この記事は元々は秘密保護法反対の内容でしたが、その中で安倍政権の経済政策(解雇特区、限定正社員化などの労働規制緩和)にも少し触れた部分があり、そこからコメント欄での議論が始まりました。その為、エントリー記事とコメント欄の内容が乖離する事になりました。
その場合、本来ならエントリー記事に沿った内容での議論をお願いする所ですが、コメント欄での議論の内容も重要だと思いましたので、今回に限り、今回はエントリーの方を別のページに移転し、併せてコメント欄の議論を補足する形で表題の資料を紹介する事にしました。以上、悪しからずご了承くださるようお願いします。
その場合、本来ならエントリー記事に沿った内容での議論をお願いする所ですが、コメント欄での議論の内容も重要だと思いましたので、今回に限り、今回はエントリーの方を別のページに移転し、併せてコメント欄の議論を補足する形で表題の資料を紹介する事にしました。以上、悪しからずご了承くださるようお願いします。
についてですが、現在の労働者派遣の抵触日制度をプレカリアートさんはご存知ですか。
この制度は、ファイリングなど、派遣法上専門的な技能が必要とされる26種類の業務(専門26業務と言います)以外の業務(自由化業務といいます)については、当該事業所が最初に派遣会社と取引を始めてから最大3年と1日が経過した時点で、一旦労働者派遣契約を解除しなければならないというのが現行制度です。
例えば、ある事業所で前任の派遣労働者が2年9か月勤務していたとすると、後任の派遣労働者は3か月しか勤務出来ません。この期間を越えて派遣会社が労働者を派遣すると、労働者派遣法違反となります。
なので、抵触日が近くなると、派遣先も派遣元も、当の派遣労働者もドタバタします。派遣先は派遣労働者に対して直接雇用の申し入れ義務がありますが、諸般の事情で派遣会社にそのまま所属していたい労働者は、その職場を離れざるを得ません。派遣先にとっては、貴重な労働力を失うことになります。
今回の制度改定は、専門26業務の区分を撤廃した上で、派遣労働者単位で派遣可能な期間を一律3年とした上で、長期勤務を希望する人については派遣元で期間の定めの無い雇用を行えば、無期限で派遣先で勤務することが出来るとしています。
また、届出のみで開業できる特定労働者派遣事業を廃止して、国の許可が必要な一般労働者派遣事業に一本化するとしています。
このように、今回の派遣法改定は、一概に制度改悪とは言えない部分があるので、派遣労働者からも一定の支持をされるように思います。
>貴重な労働力を失うことになります。
だったら正社員にすればいいじゃん。
>無期限で派遣先で勤務することが出来るとしています。
貴重な戦力になっても一生派遣…
>国の許可が必要な~一本化
この一本化っていうのが害悪なんですよ。
まあ、派遣=非正規雇用というのも誤解ですね。社会的分業が深化する中で、アウトソーシングが常態化している昨今、勤め先では正社員として勤務していても、クライアントに出向いて仕事をする際、法律上の関係で勤め先とクライアントは労働者派遣契約を締結し、勤め先が派遣元、クライアントが派遣先になるという場合もあります。
例えば、販売支援業務などは原則的に派遣法上の自由化業務に当たるので、もしクライアントが別の派遣元を利用した場合、その派遣元と付き合い始めた日から3年経過した段階で、一旦自社の労働者を引き上げなければならないというのが現行法です。例え本人が勤務先に長く根付いており、クライアントから頼りにされていても、です。
このようなケースの場合、「正社員にすればいいじゃん」では、全く問題は解決しません。もともと正社員なのですから。
私が安倍政権の派遣法改定が一定程度支持されるのではないかと書いたのは、このような派遣実務の現実を踏まえてのことです。
少しでも派遣実務を経験すれば分かりますが、間違い無く一般労働者派遣事業者の方が特定労働者派遣事業者よりも法的なハードルが高くなりますし、行政の監督の目は厳しくなりますね。だからこそ、労働政策審議会においても、この点については、労働者側の委員も支持をしているのです。
私は労働運動が労働者派遣におけるコンプライアンスの徹底を標榜するのは良いことだと思うんです。
実際、リーマンショック以降、派遣先も派遣元もコンプライアンスにはかなり気を遣うようになりましたから。
ただ、なぜグッドウィル等の「データ装備費」問題などで一時は高揚した派遣労働運動がしぼんでいったのか。
その一因としては、「データ装備費」のような合理的理由が無い「ピンハネ」についての左派労働運動の主張は明快でわかりやすいものの、一部の左派労働運動にありがちな「正社員至上主義」には、当の派遣労働者も疑問に感じている向きが少なからずあるからだと思いますね。
プレカリアートさんが
>元請け・下請けの多重構造の下では、下請け企業の中ではいくら直接雇用の正社員や契約社員であっても、元請けからすれば間接雇用の派遣・請負と変わらない訳ですから。
と書かれているように、産業構造として重層的な下請・元請図式がある中では、どこからどこまでが労働者にとって実質的に「直接搾取」なのか、それとも実質的に「間接搾取」なのか、分かりにくいのでは無いでしょうか。労働者派遣が禁止されている建設現場などは、その典型でしょう。
以前、あるマルクス主義者の方と酒場で議論をしたことがありますが、私が属している業界では、昔から「営業会社」とか「マネキン会社」「イベント会社」という業態があり、営業・販売部門のアウトソーシングは常態化しています。派遣という働き方が登場するはるか以前からです。
何故なら、「直接搾取」(直接雇用)なら、雇用主=経営者は従業員の安全管理に直接責任を負わなければならないから、従業員も直接、雇用主に労働条件改善の要求を突き付ける事が出来ます。しかし、「間接搾取」(間接雇用)になってしまうと、雇用主≠経営者という事になってしまい、労働者は労働条件改善の道を完全に閉ざされてしまいます。
その一番残酷な例が個人事業主(個人単位の請負契約)でしょう。そこでは労働者は「下請けの一人親方」として扱われ、労働法の保護の外に放り出されてしまう。
勿論、実際はそんな単純な論理だけでは割り切れない事は私も承知しています。元請け・下請けの多重構造の下では、下請け企業の中ではいくら直接雇用の正社員や契約社員であっても、元請けからすれば間接雇用の派遣・請負と変わらない訳ですから。
本来なら直接雇用にすべき会社の一部問、一業務まで、分社化や外注化の形で無理に間接雇用にされてしまった為に、「分断・差別」と「無責任」がまかり通るようになってしまった。今はそんな会社や現場がかなり目につく様に思います。
郵政民営化以降の郵便局が正にそうでしょう。元々一つの郵便局として直接雇用されていたのに、分割民営化で郵便・貯蓄・保険の各部門が無理やり別会社にされてしまった為に、同じ郵便局の中でも忙しい窓口と暇な窓口の間で大きな格差が生じるようになった。それでも窓口(会社)が違うという理由で、お互い助け合う事も出来なくなった。その為に無駄に苦労を強いられる労働者や不必要に待たされる客こそ良い迷惑です。
これは何も郵政やJRなどの元公社だけに限った話ではありません。純民間の私の会社でも同じ様な事が起こっています。例えば、ハムや日配品の仕分けは私たち直接雇用の契約社員が行うのに対して、チョコレートの仕分けは委託業者に任す事になっているので、私たちは手伝う事すら禁止されています。下手に手伝って仕分けを間違えれば、私たちも責任を負わなければならなくなるからです。
しかし、チョコレートの入荷が一番遅い為に、作業終了もそれに引きずられてどんどん遅くなる。でも管轄外なので私たちには一切口出しできない。
こんな「縄張り主義」的なやり方では業務改善なんて到底出来ないし、そんな無責任な仕事ぶりでは社会的信用も失われていく筈なのですが、今の日本ではそれが堂々とまかり通っている。そんな環境の中では、有能で責任感ある社員なんて育つ筈がない。必然的に「社畜」や「ブラック社員」ばかりがのさばる様になる。
何でもかんでも直接雇用にすべきだとは私も思いませんが、今は余りにも訳の分からない間接雇用や外注が多すぎます。恐らく企業サイドは節税対策でそれらを推進しているのだと思いますが、その為にいびつな業務や不必要な苦労を強いられたのでは堪りません。
間接雇用として認められるのは、前述の「ハムvsチョコレート仕分け」の様な理不尽な分業ではなく、合理性のある場合です。同じハムならハムの仕分けを、直接雇用の契約社員だけでは賄い切れない場合は、外注の派遣会社に応援を頼むのはアリだと思います。こういう物流の現場では、日々の作業量の変動が余りにも大きいので、それに見合って一部を外注に回すのも一定仕方ないでしょう。
但し、その場合は、(1)派遣を雇った側がきちんと派遣労働者への安全管理や作業指示にも責任を持つ事、(2)派遣労働者からの意見や提案も誠実に聞き、回答も可能な限り返してあげる事、(3)同一労働・同一賃金、同じ仕事をさせておきながら時給で差別しない。この3点については絶対に譲ってはいけないと思います。今の日本では、この事が余りにもなおざりにされています。
その新たに再投稿したコメントの中に、間接部門として認められる場合の例を追記しましたので、そちらも併せて読んでみて下さい。「マネキン会社」の例については、私ももう一度よく考えてみます。
>こういう物流の現場では、日々の作業量の変動が余りにも大きいので、それに見合って一部を外注に回すのも一定仕方ないでしょう。
だとしたら、日雇い派遣の問題をどう捉えるべきでしょうか。私は同じレギュラーで勤務しているのに雇用形態が日雇いというのは明らかにおかしいと思いますが、日雇い派遣という勤務形態自体は使用者側のみならず、労働者側にも一定のニーズはあると考えています。
> 但し、その場合は、(1)派遣を雇った側がきちんと派遣労働者への安全管理や作業指示にも責任を持つ事、(2)派遣労働者からの意見や提案も誠実に聞き、回答も可能な限り返してあげる事、
(1)については派遣先にも労働安全上にも責任がありますし、(2)については派遣法に基づいて締結される派遣先と派遣元の契約書には「派遣労働者からの苦情は派遣先、派遣元の協議の上、誠実に対応し、その結果は必ず派遣労働者に通知すること」という趣旨の取り決めがされています。
いずれも、現行法の運用を徹底することで、労働者を保護することは可能です。
>(3)同一労働・同一賃金、同じ仕事をさせておきながら時給で差別しない。この3点については絶対に譲ってはいけないと思います。
これについてはあるマルクス主義者の方とも議論したことがありますが、派遣に限らず、非正規雇用というのは正規雇用に比べてリスクを背負っているのですから、むしろ正規雇用よりも時給ベースは高くあっても良いと思いますね。
左派労働運動も「何でもかんでも正社員至上主義」を唱えるよりも、「派遣先は派遣単価を上げよ、派遣元はマージン率を透明にし、適正な賃金を労働者に払え」と要求する方が、多くの派遣労働者から支持されると思いますね。