昨夜は、イタリアから来日中のマリアさんと、友人Hとトモエさんと食事をしました。
マリアさんのスケジュールがなかなか確定しなかったこともあって、お店を選んでいる状況ではなかったところ、彼女の希望が天ぷらということで、急遽新橋駅から近い老舗の天ぷら屋を予約。
ここのお店は私も友人達も利用したことがなかったのですが、『老舗』であるから大丈夫だろうと勝手に思い込んでいました。
が、天ぷらは衣が厚く、しかも冷めているし、仲居さんは愛想がないだけでなく、逆に客より偉そうな態度。
(唯一フロアマネージャーのサービスや心遣いが「老舗」の名に恥じることがなかったのがまだ救いです。)
私たちが利用したフロアーは、月曜日ということもあって、ガラガラで、「これで、採算がとれているのだろうか」と心配するほどですが、これでもつぶれないのは、私たちのように『老舗』の名前に安心してしまう客がいるためか。
Hがマリアさんに、「天ぷらはいかがでしたか?」と聞くと、マリアさんは「美味しいわ」と言ってくれていましたが・・・・私は、「こんな天ぷらではなくて、もっと美味しい天ぷらを食べさせたかったな」と思い、後で聞くに、やはりHなどもそう思ったそうです。
『なんちゃって日本料理』を海外ではなく、東京の一等地で体験した気分になりました。いくらなんでも老舗に恥じない調理人はこのお店に入るはずですが、上客以外の料理は適当なのか。(階や部屋によってメニューが違います。)
まあ、お料理やサービスは今一つとはいえ、私たちが利用したところには、利用客が私たちしかいなかったおかげで、存分大きな声で(私の下手な英語も混じり)おしゃべりを楽しむことができたのは、幸いでしたけど。
さて、個人経営の天ぷら屋と違って、国や都市が「老舗の暖簾に胡坐をかく」になってしまった場合、これは取り返しがつきません。
ニューズウィーク(2013.11.12)
新国立競技場が神宮の森を破壊する
By レジス・アルノー
http://www.newsweekjapan.jp/column/tokyoeye/2013/11/post-755.php
1964年の東京オリンピックほど、開催都市に影響を与えたオリンピックは少ない。今の東京の姿は基本的に、あの頃につくられた。64年の日本といえばスタートラインに就いたばかり。国民の年齢中央値は約26歳で、第二次大戦中の空襲で焼け野原になった東京は不死鳥のごとくよみがえろうとしていた。
後藤・安田記念東京都市研究所によれば、日本は年間予算の3分の1に当たる約1兆円をオリンピックに費やした。今日の約70兆円に相当する額で、大半は新幹線や首都高速道路、地下鉄の建設に使われた。
64年は、日本の製造業が目覚ましい成長を始めた年でもある。65年から85年にかけて自動車の輸出台数は35倍に、テレビの輸出は148倍になった。文化的創造力も発揮された時代だ。市川崑監督のドキュメンタリー映画『東京オリンピック』は、当時の日本がいかに独創的だったかを証明している。
そして今、日本はゴールに近づいている。年齢中央値は約45歳で、2度目の東京五輪が開催される20年には48.2歳になる。64年当時の2倍近くに老けるが、それでも五輪によって東京という都市は新たに輝くだろう。
だが、街が破壊される危険もある。不動産開発業者は東京をコンクリートで埋め尽くそうとしている。彼らが計画しているのは、カジノの建設と神宮外苑の周辺を破壊することだ。
神宮外苑に関して言えば、ザハ・ハディドが設計する新国立競技場が一帯の景観を台無しにしてしまうだろう。新競技場の総床面積は東京ドームの約2.5倍で、オリンピック史上最大。高さ70メートル、収容人数8万人に上る。総工費は1300億円と見込まれていたが、10月になって3000億円に膨れ上がる可能性があると報じられた。日本が膨大な政府債務を抱えるこの時代に、だ。
東京はバブルから何も学ばなかったのか。この建築計画は、日本のメディアの沈黙の中で承認された。計画に疑問を呈する勇気があったのは、槇文彦ほか数人の建築家だけだ。
(後略)
老舗天ぷら屋が、味やサービスを落として落ちぶれたりしても、それは努力次第でまた元のようなお店によみがえる可能性はあります。
努力をしなければ、結局はつぶれるだけの話。
が、一度破壊をしてしまった都市景観や自然は、元に戻すことは容易ではないばかりか、これはウィルスが広がるように、破壊は拡がっていき、同時に『東京』を素通りする外国人も増えていくことでしょう。
しかも、この破壊をする側は利益を得る一握りの人たちがいて、破壊とともに債務を後世荷まで押し付けるので、たちが悪いです。
参考:
無料航空券バラマキより効果があること
http://blog.goo.ne.jp/afternoon-tea-club-2/d/20111107
ビルの隙間の日本家屋-旧市街のない美しい国(?)