夕方、家の固定電話が鳴った。
固定電話に電話がかかるのは大部分が勧誘など不審電話。
以前は「はい、〇〇です」と名乗っていたが今は「はい」と言って名前を言わないようにしている。
「〇〇さんのお宅でしょうか?」と弱々しい声で相手がゆっくりと言った。
誰だか分からなかった。
「〇〇です」と相手の方が言った。
次の瞬間ハッとした。
私の人生でとてもとてもお世話になった先生からだった。
「足を向けて寝られない」という言葉があるが、まさにこの先生ご夫婦が私にとってそういう存在。
7月末、手紙を入れて届け物をしたら息子さんから「母は今、介護施設に入っています。頂いたお手紙、母に届けました」と礼状が来た。
その後でお嫁さんからも、とても優しいお手紙を頂き、その時私は感謝の涙が出た。
介護施設に入られていると言うことは、もしかして先生は高齢になられて意識がはっきりしない状態になられているのかもしれない。
そう思ったりしていた。
その先生が直接電話してくださった!
感激して、感謝の念が一気に溢れて私は電話口で泣いてしまった。
「私、もう90(才)を越えたのよ。あなたたちと北海道に行ったことを時々思い出したりするのよ」とおっしゃった。
この先生には学生時代にも特別お世話になった思い出がある。
やる気の無かった私を連れて追試を受けに一緒に行ってくださった。
先生はそのことを覚えていらっしゃるだろうか?
追試を受けに行った私は「問題の出し方が悪い」と講師に言った。
「君は追試を受けに来たのかね。それとも文句を言いに来たのかね」と講師は言った。
遠い過去の記憶がまざまざと蘇ってきた。20歳くらいの時のこと。
再び先生にお世話になったのが50代の頃。
「足を向けて寝られない」ほど感謝の念を抱いたのがこの時。
90才を越された先生がお元気でしっかりされていて、温かい声でお電話くださりとてもとても感動した。
筆無精の私だが近いうちに先生にまたお礼の手紙を差し上げよう。