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薫 風 ~KUNPOO~

初夏に薫る爽やかな風に思いをよせ、YukirinとKaorinが日々の出来事などを綴るページです。

ブラックジャックによろしく

2006-01-30 | 本  棚
■ 佐藤秀峰『ブラックジャックによろしく』講談社。言わずと知れた日本中に衝撃を与えた医療漫画です。先週13巻が発売され、精神科編も完結しました。この作品の“画”自体はあまり好きなほうではないのですが、何だかんだ言って最初からずっと愛読しています。

■ 今までは、誰もこんな医療の実態を語ろうとはしなかったのでしょうけれど・・・この漫画が話題になったおかげで、研修医さんの待遇もだいぶ改善されたようだから、最近では“漫画”というメディアの影響も無視できないほど大きな力を持っていますね。

■ 医療とは、いや医師(という職業)とは、一体なんだろうか。ある熱血(?)研修医の目を通して医療の現実を描いていくわけですが・・・。以前にも書いたとおり、「死にたくなかったら夜中に事故を起こしてはいけない」と言う警句は身にしみました。

■ 精神科編でも伊勢谷先生の言葉は衝撃的でした。「私は医師免許を取りたての頃救急医療をやりたかったんですよ・・・。」でも、「運ばれてくる急患の3~4割は精神障害者だったんです・・・」

■ フィクションなのでどの程度統計的な事実に基づいているのかはわかりませんが、心臓手術とか抗癌剤の使用など、私の医療に関する知識はこの漫画に負うところが非常に大きいです!? (実体験も含めて・・・)

生協の白石さん

2006-01-29 | 本  棚
■ 白石昌則『生協の白石さん』講談社。場所は東京農工大学、生協の職員である白石さんと学生さんとの「ひとことカード」でのやりとりを収録したもの。これも、もともとはインターネットの掲示板やブログで話題になったものだったのですね。

■ 「単位がほしい」から始まって、「牛を置いて!」「愛は売っていないのですか・・・?」といったムチャクチャな生協への質問・意見・要望に対して、白石さんが懇切丁寧に(?)答えていきます。読んでいて思わず噴出してしまったり、ほのぼのとニンマリしてしまうようなユニークな回答ばかりが載せられています。

■ 私が面白かったのは「プーさんにからまれている」という迷える子羊さんへの答え。最初、白石さんは生協の理念に沿って「温かく見守る」と言っていたのに、どうやら結果的には「見殺し」(!?)にしてしまったようです。

■ たまたま妹が持っていたのを借りて読んでみたのですが、この字数にして1,000円近い価格。自分だったら、まず買わないなぁ。(それでも、『サラダ記念日』よりはいいか・・・)でも、無理難題に対してさらりとユーモアでかわすセンス。ぜひ見習いたいものですナ。

<photo:プーさんをくわえる・・・>

再び!「ぶぅさんのブー」

2006-01-23 | 本  棚
■ 先日友人にプレゼントしたこの本。後日買いに行ったら、売り切れで取り寄せて貰いました。つまらなそうに遊んでいる娘に見せると、大喜び!手まで出てきて、絵をひっかきながら見てました。(舐めようとしたので阻止しましたが)

■ 子ぶたのぶぅさんはおはよう、おいしい、楽しい、困った等どんな時も「ブー」しか言いませんが、ぶぅさんの気持ちが伝わってきます。作者は絵本やイラストで活躍中の100%ORANGEさん。はじめて手がけた赤ちゃん絵本とのこと(福音館書店発行)

■ ママ仲間に見せて貰ったのがこの本を知ったきっかけで、なんでもパパが娘ちゃまに買ってきたらしい。ナイスなお買い物ですね(*^^)v またお勧めがあったら教えてもいたいなー。(個人的にぶたさん好きです)
  

のだめカンタービレ

2006-01-22 | 本  棚
■ 二ノ宮 知子『のだめカンタービレ』講談社。指揮者志望のオレ様・千秋真一と変態ピアニストのだめ(野田恵)のラブ・ストーリー。

■ 新聞の書評欄(?)で見かけたKaorinが、面白そうだと買ってきたものです。最初はためしに3冊だけ購入してみたものの、これがとても面白い!! のだめの思い込みの激しさには、読んでいて、“ププッ”と噴出してしまいます。

■ 結局、13巻全部買ってきて、一気に読んでしまいました(昨日、14巻もゲット!)。クラシックの名曲や作曲家が随所に紹介されていて、いま人気のコミックだったのですね。この漫画のおかげでクラシックファンも増えたのね。

■ これまでは、どちらかというとピアニストとかバイオリニストとかの演奏者に目が行きがちだったけれど、なんだか指揮者に注目するのも面白そ~。でも、オケをまとめていくのって、大変なんだろうなぁ。

■ 一応、のだめが主役なのだろうけど、これからどのように成長していくのか楽しみです。

アッラーの花嫁たち

2006-01-10 | 本  棚
■ ユリヤ・ユージック『アッラーの花嫁たち』WAVE出版。なぜ「彼女」たちは“生きた爆弾”になったのか?繰り返しロシアで行われるチェチェン人女性による自爆テロのルポルタージュです。ロシアでは“発売禁止”となっているらしい。

■ 「コムソモリユカヤ・プラウダ」紙の特派員ユリヤ・ユージックは1年以上チェチェンをくまなくまわって、自爆テロを行った女性の家族や関係者などと実際に会って取材をしています。黒い装束に身を包み“ブラック・ウィドー”などと呼ばれる彼女らは、何の理由もなく夫や大切な家族を虐殺された未亡人という印象が強いけれども、ユリヤが取材した10数人の中で、本当に信念を持って復讐のために自爆したのはただ一人だったといいます。あとの女性たちは、両親に金銭と引き換えに売られたり、ハーブ教徒に嫁にとられ麻薬づけにされたりして、やがて“アッラーの花嫁”となることを強制されていく者がほとんどだとか・・・。

■ そもそもが翻訳ものでわかりにくい文章だし、「ハーブ教」とか「シャヒード」とかの宗教的・社会的背景を知っていないとなかなか理解しにくい面があります。その辺の解説はどこにもないし・・・。そのため、どうして自爆テロを繰り返さなければならないのか、といった根本的な背景を知ろうとする読者の欲求には、どうも答えてくれないようです。

■ それにしても、われわれ日本人は本当に恵まれた平和な社会で生きているけれど、まだまだ世界には理由なく家族を殺されたりして、生きていく夢も希望も持てなくなっている国や地域が取り残されているのだな~、ということを実感した一冊です。

サライ

2006-01-04 | 本  棚
■ 柴田昌弘『サライ』少年画報社。何を隠そう、学生時代に(妹の本棚から)手に取った“赤い牙”シリーズからのファンなのであ~る。新連載が始まると、必ずといっていいほど買って読んでいる。今回は漫画のお話です。

■ 『ブルーソネット』『ラブシンクロイド』『クラダルマ』など、少女漫画なのに近未来をバイオレンス的に描いた作品が多い。サイボーグやエスパーなども登場したりして・・・。作者自身は、“可愛い女の子を描くことができるから”少女漫画の世界に入ったと言っているが、かなりグロテスクなシーンも目立つのだ。

■ この『サライ』も近未来を舞台にしている。“科学の進歩は世界の崩壊をもたらし、人類に生後16年で異形へと「変身」する運命を背負わせた・・・”。コミックとなって、もう15巻め。これから次第にサライの過去が明らかになっていきます。

■ その昔、アニメ好きの友人には、「どれもワンパターンじゃないですか」と言われた記憶がある。まぁ、確かにそういわれてみれば、そう思えないこともないのだが・・・。“生命ってなんだろう”てな調子で、いつも柴田昌弘のSFワールドに引きずり込まれて行ってしまうのだよ。でも最近は、ちょっとH路線にも入っているかもしれない。

ヴァイオリニストの音楽案内

2005-12-29 | 本  棚
■ 高嶋ちさ子『ヴァイオリニストの音楽案内』PHP新書。6歳からヴァイオリンを弾き始めた彼女。雑誌オレンジページに連載されたエッセイをまとめたものです。

■ バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンからショパン、バーンスタインまで著者自身が大好きな曲を中心に50曲が厳選されています。どの曲も必ずどこかで耳にしたことはあるような有名な曲ばかり。作曲家のエピソードや演奏技法、演奏者ならではの経験など、本当に楽しんで読めます。

■ 彼女は、オペラもバレエもそんなに興味はないといいます。なぜなら、「われわれ演奏者を二の次に考えていて、ピット(舞台下の暗い場所)に入れられちゃうし、自分たちの歌い方や踊り方に音は合わせろ!!という考え方が気に入らん。」そう、オーケストラにとっては、オペラの演奏って実はあまり心地のよいものではないようです。わりと単調な演奏が多いし、ピットの中で管楽器を吹いた日にはまるで風呂場のなかで吹いているようなものだと・・・

■ 彼女が師事した徳永先生の言葉も面白い。「ヴァイオリニストが書いた曲はどんな超絶技巧でも、一度わかれば弾けるものだけど、ブラームスやベートーヴェンのように自分が弾けないやつが書いたのは弾きづらい。」そうだろうなぁ。でも、自分では弾けもしないのにもかかわらず、素敵な曲を書いてしまうというのも、これまた凄いけど。

■ そして音楽家といえども人の子。プロとはいえ、舞台の上ではかなり緊張するようです。「いつも自信満々で舞台の上で演奏しているように見える音楽家たち。しかし直前の舞台裏というものは、緊張と戦いながら切羽詰った顔でうろうろしたり、なかには倒れそうになっていたり、本当に倒れちゃったり、本当にさまざまな人間模様が繰り広げられている。」これまた徳永先生によれば「人前で緊張しないような無神経な奴は、逆に音楽という繊細なものには向いてない」ということらしい。結局それを乗り越えるためには練習しかない。スポーツの世界と同じですね。

■ いくつかのオーケストラを経、国内で活動するにあたって、自分でコンサートの曲目解説をすることを思いつき、「クラッシクを好きでも嫌いでもないけど、ちょっと聴いてみようかなと最近思いはじめている人」にむけて書かれているだけあって、わかりやすく面白く読めます。全体を通して、読んでいて、つい「プッ」と噴出してしまいます。

■ 本当に、読んでいるとその曲を聴いて見たくなってしまいます。お勧めのCDも掲載されていますが、そのうち私が持っていたのは4~5枚程度かな。またCD屋さんへ行って、探してみなくては・・・

社会の喪失

2005-12-27 | 本  棚
■ 市村弘正・杉田敦『社会の喪失』中公新書。市村氏が今から10年以上前に書いた『標識としての記録』というテキストについての二人の対話。薬害、水俣病、被差別など「社会派」映画批評とも言うべき6つのテキストが取り上げられています。

■ 無政府主義者ともとれる市村氏に対し、杉田氏が政治学的な視点(?)から切り込んで行きます。どちらかというと私は、杉田氏の主張の方が科学的かつ論理的で、物事の本質をとらえているような気がします。ときどき新聞のコラムでも杉田氏の名前を見かけますが、なかなか物の見方が的を得ていることが多いんだよね。

■ なかでも興味を惹かれたのが「インヴォランタリー・アソシエーション」(非自発的結社)という概念。もともとはマイケル・ウォルツァーという人が言いだしたことのようだけれど、「今ではみな、自発的なアソシエーションのことばかり評価するが、非自発的なつながり、たとえばネーション(国民)であるとか家族のように、自分の意思で入ったとは限らず、しかも脱退することが難しい団体も、きわめて重要な役割を果たしている」「出入りが容易でないからこそ、人々は安易に退出せずに内部にとどまって内部改革をする動機付けが出てくるのだ」といいます。

■ なるほどね~、その昔、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトなんていう言葉も習ったような気もしますが、それとはまた見方が違うのね・・・。あ~、地方にいると“非自発的なつながり”っていうやつをイヤというほど実感するわ。

■ 全体を通して、なにしろ“これでもか!”っていうぐらいに哲学者やら思想家の名前や文献が出てきます(それだけ、やたら「註」も多いのだ)。こんなにいろんな人を引き合いに出さなくては対話ができないの?と思わなくもありません。とかく学者さんは小難しい概念や言葉を使いたがるけど、得てして当たり前のことを言っているに過ぎないことが多いんだよね。

■ さて、はたして「社会」というものは、一体全体、喪失してしまったのでしょうか???

いい音が聴きたい

2005-12-20 | 本  棚
■ 石原 俊『いい音が聴きたい』岩波アクティブ新書。“実用以上マニア未満のオーディオ入門”とのサブ・タイトルがついていたので、買ってみました。

■ いい音で音楽を楽しみたいけれど、マニアと言われる人たちほどお金や時間をかけたくない。でも、聞こえるだけの実用レベルではつまらない。そんな音楽ファンの心理を巧みについた表題ですね。

■ オーディオとは何か。もしも強引にひとことで表現するならば、オーディオとはスピーカーの音を聴く行為である、と著者は言います。いくら音源がデジタル化されたとしても、最終的に私たちの耳に届くスピーカーからの音はアナログである。他のオーディオ機器は、つまるところスピーカーに奉仕するための存在でしかない。・・・

■ 音楽雑誌のように、アンプやスピーカー、CDプレーヤーなど個々の機器についての詳細な説明はありませんが、セッティングや配置、電源の取り方などについては著者独特のこだわりが感じられます。同じように見えるコンセントの穴が実は左右で異なっているとか、接続ケーブルにも信号の流れる方向がある…なんて、思いもよらないことでした。

■ でも、そんな細部にこだわって、ほんとうに“いい音”になるんだろうか。正確に言うと、自分で聴き分けることが出来るのか、ちょっと疑問です。実際に聞くのは自分の部屋だし、多分に自己満足の色合いが濃いのでは・・・。

■ オーディオにかける予算の目安は給料三か月分でどうだ!?と著者は述べていますが、う~む、そこまでかけられないしなぁ。こつこつ貯金するかな。

吉田 茂

2005-12-15 | 本  棚
■ 原彬久『吉田茂』岩波新書。“尊皇の政治家”とのサブ・タイトルがついています。

■ 行政でも民間企業でも、とかく“危機管理”が叫ばれる昨今。でも何ていったって究極の危機管理は戦争でしょう。それも敗戦して、他国による占領状態にあった戦後日本。とにもかくにも復興へと導いた宰相“吉田茂”とは、一体どのような人物だったのか。

■ 明治の元勲大久保利通の次男牧野伸顕ら「三人の父」をもち、駐英大使などを歴任。戦時下では「反戦和平」を唱え、軍部に睨まれて投獄すらされてしまいます。終戦後は宰相として講和を実現し、経済復興を促しました。・・・

■ 政権を担当した7年2ヶ月のうち、実に4年6ヶ月が米国の占領下。「戦争で負けても外交で勝つ」という吉田の政治的センスは、GHQの権力動態を呑み込みつつ強者の懐中に飛び込んで簡明直截に功利を追求してゆきます。

■ そして、マッカーサーと「負けっぷり」よく対峙しえた最大の理由は、マッカーサーおよび米国政府が日本側の切願してやまない「天皇制温存」を実現して見せたことと無関係ではありません。いわば“国体護持”という大命題の前では、どんな条件でも飲むことができたということかもしれません。

■ いわゆる「逆コース」を推進した「ワンマン」との批判はありますが、敗戦と建設の時代、日本の最高指導者としての決断力と行動力はやっぱり評価されてもよいものだと思います。

■ 吉田の自伝『回想十年』も当時の事情を知ることが出来て興味深いものがあります。でも、もう絶版となっていて手に入らないんだよなぁ。復刊しないかしらん。