アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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「多様な働き方」の先にあるもの

2006年10月08日 23時10分44秒 | 一人も自殺者の出ない世の中を
 NHK「クローズアップ現代」で10月4日(水)に放送された「“働き方革命”がホワイトカラーを直撃する」を見ました。その番組では「ホワイトカラー・エグゼンプション」の事が話題に取り上げられていました。

 「ホワイトカラー・エグゼンプション」と言うのは、ホワイトカラー労働者の一部を8時間労働制の規制から適用除外(エグゼンプション)する制度の事です。要するに、労働時間の上限を撤廃してしまい、残業代も払わずに何時間でも働かせる事が出来るようにする、という事です。財界サイドが執拗にこの制度の導入を狙っています。

 番組では、使用者側の言い分と労働者側の言い分をそれぞれ取り上げていました。労働者側の言い分は勿論、「そんな制度を導入されたら、今でも深刻な長時間労働・過労死・残業代不払いの実態が更に酷くなる、導入には絶対反対」です。それに対する使用者側の言い分というのが、「今は働き方が多様化しており、従来の9時~17時定時に代表される様な8時間労働制の概念は、労働現場の実態にはそぐわなくなっている」というものです。

 「職場の中堅層で、管理監督者の一歩手前に位置している者」がこの「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度の適用範囲になるのだそうで、職位・職階で言うと課長・係長から会社によっては主任あたりまでがこの範囲に当ります。またそうなると、単にホワイトカラーだけに限定される話ではなく、ブルーカラーでも現場管理を担っているグレーカラー層も含まれるでしょう。日本経団連によると年収400万円クラス以上は全てこの制度の対象にするとの事です。

 しかし、本来の裁量労働制の趣旨から言えば、タイムカードによる労働時間拘束を受けない部長級以上に対象を限定すべきであって、それなら何もこんな適用除外制度を創設しなくても、現行のフレックスタイム制度でも充分対応出来る筈だと思うのですが。

 実際にこの制度が適用されている米国のIT企業の例も取り上げられ、職場以外に自宅でもパソコンに向かって仕事をしている人の一日のタイムスケジュールが紹介されていました。そこでは「米国では、会社がこの制度を悪用して労働者に長時間労働をおしつけようとすると、労働者が逃げてしまう。それが制度悪用・乱用の歯止めにもなっている」という話もされていました。

 しかし、それは建国当初から封建制のしがらみが殆ど無かった米国や、市民革命を経て個人主義が確立している西欧社会だからこそ言える事なのであって、それでも米国や英国では「ワーカーホリック」や「エンドレス・ジョブ」の問題が顕在化しているのです。それを、「長いものには巻かれろ」などの封建的人間関係の残滓を引きずった「会社人間」が未だ主流を占める日本社会でそんな制度が導入されたら、日本の職場はそれこそ北朝鮮みたいになってしまうでしょう。

 ここでも、以前にNHKの番組で格差社会の是非について取り上げた時に登場した奥谷禮子氏がまた出てきて、「人材派遣コンサルティング業を営んでいる私の会社では、アポも相手の顧客の時間に合わせて設定しなければならないので、8時間労働制の中では膨大な手待ち時間が発生し、無駄が多い」「人間、働きたい時に働くのが一番自然」「もっと頑張りたいという人に報いる為にも、労働法制の弾力的適用を望む」とか言う「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入論を展開していましたが、これもはっきり言って眉唾の議論でしかありません。

 「働きたい時に働く」「もっと頑張りたい」というポジティブな意識も、きちんと仕事とプライベートの時間が分別され、尚且つ、健康で文化的な生活をおくる為に必要な最小限度のプライベートな時間がきちんと確保され、自分の人生の将来設計を立てる余裕も持ててこそ、初めて生まれてくる意識なのです。今の日本の労働現場はそんな甘い状態ではない事が、この人には全然見えていません。これ以上に過労死やサービス残業が激化して行く中で、誰がそんな意識を持ち続ける事が出来るでしょうか。一部の勝ち組だけでしょう。

 「働きたい時に働く」「もっと頑張りたい」、これらの表向きのキャッチフレーズで募集された労働者が、偽造請負の製造ラインや過労・過積載運転が横行する物流業務などで、一体どんな状態で働かされているのか、この人は多分知らないのではないでしょうか。或いは、知っていてワザと無視しているのかも。
 世の中の大多数の人にとっては、「多様な働き方」を選ぶ自由などはありません。あるのは、どれもこれも似たり寄ったりの低賃金・不安定・無権利雇用の中から、「未だマシな求人」を選ぶ自由だけです。

 『労働者をあたかも「モノ」や「カネ」と同じように、経営者(使用者)の都合で自由に簡単に「ヒト」を移動させたり、契約を勝手に変更できると錯覚している』(以上、連合・2006~2007年度『政策・制度 要求と提言』雇用・労働政策より引用)規制改革・民間開放推進会議等が提言する労働政策、日本の政府・経営者が狙っている労働法制改悪の究極の姿は、おそらく、軽急便や赤帽の様な、個人請負の様なものを想定しているのではないでしょうか。労働者と資本家の間の雇用関係を、実際は誰が見ても資本家に雇われ一方的にこき使われる労働者でしかないにも関わらず、それを恰も事業主同士の対等な個人契約関係であるかのように装った、そういうものを。

 今の派遣・請負の場合は、雇用関係は曖昧にされながらも、それでも未だ、労働時間管理や安全配慮義務を行う最終責任は派遣・請負企業の方にあります。しかし個人請負の世界では、自分の稼ぎも労働災害に遭うのも、完全な自己責任となります。実態的には企業の指示監督の下で動きノルマや時間で管理もされ、自己裁量で仕事をする余地など殆ど無いのにも関わらず、賃金も保険加入も労災事故に遭うのも完全な自己責任で、企業は一切関知しない―それが、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の先にある究極の姿、政府・財界が理想とする日本の企業社会の未来図ではないでしょうか。

(参考)

・不払い残業(サービス残業)を撲滅しよう(連合)
 http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/kankyou/fubarai/index.html
・2006~2007年度『政策・制度 要求と提言』雇用・労働政策(同上)
 http://www.jtuc-rengo.or.jp/kurashi/seisaku/youkyuu_teigen/part2-2koyou.html
・特集! 日本型ホワイトカラー・エグゼンプション」導入を許してはならない(全労連)
 http://homepage2.nifty.com/karousirenrakukai/24=whitecolor_exemptiontokushu.htm
・Endless labor―リアルタイムにわかる「労働契約法制」のうごき
 http://bonmomo.de-blog.jp/never_ending_workers/
・人を軸にしたビジネスは無限(奥谷 禮子 株式会社ザ・アール代表取締役社長)
 http://www.academyhills.com/gijiroku/21/21_5.html
・負け組への“死刑宣告”か 名古屋ビル爆発と小泉政権(JANJAN)
 '03年軽急便名古屋支店での立てこもり炎上事件に関するレポ記事。
 http://www.janjan.jp/living/0309/0309226757/1.php

(追記)

 そう言えば、数年前の、私が生協を退職して間無しの頃に少しやったDMのチラシ撒きのバイトが、今から思えばこういう個人請負契約のソレであった様な気がします。
 そのバイトはアルバイト求人雑誌で見つけました。日給6千円ポッキリで、大きさも形状も違う数種類のチラシをそれぞれ1千部以上も抱えて、現地の地図を見ながら全戸配付していく仕事でした。配付地域へはリーダーと呼ばれる担当者が運転する車に乗せてもらって行き、現地でチラシと地図を受け取って降ろしてもらう。チラシ配付後にまた迎えに来てもらい、丁目ごとの凡その配付枚数を地図の裏に書いてリーダーに提出する。そういう仕事でした。
 「日給制で、昼食・休憩はその中で取る」という事しか聞いていなかったので、私は午後2時過ぎに遅めの昼食を出先の大衆食堂で取り、昼食時間も含めて約45分間ぐらいの休憩を取りました。そしてその地域のチラシを撒き終わってリーダーに迎えに来てもらい配付件数を報告した時に、「飯はどうした、昼は何分ぐらい休憩した」と聞かれたので、正直に答えたら、茶髪で眼鏡をかけたそのリーダーに、いきなりどやされました。「何で45分間も取るんじゃ、ボケ! 昼飯なんぞは15分間でパンでもかじりながら済ますんじゃ、このアホ!」と。
 そして、その日に事務所に帰ったら配られたのが、個人請負ナンチャラ契約という文面の契約書だった。私は前述の対応で、そのバイトには完全に見切りをつけていたので、判も押さずにその日のうちに辞めてやりましたが。
 それで後々聞いてみたら、そのリーダーというのが完全な歩合給で、お互いに配付率を競い合っていたらしい。多分これが個人請負契約というものだったのだろう。
コメント (1)
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