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「原発でエコ」のウソがまかり通る異常

2008年07月13日 08時41分42秒 | 福田第2次投げ出し政権
 先日閉幕した洞爺湖サミットでは、鳴り物入りの「環境サミット」の宣伝とは裏腹に、何も成果が出ませんでした。最も焦眉の課題である地球温暖化防止についても、独・英2国が確実にCO2削減で成果を挙げているのとは対照的に、日本や米国は常にその足を引っ張ってきました。食糧・エネルギー価格高騰の一因ともなっている投機マネーの規制や、南北問題・途上国の累積債務問題についても、何ら解決の道筋を示す事が出来ませんでした。それどころか、あろうことか、地球温暖化防止の名目で、何と原発推進を謳うという醜態まで曝け出してしまいました。今回の洞爺湖サミットには何ら得る所が無かった事が、各種世論調査の結果にも如実に現れている事も、既に私がコメント等で明らかにした通りです。

 しかしそれでも、「政府はよくやった」とか「地球温暖化よりも経済成長や国益が大事」という人も、まだまだ少なくありません。実際に私の周囲にも、「温暖化の主因は中国・インドであるのに日本は悪く言われすぎている」とか、「原発こそ温暖化防止の切り札だ」という人が少なからず居ます。それに電力会社も悪乗りして、下記の関電HPに見られるが如く、盛んに原発推進を煽っています。

 確かに、その次のJCCCA資料(上記画像)で、現時点での各国別CO2排出量を見る限りでは、米国22%に次いで中国19%や、インド一国で既に4%を占めるなど、EU16%、ロシア6%、日本5%と肩を並べる水準にまで至っているのは事実です。しかし、それを国民一人当たりの排出量で引き直すと、主要排出国はやはり日・米・欧州などのG8諸国という事になってしまいます。
 G8諸国は、産業革命以来の数百年に渡ってCO2を排出してきたという意味で、中国・インドその他の途上国とはまた別の、特別に重い責任があるのです。歴代の排出に責任を負う意味から率先して範を示さなけばならないと同時に、途上国の排出削減をも技術的に支援しなければならないという、2つの意味において。
 
 その中で、EU諸国はまだしも、曲がりなりにも一定の責任を果たしつつあると言えます。それに対して日米サイドがよく言い訳に持ち出してくるのが、「90年という基準年そのものが、最初からEUに有利なものであった」という理屈です。つまり、90年代EUのCO2削減は、「ベルリンの壁」崩壊に伴う経済後退に因るものでしかなく、必ずしもEUの自助努力によるものではない、と。

 しかし、それは事実に反しています。EUがCO2削減で成果を出しつつあるのは、別に「ベルリンの壁」崩壊に伴う経済活動の停滞だけが、その要因ではありません。ドイツや英国などは、一国単位で見ても確実にCO2を削減しているのです。何故それが出来たのか。それは、これらの国々には市民社会が根付き、「環境は人権」との合意が産業界をも含めて、広範囲に存在しているからに他なりません。そこが、公的保険制度もロクスッポ存在しない米国や、戦後になってやっと建前だけでも主権在民や生存権を謳う憲法を持つ事が出来た日本などの、社会的人権の観念が希薄な「新自由主義」諸国との決定的な違いです。

 この様に、EUがまだ曲がりなりにも、国や産業界も含めて「環境権」保障の立場に立っているのに引き換え、もう一方の「新自由主義」諸国はというと、京都議定書や気候変動枠組条約の取り組みから勝手に離脱するわ、バイオ燃料買占めで食糧需給の逼迫をもたらすわ、原発推進を公言するわと、もう足を引っ張りまくっているのです。そして、「環境人権」諸国からその事を指摘されると、自分たちのそれまでの行状は棚に上げて、やれ「EUは最初から下駄を履かせて貰っている」だの「途上国に甘く自分たちに厳しいルール」だのと、他者に罪を擦り付ける事ばかりに汲々として。

 その挙句に、「温暖化防止」の対案が「原発推進」とは・・・マジで呆れました。斯く言う私も、環境問題に特に造詣が深いという訳ではないのですが、それでも昔少しは取った杵柄、現行の原発がエコの代替とはとても成らない事ぐらいは、少し考えただけでも分かります。
 そもそも、核燃料の再処理技術が未確立のままで、平然と操業し続けている原発が、地球環境に優しい筈など在る訳ないじゃないですか。自分の出した放射能糞の始末も出来ないで、分解も中和もせずにそのまま野壷に溜め込むしか能が無い、そんな状態のままで。一時期は再処理の切り札として盛んに喧伝されたプルサーマルや高速増殖炉にしても、それが何の役にも立たない代物である事は、「もんじゅ」の事故を見れば一目瞭然です。

 それに加えて、安全性に疑問符が付きます。何も知らないくせに、ただ何となく「日本の原発はロシアや中国とは違って安全だ」と思い込んでいる人をよく見かけますが、それが何の根拠も無いマヤカシである事は、少しでも原発の実態を知れば直ぐに分かります。
 ご存知の通り原発は、核反応の熱で高温・高圧の一次・二次「冷却水」を循環させ、その力でタービンを回して発電しています。特に一次冷却水の段階では、何と300℃程もある熱湯が、高圧を掛けられて液体のまま原子炉配管内を循環しているのです。施設の経年劣化たるや凄まじいもので、常時点検や補修が必要です。しかし、その度に原発を停止していたら膨大なコストが掛かります。勢い原発を稼動したままで、5分や10分、放射能濃度の高い場所では僅か数十秒の間に、所定の点検・補修作業を終えなければなりません。配管のネジ一つ締め直すのにも数人から十数人掛りの作業なのです。そんな状況下では、ネジを締め間違えたり工具を置き忘れたりという事は日常茶飯事で、表沙汰にならない事故も決して少なくはない筈です。

 原発が喧伝する安全教育も、結構いい加減な代物です。そうまでしてコストを切り詰める電力会社が、どこの馬の骨とも分からない原発ジプシーの為に、宇宙服や酸素マスクなど用意する筈がありませんし、そもそも、そんな物を着ていては作業になりません。作業員の着用する防護服は、実は放射能謀議機能も何も無い只の作業服なのです。それを作業終了後は使い回しせずに廃棄する事で、放射能を管理区域外に持ち出さない様にしているだけなのです。会社の安全教育は、その実態を隠す為の、単なる洗脳教育にしか過ぎません。

 そもそも、そんなに安全に留意しているのなら、何故、あいりん地区からコソコソと原発ジプシーを連れて来るのか。何故、堂々とハローワークで募集を掛けないのか。また何故、電力消費地の京阪神から遠く、送電コストも掛かる福井県や和歌山県に(計画中のものも含めて)、渋る市町村には無理やり飴玉しゃぶらせる様な真似をして、原発を立地させるのか。何故、大阪の南港に原発を作らないのか。本当は、原発が安全だとはとても言えない事を、自分たちも実はとっくに知っていて、それを如何にも安全であるかの様に、言い繕っているだけではないのか。

 原発にはその他に、核兵器や劣化ウラン弾の開発・製造にも結びつく軍事転用の問題があります。だから米国も、自国やイスラエルにおけるこれらの問題には目を瞑りながら、シリアやイランの原子力開発には一々難癖を付けるのです。原発は、たとえ米国のものであれイランのものであれ、環境破壊の元凶である事には変わりないので、どちらも廃棄するのが望ましいですが、自分の所はお咎めなしで他人の所にばかり言い掛かりを付ける姿勢では、誰も耳を貸しません。

 以上、殆ど素人の私が少し調べてもこれだけの矛盾があるのに、それをいとも簡単に「原発は火力発電よりもCO2排出量が少ないからエコだ」「かくして洞爺湖サミットは成功裏に終わった」なんて言ってのける心理が、私には理解出来ません。
 それもこれも、「地球温暖化を食い止める為に如何に行動すべきか」という本質を見ないで、只ひたすらCO2削減の「数合わせ」だけに汲々としているから、そうなるのです。そうして私利私欲に汲々としているのを、「国益」という曖昧な言葉で誤魔化しているだけなのです。もう、国民をバカにしている、舐め切っているとしか思えません。しかし、国民もそこまでバカではありません。それが証拠に、先のネット世論調査でも、「幾ら笛吹けど殆ど誰も耳を貸さず」という結果となって現れているではありませんか。こんな「裸の王様」政府など、もはや一刻も早く退陣在るのみ。

(参考資料)
・エネルギー安全保障と気候変動に関する主要経済国首脳会合宣言(仮訳)(北海道洞爺湖サミット公式HP)
 http://www.g8summit.go.jp/doc/doc080709_10_ka.html
・CO2の少ない電気(関電HP)
 http://www.kepco.co.jp/kankyou/co2/reduction.html
・世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と各国の一人当たりの排出量の比較(2005年)(JCCCA)
 http://www.jccca.org/content/view/1041/781/
・地球温暖化対策に関する基本方針に「原発推進」を明記することについて(WWF)
 http://www.wwf.or.jp/news/press/1999/p99031501.htm
・原発がどんなものか知ってほしい(平井憲夫)
 http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html
・世界が直面する地球温暖化問題(平田仁子)
 http://www.dear.or.jp/world/warming/index_com01.html
・WWF・EU ETSに関する評価報告書の概要(WWFジャパン)
 これを見ると、ドイツや英国が一国単位でも確実に90年比でCO2を削減しているのが分かります。その両国とて必ずしも手放しで賞賛出来るものではありませんが、少なくともその取り組み姿勢においては、凡そ日米とは比較になりません。
 http://www.wwf.or.jp/activity/climate/japan/torihiki/2006euets.pdf

(関連記事)
・新自由主義G8談合粉砕! 人民の対抗サミット万歳!
 http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/7ada42dc277a9bb09ef965394c444ca9
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