっているが)、株式投資家が意識すべきリスクは、少々前よりも明らかに低下している。

ついでに、細かい問題だが、裁定取引の買い残が小さいのも結構なことだ。リスクが低下しているとは、リスクに要求される期待リターンである「リスク・プレミアム」が低下するということであり、株式のあるべき理論価値(ファンダメンタル・バリュー)は上昇するということだ。それは、シークレットブーツを馬鹿にしているうちに、実は使用者の身長が伸びていた、というような状況があり得ることを意味する。

投資のセオリーとしては、需給で無理に動かした価格は、「買い」なり、「売り」なりが止まると元に戻りやすいので、有利な賭けのチャンスは「需給対策の逆を張るチャンスを探すこと」だ。

加えて、もともとマーケットに生きる者は、神聖なる市場価格に、需給で介入しようとする「汚い手」が好きになれまい(筆者も嫌いだ)。しかし、相場でも、ギャンブルでも、張り方を決める時には、「好き嫌い」の要素を除外しなければならない。客観的には、シークレットブーツが好きでなくとも、身長の伸びに賭ける方が有利な時期が来ているのかも知れない、と申し上げておく。

 

日々まだまだ蒸し暑いが、明らかに夏の終わりを感じる。JRAの競馬も、中央に帰ってきた。中山第1週のメインは、予想の難しいマイルのハンデ戦、京王杯オータムハンデキャップ(GⅢ、9月11日第11R)だ。夏に走った馬の勢いが残っているか、秋に向けて始動する馬がどれだけ仕上がっているかがせめぎ合うレースであり、開幕週の高速馬場に、ハンデの影響が加わって一筋縄では行かない。1番人気が勝ちにくく、伏兵が馬券に絡んで荒れやすいレースだ。

京成杯は伏兵牝馬のダンスアミーガを狙う

今回は、伏兵牝馬、ダンスアミーガを狙ってみたい。この時期、高速馬場のマイルまでなら、父サクラバクシンオーは強い。しかも彼女は、近走、何れも人気薄から小差の4着に好走している。しかも、ここを勝つと、「サマーマイルシリーズ」のチャンピオンだ。大仕事をしてくれるのではないか。

対抗には、ハンデ(58キロ)と休み明けが嫌われて配当的な妙味がありそうなダノンプラチナを選んでみたい。大目標はマイル・チャンピオンシップ(GⅠ)だろうが、昨年秋に初戦の富士ステークスを勝っている事から見ても、初戦から要警戒だ。同馬主のダノンリバティが「サマーマイルシリーズ」チャンピオンを賭けて出走するここに、わざわざ使って来る事も不気味である。

馬の力だけなら、このメンバーではロードクエストが一番だろう。55キロも魅力的だ。しかし、この馬は、中山がホームだった親父(マツリダゴッホ)に反抗するかのように、中山苦手の、府中OKだ。ここは、次に備えた試走ではないか。試走ではあっても力はあるので、単穴とする。

以下、前走ピークの可能性があるもののハイペースを頑張って2着惜敗のダノンリバティ、右回りは初体験で勝鞍4勝全て1400mが気になるが3歳馬で伸びしろがあるトウショウドラフタ、押さえずに来ると悔しいGⅠ馬クラリティスカイを押さえることにする。

頑張れ、ダンスアミーガ!

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【私のコメント】

崖っぷちを 
伸ばし続ける 
上げ相場
いつまで保つか 
安倍様しだい


日本株は米ダウ394ドル安でどうなるのか

2016-09-11 10:26:57 | 国際金融

日曜日

東洋経済オンライン より
http://toyokeizai.net/articles/-/135507


日本株は米ダウ394ドル安でどうなるのか

警戒が必要?それとも買いのチャンス?

 
 
12日以降の日本株はどうなるのか。米国株の影響を受けるのだろうか(写真:AP/アフロ)

FRB幹部と金利先物市場での「大きなズレ」

9日の米国株式市場で、NYダウは前日比394ドルの急落となった。FRB(米連邦準備理事会)幹部による、早期利上げを示唆する発言などを受けて、9月利上げ(20~21日のFOMC=米公開市場委員会)を意識するムードが高まったことが要因だ。

一方、為替市場では、主要通貨に対してドル高が進行した一方、金、原油などコモディティが下落した。ただ、米金利の見通しを示す「FedWatch」(シカゴ・マーカンタイル取引所が算出するFF金利先物)を確認すると、利上げを織り込むような動きは確認できない。金利先物市場とFRB幹部との利上げに対する認識のズレは大きくなっているようだ。

筆者は引き続き、9月利上げの可能性はないと考える。仮に利上げを実施した際は、市場がさほど利上げを織り込んでいないことからインパクトは大きいと考える。一方、日本株については、結論から言えば、日銀のETF(上場投資信託)買い入れが抑止的に働くことによって、一時的な下げに留まるなど、相対的に底堅い展開が見られそうだ。

もう一度、FRB関係者の発言を検証してみよう。市場関係者の間で「ハト派」(利上げに慎重)寄りとみられていたローゼングレン・米ボストン連銀総裁は「利上げを過剰に長く見送ることはリスク」「完全雇用を確実にするには、緩やかな利上げが必要」との見解を表明した。

また、タルーロFRB理事も慎重姿勢を見せつつ「年内の利上げの可能性を排除しない」「個人消費は比較的良好」とも指摘。さらに、米ダラス連銀のカプラン総裁は「現在の低金利は代償を伴う」との見方を伝えるなど、早期の金利引き上げを示唆するコメントが相次いだ。

8月末辺りから、すでにFRB幹部による「タカ派」(利上げに積極的)なコメントが相次いではいた。だが、従来ハト派だったローゼングレン総裁のタカ派発言はサプライズだったと言えよう。

ローゼングレン氏がFOMCでの投票権も有していることを考慮すると、9月利上げに向けて一歩前進した感はある。実際、株式市場、為替市場は、早期利上げが意識されて株安、ドル高の反応を見せた。

ただ、金利先物市場の反応は引き続き鈍い。東京時間10日9時時点のFedWatchでは、9月利上げの確率は24%、12月利上げの確率は54.9%に過ぎない。ブルームバーグが算出するFF金利先物でも、9月利上げの確率は30%だ。

ともに前日比では上昇しているが、とても9月利上げを織り込んでいる割合とは言えない。金利先物市場とFRB幹部とのズレは修正されないどころか、より乖離している。この低い利上げ確率を元に、マーケット関係者が株式、為替市場でポジションを構築しているとすれば、仮に利上げ実施となれば株安、ドル高が一気に進行するだろう。

日本株の下げは限定的か

では米株安を受けて週明けの日本株はどうなるだろうか。まずは売りで反応するだろうが、ドル高と日銀によるETF(上場投資信託)買い入れが抑止的に働くことから、日本株の下げは、限定的なものに留まると考える。

流動性の低下など、足元の官製相場は中長期的にはマイナスと考えるが、短期的な下げに対しては下げを緩和する圧力として機能する可能性は非常に高いだろう。

実際、NYダウは2%超下落したものの、円建てでの日経平均のCME先物価格は1万6650円だ。また、この価格は9月の配当落ち分(約115円)を加味すると1万6765円辺りとなることから、9日の終値の1万6965円との比較では200円安、1.2%ほどの下落に留まっている。

テクニカル面でも底堅さが確認できる。日経平均は今年初めて重要な節目とされる200日移動平均線(1万6983円)を上抜く場面が見られたが、突破するには至らず、この水準でのもみ合いとなっている。

日経平均は下げても1万6500円レベルまでか

買い材料に乏しいことから、上値は重い。だが上向いている25日移動平均線(1万6737円)が目先、下値を支えるラインとして意識され、機能しそうだ。仮に米利上げ実施となっても、6月24日の年初来安値1万4864円を起点としたサポートライン(1万6500円レベル)が意識されて、英EU離脱ショック時に見られた急落は回避されると見る。

また、日本株急落回避の要因として、ボラティリティ(変動率)の低下も挙げられる。日経VI(ボラティリティ・インデックス)は足元20p台で推移している。

米利上げによるサプライズで多少ボラティリティが上昇するだろうが、年前半との比較では日本市場のリスプレミアムは大幅に低下している。短期筋からすると日本株は売り込みにくい状況だ。まさにこの変化は日銀ETF買い入れ枠拡大による、最大のメリットと言えよう。

なお、8日に発表された今年4-6月期の実質国内総生産(GDP)2次速報値は、前年比年率+0.7%と市場予想(同+0.2%)を上振れる格好となった。

個人消費は引続き弱いが、民間企業設備投資は速報値-0.4%から-0.1%に上方修正されたことが影響した。こうした内容から、20-21日に開催される日銀金融政策決定会合では「統括的な検証」に終わり、次回(10月31日-11月1日)の会合で具体的な金融政策を打ち出すといった流れを予想する。

マイナス金利の深堀りなど、金融緩和実施を予想する声は多い。が、日銀会合に米FOMCの結果が伝わるスケジュールも考慮すると日銀は動きにくいとみる。さらにいえば、この10月末-11月に行われる会合も米大統領選挙の投開票(11月8日)前となることで動きにくいが、投開票の1週間前となれば、米大統領選挙の流れはある程度決まっている可能性はある。

いずれにせよ、この12日からは日米とも政府要人の発言に振り回される展開もありそうだが、相対的に日本株は底堅い展開となりそうだ


月収13万円、37歳女性を苦しめる「官製貧困」

2016-09-11 08:29:10 | 女性、夫婦別姓、外国人

日曜日

東洋経済オンライン より
http://toyokeizai.net/articles/-/134801



月収13万円、37歳女性を苦しめる「官製貧困」

公営図書館の嘱託職員は5年で"雇い止め"に

:ノンフィクションライター 中村 淳彦Atsuhiko Nakamura
ノンフィクションライター東京都生まれ。
アダルト業界の実態を描いた『名前のない女たち』『職業としてのAV女優』『日本の風俗嬢』『女子大生風俗嬢』など著書多数。
フリーライターとして執筆を続けるかたわら介護事業に進出し、デイサービス事業所の代表を務めた経験をもとにした『崩壊する介護現場』『ルポ中年童貞』が話題に。
最新刊は、女性の売春が政治経済に影響されることを解説した『図解日本の性風俗』(メディアックス)。
 
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図書館で市の嘱託職員として働く、谷村綾子さん(37歳、仮名)


この連載では、女性、特に単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。
今回紹介するのは、図書館で非正規雇用で働く女性だ。ごく一般的な女性である彼女が、なぜ貧困に苦しむようになったのか。

 

この連載の一覧はこちら

都内の閑静な住宅街、真夏の陽が痛い。アスファルトからは湯気のように気体が立ち昇る。門構えが立派な高級住宅が建ち並ぶ中に、公営の図書館がある。公園が隣接し、放課後に遊ぶ小学生や小さな子どもたちの声が聞こえた。

谷村綾子さん(37歳、仮名)は、この図書館に勤める図書館司書だ。館内に入ると神聖とも言える静かな雰囲気、司書たちはカウンターで貸し出し返却業務、カートを押して本の整理、カウンター奥の事務スペースでは黙々と事務作業をする。館内は広く、週刊誌や文庫本から専門書、地域の資料まで幅広い本がそろう。谷村さんの終業時間は17時15分。隣の公園で待つと、17時20分にはやって来た。黒髪、清楚で堅いイメージ、おだやかでまじめそうな女性だった。

「市の嘱託職員になります。図書館で働く司書の7割くらいは非正規雇用で、給与は安いです。未婚、ひとり暮らしなので正直、毎日不安と焦りばかりです……」

役所、義務教育機関、福祉施設の運営、公園管理、文化観光、清掃、防犯防災などなど、市区町村の仕事は幅広い。膨大な業務があり、とても正規採用された職員だけではこなせない。それぞれの公共機関で多くの非正規職員を雇用して、業務を回して運営している。

賞与はなく、年収204万円

駅近くの喫茶店で話を聞くことにした。駅に向かって歩きながら、給与明細を見せてもらう。支給総額は17万円。所得税、住民税、社会保険料を引かれて、手取り金額は13万3442円。賞与はなく、年収204万円である。非正規職員の平均賃金は205万1000円(平成27年賃金構造基本調査統計)、谷村さんは平均的な非正規労働者と言える。

年収204万円、手取り13万3442円で、家賃5万円のアパートでひとり暮らし。手取り給与から家賃を差し引くと、月8万3000円しか残らない。貧困では「相対的貧困」という概念が使われる。「相対的貧困」は国民1人当たりの可処分所得の平均の、さらに半分に満たない状態を言うが、家賃を引いた可処分所得が99万6000円の谷村さんは、実質的にはこの水準に近いといえるだろう。行政機関で通常の常勤職員として働き、非正規雇用の平均給与を稼ぐひとり暮らしの女性が「相対的貧困」に足を突っ込みかねない時代に突入している。

「その日暮らしは十分できます。もっと経済的に厳しい人がいるのも十分承知はしています。けど、ずっとギリギリの生活で、何のぜいたくもしていないのに貯金すらできない。嘱託は1年契約、更新は最長5年と決まっていて、今は4年目です。来年はすごく頑張っても、仕事で成果を出しても確実にクビになります。低賃金なので蓄えはないし、年齢ばかり重ね、私はいったいどうなってしまうのだろうって」

家賃5万円。自宅は最寄り駅から15分と遠く、都内ではかなり安い。仕事はシフトによって、終業は17時15分か20時15分。谷村さんはいつも仕事帰りに駅前のスーパーマーケットで割り引かれた食材や総菜を買い、帰宅する。部屋にはテレビもパソコンもない。調べものはスマートフォンでする。夕飯を食べて家事をして、休日や空いた時間は自宅で勉強をしている。

悩んだ末に今年4月から学芸員の資格を取得しようと、通信制大学の科目履修生になった。給与が安いので外食や交遊、買い物はほとんどしない。仕事、家事、勉強を繰り返す孤独で単調な生活で、毎日職場や自宅で何度か「私、これからどうなっちゃうの」と、不安になる日々という。

「図書館司書は専門職です。私は子どもたちのための児童書や児童文学に詳しくて、たまに自分が企画してフェアみたいな企画をやっています。でも役所は誰でもできるって考えているし、いくらでも交換ができる部品くらいにしか思われていません。だから、非正規なのでしょう。私は司書の仕事をどうしても続けたくて、今ここが2カ所目です。前は他県の図書館で働いて、満期5年で契約が切れてしまったので都内に引っ越しました。また、あと1年半しか仕事ができないって考えると不安で、たまに眠れなくなることもあります」

嘱託職員は最長5年と、労働する期間が定められる雇用だ。勤務先の公営図書館は嘱託職員が中心となって運営している。必要な人材であっても毎年、誰かが契約切れで辞めていく。非正規採用の職員が無期雇用となる道はなく、司書の仕事を継続したいなら、別の自治体が運営する図書館に非正規として再雇用されるしかない。

5年の契約が切れるときは40歳目前

「5年の契約が切れるとき、私は39歳です。すごく司書の仕事は好きで続けたいけど、またギリギリの生活から抜けられない覚悟をして、同じような非正規を渡り歩くか、またはほかに能力ないけど、もう少しまともな生活ができるような仕事をなんとか見つけるか。年齢もあるし、本当は将来がないなら今すぐちゃんとした仕事を探したほうがいい気もするし。悩みばかりです」

彼女はメールで応募してくれた女性だ。応募理由はどうやらまじめに働いても抜け道のない生活に悩み、取材というより、誰かに相談をしたくて応募をしたようだった。同じ司書の同僚は地方公務員だったり、非正規ならば親元で暮らしていたり、配偶者がいたり、ひとり暮らしという同僚はいない。

図書館などの公共サービスは、自治体が民間の指定管理会社に運営を委託する流れがある。将来的に賃金上昇や雇用改善が期待できない業種だ。私は「年収200万円は非正規の平均で決して珍しい例ではなく、むしろ一般的。40歳で異業種に転職しても、おそらく賃金は似たり寄ったり」「学芸員の資格を取得しても雇用は少ない。貧困から抜け出すキッカケにはならない可能性が高いのでは?」と伝えた。谷村さんは“やっぱり”という表情になってため息をつく。

「悩んでしまうのは、あと何年でクビという不安から逃れたいから。ひとり暮らしで貯金がゼロなので、働き続けないとホームレスになっちゃいます。だから、本当に、働ける期限があるのは怖い。やっぱり正社員として働きたいって思う。きっと、自分にもそういう働き方ができるというかすかな希望を持っています。あとは世の中にはボーナスがあると聞きます。もし、ボーナスをもらえるような職に就けたら、もっと人間らしい生活ができるのかなとか」

どうして、ただただまじめに勤労する女性が苦しむのか。単身で暮らす20~64歳の女性の3人に1人(32%)が貧困状態にある(国立社会保障・人口問題研究所)。さらに65歳以上の単身女性になると47%と過半数に迫る勢いとなっている。

さらに公共機関で働く彼女は、残酷なほどの正規非正規格差の渦中にいる。全産業での正規職員の平均賃金は321万1000円(平成27年賃金構造基本調査統計)と比べると約6割の収入しかない。さらに職場の同僚にいる正規の地方公務員と比べると、正規は平均年収669万6464円(平成26年地方公務員給与実態調査)と好待遇で、非正規の賃金は正規の3分の1にも満たない。

努力や自身の成長、仕事の成果ではどうにもならない絵に描いたような官製貧困、官製格差だ。貧困から抜けて、普通の生活をするためには学芸員の資格取得ではなく、ダブルワークをして長時間労働によって差額を埋めていくしかない。実際に同じような官製貧困に悩む、介護職の女性たちのダブルワークは常識で、その一部は性風俗に流れている。

低賃金や格差の現実で精神的に追い詰められ、悩み、身動きが取れなくなるのは谷村さんのような、よりまじめな一般女性たちだ。いったい、どうしてそうなってしまったのか。

新卒入社の会社では長時間労働の末、倒れた

両親と妹は父親のリストラを機に地元の北海道に帰り、谷村さんは社会人1年目からひとり暮らしを始めた。中堅大学の文学部を卒業して、IT系の中小企業に就職する。

「新卒入社の会社は5年間ほど勤めました。残業は月100時間ぐらいあったけど、残業代は出ました。なので、手取り25万円は超えていました。実は、お酒飲むのが好きで、その時代はよく友達と飲みに行ったりした。すごく忙しかったけど、自分のこれまでを振り返ると、いろいろ友達もいたし、当時がいちばん普通の生活だったなって。そのような普通の生活ができたのは、当時だけ。結局、残業代はたくさんもらっていたけど、長時間労働の過労で倒れて体調を崩しました。精神科では抗うつ神経症って診断されて、働けなくなりました。両親のいる実家に帰って、しばらく休んでから大学時代に取った図書館司書の資格を生かそうと図書館に勤めた。今と同じ嘱託職員で、手取りは12万円程度でした」

実家から図書館に勤めていた頃は、手取り12万円の貧乏だった。貧乏ながら好きな本を買う、買い物する、友達と遊ぶ、休日に問題意識のある障害者分野のボランティアに行く、ということはできた。貧乏の領域を超えて、貧困になったのは図書館勤務を継続したいと、都内に引っ越してひとり暮らしを始めてから。最低限の衣食住で可処分所得は消え、一切の遊びや余暇活動ができなくなった。昔のように友達と会うこともなくなり、自宅で独り悩む時間が増えた。

学生時代から“まじめな普通の子”だった。恋愛は誰かが教えてくれるわけではない。気づいたら出遅れていた。初めて男性を好きになったのは20代半ば、現在の図書館勤めになってから出会いはないし、どこかに出かけるおカネすらない。

「25歳くらいのとき、飲み屋さんで、好きな人ができたことはありました。北海道のときに30歳手前、初めて男性とお付き合いしました。そのときの相手は好意を持ってくれるけど、なんとなくちょっと引っかかるみたいな。クセがある人でした。精神年齢が低いというか、自己中心な性格でたまに激高しちゃうみたいな。今まで誰かと付き合ったことがなくて、好きな人ができないままより、一度ぐらい誰かと付き合ったら、いい部分も見えてくるかもみたいな意識でしたが、さすがに結婚まではいきませんでした。男性経験みたいなものは、それだけです」

「結婚や出産は、収入がある人の特権」

飛行機代がなくて、実家に帰れないと言う谷村さん

高度経済成長以降の日本は、結婚前提、企業を通じて妻や子どもに再分配される制度設計だった。労働者派遣法改正による非正規化の影響によって、多くの労働者は収入が下がり、世帯主の収入だけでは生活を支えられなくなったのが現在だ。そして女性の単身世帯は3人に1人が貧困という、壮絶な貧困社会に突入した。

「結婚すれば、生活が変わるみたいなことはよく言われていますが、非正規で低収入な自分にまったく自信がないし、誰かが見初めてくれるとはとても思えない。やっぱり結婚とか出産は、普通以上の収入がある人の特権というか、自分にかかわることとはとても思えないです」

うつむきながら、悲観的なことを語り出した。

「うちの図書館、一緒に働く3~4割くらいが正規の公務員の方々です。正規の方々が職場で話していることって買い物とか旅行とか、子どもの教育とか、そういう話。正規でちゃんとしたお給料があって、家族で暮らしている人たちは、子どもにたくさん習い事をさせて、年に何度か海外旅行に行くんだ……って。何か別世界というか。私は飛行機代がなくて、今の職場で働き出してから一度も実家には帰れていないのに。この差って、何なのでしょう? 仕事をまじめにやっているだけではダメなのでしょうか。正直、ずっとすごく苦しいです」

安倍政権は「働き方改革」「一億総活躍」などの指標を立て、さらなる女性の社会進出を後押ししようと動いている。しかし、全雇用者の4割を占める非正規職員や、貧困に近い状態の生活を強いられる非正規女性たちが、自分の力だけでその苦しい状態から抜け出せる道はほとんど用意されていない。それだけでなく、彼女がかかわる公共事業は民営化や非正規化による予算削減で、ギリギリの生活の現状維持すらできない状態だ。

谷村さんは貧困状態の現状維持すら否定される中で、かすかな希望をもって今日も学芸員の資格取得の勉強をする。