榊原英資氏が、「クルマは安全、健康、環境のキーワードすべてに反する。だから自動車の時代は終わった。GMの破綻はその象徴だと私は捉えている。」
「20世紀型はモノの民主主義の時代だった。21世紀は環境、自然、安全、健康に移って行く。これはある意味資本主義の成熟みたいなもの。」というようなことを言っていました。
私はこの自動車の話も極論だと思いますし、「21世紀が環境、自然、安全、健康に移って行く。これはある意味資本主義の成熟みたいなもの」というのを彼が本気で言っているとしたら、よほどおめでたい方だと思います。
「21世紀は環境、自然、安全、健康に移って行く」というのは理想とすべきですが、その動きは、それで利益を得られる人達がいるから発展させる、というのが事実に近いでしょう。
日、米、EU、露、中、韓、印の7ヶ国・地域が参加する「国際熱核融合実験炉(ITER:International Thermonuclear Experimental Reactorの略称。“イーター”」の建設が本格的に動き出したそうです。ITER機構では、6月5日に研究協力者の募集を開始しました。
http://www.naka.jaea.go.jp/ITER/iter/index.html
これは「環境、安全」に加えて「エネルギー問題」を解決するという名のもとに行われているプロジェクトですが、まさに上記の見本(利益を得られる人がいる)のような気がします。
ITERの安全面は強調されていますが、それに疑問を持つ人は多数。しかし、この問題以前に、核開発にかかわる問題(トリチウム拡散)も含んでいます。
ある学者が、日本へのITER誘致に失敗した後、こんなことを書いていました。
「ITER本体を日本に誘致できなかったことはある意味残念だが、
ITER誘致によって予算上も政策上も動けなかった我が国の核融合研究が復活した意義は大きい。」
下の文言は、フランス誘致するためにフランス人が書いたものだと思いますから、日本に不利にするために書いたものですが、そのなかで軍事利用についての危惧についてあげています。
「核兵器拡散情勢は数年前に比べ、はるかに複雑になり、今後は,熱核融合兵器技術、第4世代の核兵器の拡散問題へ、と質を変える。」
「日本には非核三原則があるので、核兵器は持たないはずである。しかし、核保有が潜在的状態から現実に移行するのは、民主的な決定過程には依らず、そこに技術があるからという事情が最もあり得る。」
確かに技術革新、協力-国家という枠組みを超えていく良い面もありますが、ITERがモノがモノのだけに、協力国以外にとっては権威にもなり、協力国同士であっても問題は出てきそうな気がしますので、これはしっかり注目していく必要があるように思います。