como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

「翔ぶが如く」を見る!(15)

2009-09-24 22:44:03 | 往年の名作を見る夕べ
 西郷隆盛という人物は、ドラマにしろ小説にしろ、ピンの主人公にするのはとても難しい。茫洋としてとらえどころが無く、そのくせ矛盾しまくっていて、非合理的としかいいようのない行動をとったりする。この西郷の不可解さが歴史を引き連れて大きくうねるところに、近代日本の産みの苦しみが重なる…というのが、小説「翔ぶが如く」のひとつの世界観だと思います。
 それでも、「竜馬がゆく」「最後の将軍」「花神」などがコラージュされたこのドラマの前半の西郷像は、比較的明快なのではないでしょうか。というのは、明治維新というひとつの目的地にむかって集約されていく、シンプルな物語であることと、西郷の物語は西郷主観ではなくて、本人以外の目線からみた人物造形だからです。
 ということで、いよいよ幕末篇は終わり、明治篇に入っていくのですけど、ここから西郷という人物は、大いなる迷走を始めるわけです。そのアンビバレンツの火種がうっすら顔を出しかけた、なんとも不安な「維新成る」の巻。第28・29話を見てまいります。

第1-28話「江戸開城」

いよいよ鳥羽伏見の戦い。幕府軍1万5千は、朝廷に薩摩討伐を願い出る「討薩表」をかかげて進軍していきます。迎え撃つ薩摩・長州連合軍は4千5百、圧倒的劣勢ですが、薩長軍には錦の御旗という秘密兵器がありますから!
 吉之助(西田敏行)も全軍の参謀として出陣。一蔵(鹿賀丈史)は京都に目を光らせるため、御所につめます。そして、鳥羽街道・小枝橋上で相対した両軍は、薩摩方の一発の砲撃から戦端が開かれます(くわしい展開はコチラ参照。また過去記事頼りでスミマセン)。
 一蔵の役目は、官軍の劣勢を聞いて浮き足立つ公家衆の妄動を抑えることでした。お公家さんたちを御所に監禁し、「皆々様にも、我らが参謀西郷吉之助の下知なきうちは、一歩も御所からお出し申すわけには参らん。左様覚悟めされよ!!」と、はじめて威圧感を全開にして威嚇します。そこへお騒がせ殿様・山内容堂(嵐圭史)が乱入してきて、こんな戦は薩長と幕府の私闘だ、土佐は一兵たりとも出さない!勝手に野垂れ死ね!と吠えまくりますが、一蔵は動じず、「もとより全員死は覚悟。これは帝を頂いての戦にござる!」と。この一言で容堂公の目が、情けなく泳ぎ始めます。
 が、戦場での戦況は、押され気味。苦戦する薩摩軍は、吉之助の本陣に息を切らせて援軍を要請しますが、吉之助は、援軍なんどどこにもおらん…と、超クールに、こういうんですね。
「みんな死せ。オイも死す。みんなで死ねばよか」
 これでフッ切れた薩摩兵たちは、戦場にかけ戻り、死力を尽くして戦います。混戦のなか、頃合やよし…と持ち出されたのが、例の錦の御旗。このインパクトは絶大で、幕府軍はたちまち腰砕けになり、寝返る大名が続出。総崩れになります。
 錦の御旗出現を大坂城できいた慶喜は、顔面蒼白。抵抗したら朝敵になってしまう。慶喜は直ちに決断します。大坂城を棄却し、江戸に帰る。徳川家のホームグラウンド・江戸を背景に軍を建て直し、戦う…ということなんですが、これは、関西で戦っている幕府軍を置き去りにしての敵前逃亡とおなじなんですね。慶喜が、徳川家にとって命より大事な金扇大馬印を置いて逃げた、と聞いた新門辰五郎(三木のり平)は、「お馬印は死んでも敵に渡しちゃならねえ!」と、配下の火消一同と、馬印をまもって東海道を江戸に帰ることになります。ク~、親分かっこいい。男ですねえ。
 かくして、朝敵徳川慶喜追討令が発せられ、吉之助は、東征総督府参謀として江戸を目指し、一蔵は、今後の政府づくりのために岩倉具視(小林稔侍)のブレーンとして御所にのこります…が、この「大久保、わしと京都にいてくれ~」みたいな岩倉の口説きって、ほとんど一蔵を愛しているみたい(!)で、なんかもうメチャメチャあやしくて、たまらん(笑)。小林さんの岩倉の奇妙面妖なキャラって、実はかなり好きです(オイ)。
 江戸に帰った慶喜は、勝海舟(林隆三)を呼びます。逃亡してきた慶喜のあまりの情けなさに、言いたいこと一杯ある勝ですが、「錦の御旗が出た。もう恭順しかない」といわれて、腹をくくり、徳川幕府260年の幕引きをつとめる決心をするんですね。勝は、辰五郎たち火消や、鳶の頭など下町の顔役をあつめ、「江戸が薩長に焼かれることになったら、そのまえに俺らの手で町に火をつける。江戸の町は渡さねえ」と、凄いことを段取りします。江戸っ子のさいごの意地ですね。
 駿府まできた吉之助のところに、幾島(樹木希林)が単身で嘆願にやってきます。どうか慶喜の一命を助け、徳川家を潰さないでほしい…という天璋院(富司純子)の嘆願をもってきた幾島の、その心意気に感じた吉之助は、決して悪いようにしないと約束しますが、それでも江戸総攻撃の方針は替えずに、江戸入りします。
 そして迎えた、西郷・勝の会談。吉之助が要求する慶喜の恭順、江戸城明け渡しと武装解除など勝は全て丸呑みしますが、「慶喜を備前藩にあずける」、これだけは峻拒します。そこまでは幕臣の誇りが許さない。この勝の心意気に、手を打った吉之助。かくして、幕臣のタテマエを捨てて江戸の誇りを守った勝の働きにより、江戸城無血開城はなります。
 慶喜は寛永寺を出て水戸へ。見送りは、わずかに勝と辰五郎だけ。徳川最後の将軍が江戸を去る。それを、江戸っ子の良心二つが見送る。カッコいい台詞なんかはないのですが、送るほうも、送られるほうも、万感胸にせまるすばらしいシーンです。
 吉之助は、江戸城を出て一橋邸に身を寄せている天璋院をたずねます。もはや全ての役目を終え、静かな感慨の境地にいる天璋院は、薩摩時代のたわいもない思い出話などをし、ふたりで、幾島の弾く薩摩琵琶を聴きます。仏のような慈顔で琵琶を弾く幾島に、桜の花がはらはらと降り、うたわれる歌は
世の中はみな仏なり おしなべて いずれの物とわくぞはかなき
 平和な大団円の気分のなかに、無常感、一抹の虚無感があふれる。これも全編屈指の名場面のひとつといえるでしょう。

第1-29話(第1部最終回)「維新成る」

 この第1部の最終回で、はじめて原作に引かれるのが「花神」です。ここでは、幕末大河ドラマではやりそうでやらない討幕戦争の後始末、江戸開城直後が中心に描かれるのですね。
 無血開城が成ったあとの江戸の治安を守るため、急遽、もと直参からなる彰義隊が、勝(林隆三)の肝煎りで結成されるのですが、この連中と官軍としてやってきた薩摩とが、拠ると触るとケンカになっています。そういうのにすぐ反応して、トラブルを起こすのが、あの愚かな有村俊斎(佐野史郎)で、「自分ひとりで天下を取ったような気になって、信吾(緒形直人)たち若い者を挑発している」と、村田新八(益岡徹)などは頭をかかえて吉之助(西田敏行)に相談するわけです。身内のトラブルを避けるためにも、吉之助は、信吾たちを北越戦線に投入。みずからは総督として江戸に残りますが、そこへ、長州から軍事の専門家として派遣されてくるのが、大村益次郎(平田満)です。
 んー…大村益次郎といえば中村梅之助さんのイメージがつよく、平田さんのつけ眉毛(!)には若干の違和感が。ともあれ、いかにもクールな能吏という感じの大村は、社交辞令一切ぬきに、上野の幕府残党の掃討戦を、テキパキ仕切りはじめます。この超然とした態度に、薩摩陣営は非難轟々ですが、吉之助はなぜか好感を持ちます。
 久しぶりに勝とプライベートで会った吉之助。大村のような人間は、いままで見たことがないけど、これからはきっと必要になってくるだろう、と語り合います。
「世の中の仕組みを急いで組みなおすために、天があげな御仁を送ってよこされたもんち考えちょいもす」、「わたしも死んだ竜馬のことが思い出されてなりません、さしずめヤツは仕掛け人で、大村益次郎が仕上げ人なのでしょうな」と、あらためてシミジミする二人でした。
 その大村は、上野の山に立てこもった彰義隊と決戦するにあたり、もっとも激戦が予想される黒門口に、吉之助率いる薩摩軍を配置します。いわば死に番につけるのに、懐柔も取引もいっさいなく、超クールに「薩摩がいちばん兵力があるからです」と言ってのける大村に、吉之助は気持ちよく「この西郷吉之助も、そん場所にて死にもんそ」と。
 こうして、薩長官軍VS彰義隊の、江戸最後の戦いは雨の中はじまりますが、これはわずか半日で終結。壊滅した彰義隊の遺体を回収する辰五郎(三木のり平)と吉之助は、最後の出会いをします。互いに人間として好意をもっていた二人でしたが、時代のせいで、ものすごく複雑な感情を持ちつつ分かれていくわけですね。
 大村益次郎のクールな采配はさらに続き、上野が片付いて、こんどは北越へ転戦を希望する吉之助の申し出を「西郷さんが行くまでも無い」と却下。西郷さんの人事を勝手にきめるとは無礼ではないか、と怒鳴り込んできた有村俊斎を、「バカを相手にする暇はない」みたいに冷たく無視する態度に、キレまくる有村の目が殺意を帯びておりますが…この一方的な遺恨の顛末って、ドラマの中でやらないのかな。端折るのはちょっと勿体無い気がする。
 吉之助は、わざわざ京都まで行って一蔵(鹿賀丈史)に、北越戦線にいかせてくれと頼み込みます。西郷の弟達も全員、前線で戦っている。総指揮は大村益次郎が適役だ、自分は実戦のなかで、この戦の総決算をしたいという吉之助の願いに、一蔵は拒否しきれず、吉之助は、長岡藩との激戦が長引いている北越に向かいます。
 が、吉之助が到着したとき、既に長岡城は落ち、戦場で負傷した吉二郎(村田雄浩)も力尽きようとしていました。吉之助に手を握られて、「戦に出られて本望ごわした」と言って息絶える吉二郎(うわーん号泣ーー!!)。
 北越の地に葬られた吉二郎の墓標に手を合わせ、「オイもすぐ行って土産話をしてやる、子供達のことは心配するな、信吾も小兵衛もおる」と語りかける吉之助は、もう、この戦で生きている気はないんですね。吉之助は吉二郎の墓前で最期の決意と髻を切り落とします。…が、北越・奥羽戦争は吉之助を死なせてくれなかったんですね。丸坊主で薩摩に帰った吉之助は、もう一歩も薩摩をうごかない。戊辰の死者を弔って、土とともに生きると決心します。
 新政府の中心は江戸に移り、難産の末、太政官政府が船出しますが、吉之助が薩摩に帰ったきりなので、桂小五郎(田中健)などは、勝手じゃないか!と文句タラタラなわけです。自分のためにも吉之助に居て欲しいと思った一蔵は、急遽薩摩に帰国。薩摩で久光(高橋英樹)に会い、版籍奉還の根回しもするのですが、この殿様は、薩摩一国が天下をとったと誤解しており、一蔵たちの殿様対策も前途多難。ともあれ、久しぶりに鹿児島で一同に会し、往時の感慨をともにした薩摩のおいどん連中は、「とにかく小松サアがいないと何もできなかった」と帯刀(大橋吾郎)の働きに感謝するのですが、帯刀の笑顔に、微妙に死亡フラグが…。ま、この当時の死亡フラグは、いまほど露骨じゃないですがね(笑)。
 一蔵に会い、新政府出仕をかき口説かれた吉之助は、「出仕したら、貰う官位が御藩主より上になってしまう」と超意外な理由で峻拒するわけです。そう…吉之助の基本は、いまでも死んだ斉彬への忠節なんですね。だから、成り上がるということを自分に許せないんです。
 吉之助と一蔵は鹿児島の海にでかけ、ふたりで釣りなどを楽しみ、海を見ながら、吉之助はこういいます。
「もっともっと、人は死ぬべきじゃった。オイには、今度の戦がはやく終わりすぎたような気がする。戦が、公家も大名も、士農工商全てを焼き尽くし、そのあとに本当の日本人が生まれてきて、新しか日本国を作るち思うちょった。こんどの戦が終われば、こいからの世の中で生きていけんもんが出てくっじゃろう。たとえ命がけで戦ったち、その一人一人が新政府の役につけんとなれば、必ずや、不平不満の火は世に満ちてくる。そいどん、薩摩兵児どもは、こんオイが抑えて見せもんそ。 そいが、こいからのオイの仕事ち思うちょる」
…が、せっかくつくったこの国を汚かもんにするようなら、そんときは薩摩兵児とともに潰しに行くでな…と、冗談半分、マジ半分の不気味な予言に、
「吉之助サアに成敗されんように、気張りもす」
と、ふたり見つめあったところで、「翔ぶが如く」第1部ここに


14 コメント

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Unknown (雪斎)
2009-09-26 03:22:14
 ここまでご苦労様でした。
 東京大学の山内昌之先生が、「西郷は、斉彬公の遺志を継ぐためだけに生きた」というようなことを仰っていましたけれども、大久保にとっては、久光は「道具」でしかなかった。
 このキャラクターの違いは、明治の世では際立ってくる。後半は、大久保がキーでしょう。名場面続出です。
 余談ですが、今、『黄金の日日』を見ていますが、ここで登場する鹿賀丈史さんは、『翔ぶが如く』の時よりも、一回りは若い。男は、40を過ぎてからだなと思います。
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よくできてる(笑) (ゆるちょ)
2009-09-26 06:59:02
庵主殿

お疲れ様です。
もう、こんなに進んでいたんですね。

いいですな。このあたり、非常に濃い内容ですが、丹念にエピソードを重ねていて、無理なく
(リアルで見ていたときは、手強かったですが)話が進んでいる感じで。
まあ、心情的には、徳川方なので、ここらへんは見ているのがつらいですが、この西郷と一蔵には、
負けるよなあと、説得されますね。負け惜しみですけど。
このドラマの慶喜は、歴代の慶喜役者の中でもずば抜けていいんじゃないかと思っています。
キレもいいし、酔っても(ふりをしてても)上品で(笑)。まあ、その慶喜さんが策に溺れて負けていく
ところは、ちょっとせつないですが、歴史のダイナミズムみたいなものを感じられて、
非常におもしろかったです。

天璋院と幾島も退場ですね。
天璋院は、「姫ってのは、こういう上品なものか」と思った記憶があります。
まあ、その姫様がいろいろ苦労なされていくのがちょっと残酷で。
「こういう時代だったんだなあ」と、史実の重みを感じました。
ただ、幾島は当時大好きで、彼女が出てくるとひとりだけ違う風が吹いているようで、
この濃いドラマの中で、ちょっと気を抜けるシーンになるんですよね。
一蔵に「情けない!」と叱りつけたあたりは真骨頂でした(笑)。
だから、天璋院とこのひと、二人でいると、天璋院のせつなさが、より引き立ちます。
時代というものの残酷さがよく伝わってきましたね。

その二人が、西郷と琵琶を聴いている。確か月を見ながらだったと思いますが、
非常に印象的なシーンでした。天璋院と幾島が、いろいろあって、最後に辿りついた
枯淡の境地を表しているようでした。うーん、いい!(笑)。

僕はドラマの花神は見ていないのですが、原作が好きなので、大村益次郎の登場は
うれしかった記憶があります。まあ、俊斎、盛り上げるにはうってつけの人間ですからね(笑)。
まゆげボン!にしてたのも、うれしい(笑)。この大河は、外見もできるだけ似せる!、
方針だったそうで、それも案外うれしかったですね。もう、二部の西郷さんなんて・・・(笑)。
楽しかったです。

益次郎への俊斎の切れ方が半端じゃないのが、いいですね。
当時は、蛇蝎の如く嫌いで(笑)。もう、嫌われ役、一手に引き受けてますな(笑)。
でも、俊斎が切れれば切れるほど、益次郎のクールさが、より強調されるんですね。
うーん、渋い。平田満ってのも、渋い(笑)。伊達さんときは、自分を売り込む計数係でしたっけ(笑)。
理系つながりですかね(笑)。

で、この益次郎のクールさが、今度は、西郷の人間臭さ、葛藤をより際立たせる。
もうね、最高司令官が「戦行かせてくれ!」って頼むあたりがね(笑)。
「西郷!、それほど死にたいのか!」と思いましたし、このあたりが、二部につながって
いくんですね。よくできてるなあ・・・(笑)。

西郷の心情が最後に語られますが、西郷って、ちょっと詩人的体質みたいで、
超リアリスト一蔵との違いがよくわかるんですね。
「大丈夫か?、これ・・・」
と、一部の最後で、不安が。いいですねえ。
当時、二部開始に、わくわくしたことを覚えています。これこそ、大河ですな。

でも、やっぱり西郷には魅了されちゃいます。
なんか、こう、その想いが、よくわかるんですよね。
「俺は日本をつくるため、たくさんの兵児を殺した。だから、これからの日本に責任がある。
しかし、兵児も守らねば」
みたいな。
魅了される人間が、時代の敗者になっていく。それが、二部だよってんで、
いい最終回ですなあ。盛り上がります。もう、日本人、大好物でしょ(笑)。

このドラマをやるまで鹿児島では、一蔵さん、はんぱなく嫌われたらしいですね。。
でも、このドラマのおかげで、理解されるようになったとか。
大河ドラマって、それくらい力のあるものなんですね。

いやいや、もう、何も言いますまい(笑)。
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薩摩と関ヶ原 (佳々)
2009-09-26 11:54:06
いつもありがとうございます。
ようやくこちらの方もゆっくり読ませていただきました。

この鹿賀丈史さんと西田敏行さんとは本当にバランスの良い配役ですね。
見ていたはずなのにこんなに忘れているかと、改めて自分の記憶の悪さを痛感しております(笑)。
私も岩倉具視はこの小林念侍さんが一番好きです。

司馬遼太郎さんがたしか、薩摩のこの幕末のエネルギーは”関ヶ原体験”が根にある、という様なことを書いておられたなあ…、と思って「歴史と風土」を読みかえてみました。

そうでした。島津は関ヶ原の烏頭坂で散々な目に合って退却して薩摩に帰った、と。その後、関ヶ原を忘れるな!ということで藩を結束させていく、徳川体制の中でも多分に戦国色の色合いを残した藩風を作ったと「関ヶ原私観」で述べられていました。

幕末に幕府を倒し、そのあともなお政治的エネルギーが持続して西南戦争となり、新政府とまで対決してしまう、その薩摩のエネルギーの歴史的な一番太い根が関ヶ原体験ではないか、という分析です。

「天地人」の関ヶ原の戦いから、この「翔ぶが如く」の幕末へとこういう繋がり方があったかか、と感心しきりです。あくまで司馬さんの私観ですが。
(ドラマ自体は比べるのも失礼なくらい格が違いますけど(笑))。

庵主さまのレビューのおかげで、また勉強させていただきました。
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第1部お疲れ様です (みさき)
2009-09-27 00:31:55
うわー、大村さんも出てきてたんですねえ。
総集編に入ってたかどうか覚えてないですが、吉二郎さんの死は入ってたと思います。切ないシーンでしたね・・・。
幕末編の最後で桂さんが明治愚痴男の片鱗を見せてるみたいで微笑ましい限りです(笑)。やっぱり文句言ってるだけのウザキャラになってるのかなあ。でも薩摩視点ならそうなるのも当然でしょうねえ。木戸日記読んでると結構天然さんなんですけど。
次回から明治編ですね。初期明治政府のドタバタも楽しみです。当時に生きてたら勘弁してくれって思うだろうけど(笑)
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男は40歳前後 (庵主)
2009-09-27 19:39:48
雪斎さん

ありがとうございます。
幕末は大好きなので、つい力が入ってしまいました(笑)。
>西郷は、斉彬公の遺志を継ぐためだけに生きた

わたしも「翔ぶが如く」の原作を読んでいて、後半で、久光への遠慮というか、申し訳なさみたいなのが、西郷の行動原理になってくるのに「なんで??」と思った覚えがありますが、斉彬への忠節という、最初の刷り込みをベースに考えると、いろいろ腑に落ちるところはあります。
けっきょく、主君への忠節とかを合理的に破棄していった(旧幕時代から破棄していた)大久保と、最終的な決裂は避けられなかったということでしょうか…。

>鹿賀丈史さんは、『翔ぶが如く』の時よりも、一回りは若い。男は、40を過ぎてからだなと思います

ほんとですね。わたしも常々、大河ドラマの主演は「男・40歳前後」が最適と勝手に提唱しています(笑)。
なんていうか、このくらいの年代でひとつ円熟期に脱皮できる男優さんは、ホンモノだと思うんですよね。
若い20代では、ホント、海のものとも山のものとも付かないというか…。昨今主演した若い役者さんたち(だれとは言わない)、40歳ころには「あの人は今」になってる人が居そうだなあ…。
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眉毛ボン (庵主)
2009-09-27 19:50:40
ゆるちょさん


>このドラマの慶喜は、歴代の慶喜役者の中でもずば抜けていいんじゃないかと思っています。キレもいいし、酔っても(ふりをしてても)上品で

いいですよね!わたしも「こんなに良かったっけ!」とビックリしてしまいましたが、ほんとに、司馬さんの描いた慶喜ですよ。抜け出してきたみたい。
上品さと聡明さ、不誠実さ、なんていうか「百才あって一誠なし」という慶喜像そのままで、毀誉褒貶はげしい人物ですけど、これはこれで、ひとつの完成品ではないかと思います。

>幾島は当時大好きで、彼女が出てくるとひとりだけ違う風が吹いているようで

わたしも樹木さんの幾島大好きでした。樹木さんは、お父様が薩摩琵琶奏者だったかな?なんか、そういう縁のあるおうちの生まれなんですよね。
御所言葉でも無理なく薩摩出身の地が出るかんじが、とっても和んで、すてきでした。最後の出演の琵琶を弾く場面は逸品でしたが、和歌の内容までは覚えてなく、今回見直して、うわ~~、なんていう香気!とノックアウトされた次第です。



>まゆげボン!にしてたのも、うれしい(笑)。

「花神」の大村益次郎は、眉毛だけでなくオデコも再現してて(笑)、もう「本人?」と思うくらいだったのです。わたしも総集編しか見てないですけど…。
平田さんも、1話だけのカメオ出演として印象を残してくださいましたが、私的には、今後ドラマで大村益次郎を出すなら、ぜひとも梅雀さんにやっていただきたい。もちろんオデコと眉毛も再現してです。

>魅了される人間が、時代の敗者になっていく。それが、二部だよってんで、いい最終回ですなあ。

この含みのある中締めはいいですよね。二分構成にしたのも正解!!
個人的には第二部のほうが印象にのこっていることでもあり、さいごのオチまで、切ないですが、頑張って見たいと思います。
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関が原は原点 (庵主)
2009-09-27 22:31:36
佳々さん

>私も岩倉具視はこの小林念侍さんが一番好きです。

小林さんの岩倉は傑作ですよね。微妙に緩んだ?というかズレた感じが笑いをさそいます。蟄居を解かれて廊下を踊りながら渡ってくるとか、明治後に鹿鳴館で鼻の下を伸ばして踊るシーンとか、妙なゆるキャラで、大好きでした。

>薩摩のこの幕末のエネルギーは”関ヶ原体験”が根にある、という様なことを書いておられたなあ…、と思って

長州もそうですよね。「花神」でも似た感じの描写がありますが、薩摩の関が原体験は、長州とはちょっと違ってて…徳川への遺恨というより、独立国の気概というか、戦国島津氏の精神をずっと幕末まで温存していた、ということなんでしょうね。

そういう意味では、関が原と言うのはその後の日本史を読み解く重要な出来事だったと思うのですが、今年のような描き方では、もう、なにをかいわんや(笑)。
ほんとうはそういう思索のきっかけになってくれれば良いのですけどね。来年にもさりげなく繋がるんですし。
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木戸さん@田中健 (庵主)
2009-09-27 22:37:33
みさきさん

>幕末編の最後で桂さんが明治愚痴男の片鱗を見せてる

あれが明治篇で全開になるんですね(笑)。
薩長同盟のとき、禁門の変の恨み言で談判を長引かせているシーンも傑作でした。
木戸ファンとしては複雑なお気持ちだと思いますけど(笑)、田中健さんがけっこう実物に似てて、洋装になってからのキザな喋りかたとかしぐさとか、なんとなく微笑ましいものがあります。

なんかね、積年「醒めた炎」って本を読みたいと思い続けていて…。でも、古書市場にもあまりないんですよね。
木戸さん主人公の本は、何故か少ないんですよね。

>当時に生きてたら勘弁してくれって思うだろうけど(笑)

たぶん(笑)。
まあ、ちょっと見てみたい気はしますけどね。1日くらいだったら。
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醒めた炎 (みさき)
2009-09-28 01:18:55
2度目すみません。
今年の大河の毒に当てられたままじゃ眠れないと思って・・・(笑)

醒めた炎、いいですよ。私はこれを読んで木戸ファンになりました。大久保さんとの攻防は激しいです。仕舞いには「あんた、どんだけ騙されたら学習するの!」とツッコミたくなります。amazonとかだったらあるかもしれませんね・・・。私は図書館で借りました。復刊してほしい・・・。

田中健さん、いい感じなんですね。うふふ、今後のレビューも楽しみにしてます。
返信する
おかげさまで (庵主)
2009-10-01 00:02:34
みさきさん

いまさらですが、アドバイスいただいて、Amazonのマーケットプレイスに手を出す度胸ができました。いままで、なんとなく二の足を踏んでいたので…。
てなことで、「醒めた炎」、ユーズドですが、手に入ることになりそうです。楽しみ~。
来年の資料にもなりますしね。ありがとうございました。
田中健さんの木戸さんは美しいです。洋装になってからが良い!けどすぐ死んじゃうんですよね…(泣)。
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