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como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

「独眼竜政宗」を見る!(19)

2009-05-30 20:48:05 | 往年の名作を見る夕べ
 伊達政宗は関が原の戦いに参戦したわけではないので、関が原自体はこのドラマでは、事後報告のようなごくアッサリした扱いです。ですが、体よく遠隔地に飛ばされて上杉景勝の抑えをやらされていた政宗が、いろいろと振り回されるようすを通じて、関が原の戦いというのが、実に、日本の歴史の大きな分水嶺だったという重みが伝わるのでした。
 もうひとつのみどころは、関が原ビフォーアフターでの家康の変貌振りです。理知的で冷静、政宗も尊敬していた広い視野と長い目をもつ家康が、関が原の戦いでガラッと…というか、なにか脱皮するような感じで、冷徹な権力者へ変貌していくのですが、長い雌伏の時間を経て、権力とはどういうものなのか、どのように行使するのが効果的なのか…緻密なセオリーを組み上げてきたような家康の、煮ても焼いても食えない権力者振りがなんともいえません。ある意味動物のボス的だった(笑)カツシン秀吉との比較も一興です。政宗にふたたび起こった謀叛の疑惑、出頭命令などの扱い方にも、秀吉と家康の性格の違いを見て取ることができます。
 それは、ふたりのキャラクターの違いでもあるけれど、風雲が収まり、もっと大きな秩序へむかって世界が収斂していく、家康という人格はその象徴的なものでもあるのでした。
 というわけで、この回は家康の関が原「後」の立ち回りをお勉強することもできます。第37、38話を見ます。

第37話「幻の百万石」

 関が原で東軍が勝利したら、政宗には旧領を回復し、都合百万石をあたえると、ふとっ腹な約束に張り切った政宗(渡辺謙)。関が原を遠く離れた東北で上杉景勝と対峙している間に、天下分け目の戦いは東軍大勝利でアッサリと終結します。
 ですが、遠い東北の辺境には情報がすぐに伝わってこないわけです。天下の分け目が定まってからも政宗たちは戦を続けてます。上杉との一時和睦を破棄し、最上義光(原田芳雄)の山形に援軍を送った政宗は、成実(三浦友和)と小十郎(西郷輝彦)の進言をうけ、天下が東西のどっちに転んでも大丈夫なように、ホームの東北を取れるだけ取っておこうと独自の侵略戦を開始。南部には、領地を失って伊達家に寄寓していた小領主の和賀忠親(山本紀彦)に援軍をつけて送り込み、旧領奪還のゲリラ戦を仕込みます。
 が、そんなところに関が原で家康(津川雅彦)大勝利の知らせ。やった!これで百万石ゲットだと歓喜する政宗一党、さっそく、奥州の王にふさわしい居城を考え始めます。地の利から、候補は会津か千代(せんだい)。千代をあずかっていた政宗の叔父の国分守重(イッセー尾形)が、かねてからの怠慢を厳しく責められて伊達家を逐電したので(このときのイッセーさんの、「都市生活」ふう小芝居がベタで大笑いなの)空いてたんですね。
 京都では、三成が捕らえられ、三条河原で処刑されていました。刑の執行にあたり、「のどが渇いていませんか。干し柿などいかがです」とねぎらわれた三成は、「干し柿は胆の毒じゃ」と拒否。処刑直前まで健康に気を使う三成は、「武将たるもの、いかなることで形勢が変るとも知れぬ。最後まで気を抜いてはならぬのだ!」と、凛と背筋をのばして言い放ち、刑場に向かいます。…いやー、最悪イヤな人間だった三成が、最後にみせたこの品格と、一抹の哀愁と滑稽感!お見事ですなあ。
 上杉景勝が家康に白旗を揚げ、東北地区の戦も集結。後片付けのはじまる政宗の陣に、最上義光と長男が、米沢加勢のお礼を言いにやってきます。このあとは隠居して息子にゆずり、妻や娘の菩提を弔って生きると殊勝な義光でしたが、伊達家が百万石ゲットするときいて、逆上。そんな話聞いてない、皆戦ったのに伊達だけなんだ!と騒ぎます。よく言うよ、日和見したくせにと売り言葉に買い言葉で、政宗は義光を放り出します。
 政宗は、ある夜、陣中をはなれて成実としみじみ語り合います。じつはいまお前の新しい嫁を探しているんだ、という政宗に、成実は「俺のような無骨者に妻子は似合わない、それに成実の妻は登勢しかいません」…と泣かせることを言って固辞。政宗は、ぶっちゃけた話、お前おれを恨んだだろう、殺したいと思ったんじゃないのか…と。成実も心をひらき、「実はあれからずっと恨んで、敵陣営に仕官して伊達家を滅亡させてやろうかと思ったりもした」と打ち明けます。でも、考えれば、父を目の前で殺され、弟を斬り、母を追放した殿の苦しさは、俺の比ではなかったはず。戦国の武将たるもの、自分個人の身内のことでいつまでもべんべんと拘っていてはいかん!と思ったんです、と。…
 いやー!成実!! じつは成実があんなに爽やかに伊達家に帰参するのが、不自然ではないけどじ若干?印だったんですが、これで完全納得。戦国武将の土性骨を表現したこの成実のセリフ、今年の大河ドラマの関係者に聞いてもらいたいなあっ!!(笑)
 さて、政宗の百万石ですけど、家康にとっては、関が原後のパワーゲームの中、政宗にオイソレとあたえるには不都合です。というわけで、奥羽戦での政宗にケチをつけて恩賞を回避するのですが、そこで問題にしたのが、南部での和賀忠親のゲリラ戦です。これを一揆加担、家康への謀叛とこじつけ、忠親に召喚をかけたんですね。
 ここで証人喚問されると、独自に奥州で戦を展開したのがバレ、政宗はホントに困るのです。とりあえず小十郎が忠親のところにいき、「とにかく話し合う」ということになりますが、南部で無惨に敗退した忠親は、「自分の首が役にたつならそうしてください。伊達家のお役にたつなら本望です」とサバサバと申し出ます。…「話し合う」ってそういうことなんですね(泣)。この、やるだけやって敗れた小領主の爽やかな男気も泣かせますが、万感を胸に忠親の首桶を持ち帰る小十郎の背中も切ない。
 かくして、「この死はけっして無駄にはしない!」と誓ったのもつかの間、伊達の百万石は虚しくカラ証文になりはてようとしていました。…


第38話 仙台築城

 和賀忠親の犠牲を得て、家康(津川雅彦)に申し開きをする為に政宗(渡辺謙)は伏見にいきます。一揆加担についてはなんの咎めもなかったものの、やはり百万石は水の泡と消え、徳川のためにただ働きしてしまった…と臍をかむ政宗でした。さらに家康は、許可が出るまで大坂から西に行くことまかりならぬと、政宗に禁則を申し付けます。
 これは、中央集権の基礎固めのために政宗の割拠を許さない牽制目的なのですが、人生をかけている千代の城普請に立ち会えない政宗は、苛立ちもピーク。ですが、長いこと人質として伏見にとどまっている愛姫(桜田淳子)は、「殿がここに居てくださるのが嬉しゅうございます」と、長年の人質暮らしで辛かった胸の内をうちあけます。
 嫌がらせに凹んでいるような政宗ではないので、慶長16年の正月は、家康にあてつけるように大坂に登城。秀頼と淀殿(樋口可南子)に謁見します、諸大名は関が原以後家康に下ってしまい、元旦に年賀に来る者もいないわけです。そんななかでの政宗の訪問に、淀殿はことのほか喜び、家康の悪口をいいまくり、関が原で加増がなかった政宗の怨みを煽るようなことをいって取り込もうとします。そして淀殿の側には、二代目腰巾着の大野治長(榎木孝明)が。
 といってもそんなことは政宗はお見通しで、むしろ手玉にとってます。政宗が大坂に年賀にいったことで機嫌を損ねた家康は、政宗を呼び出して詰問しますが、政宗のいうには、「秀頼様はいずれ関白となるお方、そうなると全武家の頭にすわるのです。武家の本分は道義を持って臣下の礼をただすこと」、その意味でいくと家康様こそ秩序を乱していませんか…というわけ。
 家康は、「そのほうの申すこと全て正しい」と全肯定しながらも、「しかし時代はかわった。これからの時代は、武家の力をもってしなければ何事もたちゆかぬであろう」と。つまり、公家が武家の風上に立つ政治スタイルは形骸化する。ただ、それまでは「我慢比べじゃのう」という家康の根気のよさに、毒気を抜かれる政宗でした。
 家康は江戸に諸大名の邸をつくり、大名の妻子を人質に要求します。伊達家では、長男の秀宗が江戸にはいることになりますが、生母の猫御前(秋吉久美子)が強烈に抵抗。秀宗だけが江戸にやられるなど合点がいかない、わたしもついていきます!と感情的になる猫御前を、「バカを申すな、許さん」と叱りながらも、フッと、その頑固な母心に実母のお東様を思い出したのか、ほだされた政宗は、猫御前が秀宗について江戸にいくことを許可します。
 伏見には愛姫と子供たち、江戸には秀宗をとられ、万一ことがあったときには伊達家の血筋が絶える。懸念した政宗は、香の前(高師美雪)という女性を訪ねます。彼女は秀吉の女だったのですが、政宗に下げ渡され、男の子を産みました。ただ、もと秀吉の女に手をつけたことを当時は表ざたにできず、隠し子として、茂庭綱元(村田雄浩)に母子ともあずけていたんですね。政宗は「万一のときには再興の柱とするように」と、ひそかにこの母子を千代におくります。また、小十郎(西郷輝彦)と成実(三浦友和)はそれぞれ東の国境の城に入れ、家康と一戦交える場合への備えとします。
 政宗はそこまで臨戦態勢を固めたのですが、家康の政宗への勘気はそういうことよりも、「まず臣従のあかしに新都の江戸にみずから入れ」ということだったんですね。江戸入りした政宗のところに、大久保長安(金田龍之介。名脇役でしたが先ごろ亡くなってしまいましたね…)という、家康の六男・松平忠輝の守役が訪ねてきます。経済通で話術にたくみな面白いオッサンで、政宗とも気が合いますが、その訪問の趣は、「五郎八姫と忠輝のかねてよりの婚約は破棄されていない。今後は徳川の親戚として、国許にも行き来は随意に」という、勘気の解けた家康の処置を伝えることでした。
 かくして政宗は、夢にまで見た千代城に城主として入ります。伊達家が千代栄えるだけではスケールが小さい!といって、中国の故事から引き、不老長寿の仙人が住むという「仙台」に地名をあらためます。
 その仙台から、いつか天下を取ってやる!と壮大な夢をみる政宗なのでした。

(つづきます)


6 コメント

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こんばんは (パール)
2009-05-30 23:57:12
庵主様の感想を読みつつ、手元のDVDを見直すのが最近の楽しみです。

以前、独眼竜と葵徳川三代の関連について書き込みましたが、秀吉死後は2作品の時代が重なるので、
奉行に家康が詰問されるシーン、三成が徳川屋敷に逃げ込むシーン、仙台城について政宗を問い詰めて帰国を許さないシーンなど、
同じ出来事を同じ津川家康、ジェームス脚本で違った角度から楽しむ事が出来ます。

イッセー尾形さんのひとり芝居は本領発揮で面白いですよね。
直後の葛西アナの真面目なナレーションとのギャップが(笑)

あと、独眼竜を見ていて感心するのが、茶室でのシーンです。きちんと茶道の所作にのっとりながら演技をしていて、
当たり前の事なのかもしれませんが、流石だなぁと思ってしまいます。
天地人でもこれから利休やその娘が出てきて茶室外交のシーンなどもあるようなのですが・・・比べるのも酷な話でしょうか(笑)

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とりとめもなく恐縮ながら (SFurrow)
2009-05-31 10:28:17
大久保長安!このドラマに出ていたんですね~(全く記憶がない)この人も大河ドラマで扱ってほしい人です。主役じゃなくて二番手・三番手の人物くらいで。慶長・元和の時代は、江戸時代ながらまだ気分は戦国で、いろんな陰謀とかもあって、面白いですよね。

イッセー尾形さんは、今朝ドラ「つばさ」のナレーション(?)をやっていますが、「つばさ」は、最初の「昨今の朝ドラは期待できない」「単なる川越の宣伝」「サンバとかふざけすぎ」などの不評から、意外にだんだん好感度を増しているようです。ヒロインの両親、本寿院様と井伊直弼の演技力に負うところが多いかも・・・最初に子役でつかんだ視聴者の期待を回を追うごとにダメにしている「天地人」と逆コースですかね。もっとも日曜8時、あの子役クンが再登場するというウワサも聞きますが。

数年前、酒田・山形のあたりを訪れ、最上義光の資料館で、豊臣秀次がらみの駒姫の悲劇のことを初めて知りましたが、山形ではずいぶん有名な話らしくて(義光が関ヶ原で東軍についたのは、この時の豊臣家への恨みのせいだと解説に)、また最上義光も地元にはいろいろ恩恵をほどこし善政をしいていた領主として尊敬されているようでした。
そういえば資料館の関ヶ原合戦図の中に上杉軍と直江兼続も描かれていたような記憶があるけれど、「愛の兜」はチェックしそびれたな~
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茶室シーンのすばらしさ。 (庵主)
2009-05-31 23:37:01
パールさん

>同じ出来事を同じ津川家康、ジェームス脚本で違った角度から楽しむ事が出来ます

それは興味深い!
私は只今、関が原への道のりと戦後処理というのを、「真田太平記」とふたつ違った角度で楽しんだりしてますが、多少混同することがあるものの(笑)、そういうのはかなりスリリングで面白いですよね。

ま…ことしの後半あたり同時代の出来事をまたひとつちがうチャンネルで見るわけですけど…そっちには何の期待もしてません(笑)。

>天地人でもこれから利休やその娘が出てきて茶室外交のシーンなどもあるようなのですが・・・

「政宗」での津川さんや謙さんの茶室での所作、ほんとうに美しく、それも「武家の茶」という感じでホレボレしますね。茶碗をあつかう美しい手つきも、ちゃんと素養がありそうな感じで、そこまで細かくてすごいです。
天地人でもお茶の場面をきちんとやったら見直すかもしれないです。でも…期待しないほうがいいか、やっぱり?
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最上義光の描き方。 (庵主)
2009-05-31 23:44:34
SFurrowさん

大久保長安は、このあと、松平忠輝(真田広之さん)の疑獄のからみでも登場しますよ。金田龍之介さんのアクの強いキャラで、かなり強烈な存在感!
殿様役から悪役まで幅広いバイプレイヤーでしたが、亡くなってしまいましたね。こういう人材は後継者いるのかしらん。

東北当りの戦国大名の歴史館というものは、機会があれば訪ね歩いてみたいと思ってるんですよ。特に最上義光歴史館!行かれたんですね、イイナ~!
ま、地元からすれば「政宗」での原田芳雄さんの義光はちょっと許しがたい悪玉かもわかりませんが(笑)。そこは、亡き娘を悼む父の姿などでフォローしてましたけど、でもかなり徹底したワルですよね(笑)。
最上の駒姫は、「政宗」のタイトル前マクラで肖像画が紹介されてましたが、ほんとに伝説的な美少女だったみたいですね。
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第37話、第38話見ましたッ (レビュ丸)
2009-06-06 21:19:39
庵主様こんばんは。先日は拙宅を訪れて頂き、ありがとうございました。
この2話、関ヶ原を境に冷徹な権力者へと変貌してゆく家康の姿も見どころでしたが、出頭命令などの修羅場に臨んでも、秀吉時代のように汲々としておらず、むしろ家康と対等に渡り合い、あわよくば天下を窺おう―――とする政宗の姿の方が印象的でした。秀吉は政宗を完全に「子供扱い」しておりましたが、家康はある程度の敬意を払って政宗に接している。そのあたりも、伊達政宗という主人公が対外的にも成長していることの証のようにも感じられ、爽快感をもって眺めておりました。

「いつか家康をオレの足下に這いつくばらせてやる」
「家康が江戸に都を造るなら、オレは仙台に都を造ろうぞ」
―――などという外様大名の視点ならではのセリフ、当時としては物凄く斬新だったのではないでしょうか。日本史上であれだけ有名な関ヶ原の合戦がオープニングのナレーションだけで済まされ、しかも「東軍勝利」の報が東北にもたらされるまでタイムラグがあった・・・という描写も、「地方発」というドラマ当初からの視点がブレていないことの証のようにも感じられ、好感が持てました。

和賀忠親が政宗の苦衷を理解し、自らを犠牲にする場面も泣けましたねェ・・・。それを見守るしかなかった小十郎も切なかった。しかし、そういう苦肉の策をもってしても、政宗の野望を見抜き、それを阻止した家康は、やはり「上手」と言うほかないでしょう。そういう力関係の差を認めるという点でも、この2話はなかなか楽しめました。
大坂城、政宗との対面の場面で登場した二代目腰巾着(笑)の大野治長、榎木孝明さんが演じられていたのですね・・・。この3年後、謙さんの病気により角川映画『天と地と』の主役を交代することになる二人が、『独眼竜』で共演していたこと、今回はじめて知りました。
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人材見本帳 (庵主)
2009-06-07 16:38:07
レビュ丸さん

>秀吉は政宗を完全に「子供扱い」しておりましたが、家康はある程度の敬意を払って政宗に接している

まさにそうですよね。だからそのぶん、秀吉のときのように、父心のウェットな部分に切り込むことができず、政宗にとってはタフな戦いになっている。そういう「戦いの質」みたいなものも、長いスタンスでみると政宗の成長をあらわしていると思います。
おもえば、家督を継いだ18歳から20代前半、最上義光とかを相手にしていたときとの世界観の違い!
そういうスケールアップ方式も、このドラマの醍醐味ですよね。

>この3年後、謙さんの病気により角川映画『天と地と』の主役を交代することになる二人が、『独眼竜』で共演していた

いや、ホントそうなんです! それと、このあと五郎八姫と結婚する松平忠輝役ででてくる、真田広之さん!
まさに、贅沢な人材の見本張みたいだったと思いますね。「政宗」からそれぞれに、スケールアップし、息ながく活躍していることを思うと…。
今年の秋には、謙さんと三浦友和さん共演で映画「沈まぬ太陽」公開とか。いまあらためて政宗と成実をスクリーンで見るのが、楽しみでしょうがありません。
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