このドラマを見ていると、大河ドラマ1回分の45分で処理できる分量の多さに、あらためてビックリします。こうしてまとめてみるとかなりたくさんの見所を詰め込んでいるのですが、それでも駆け足だったり、散漫になることもなく、緊張感を維持し、45分の1話のなかで展開する内容はずいぶん多い。見るほうも一生懸命です。
なるほど、このスピード感と、内容の濃さが、無類の面白さに繋がったんだなあ…と思うと感慨深いものがあります。視聴者に分かりやすいように内容を薄め、ダラダラとテンポを緩くすれば見易く面白いかというと、それは全然ちがう!
というわけで、31話と32話です。この2回のなかで、朝鮮出兵や、秀頼の誕生、五郎八姫の誕生、母との再会、最上義光の娘・駒姫の悲劇、関白秀次の失脚、壊れゆく秀吉、政宗にかけられた嫌疑…などなど、滔々と流れる水のように展開していきます。これぞ「大河」ドラマ!?
第31話「子宝」
名護屋で待機している政宗(渡辺謙)の陣から、若い側近の遠藤文七郎(中村繁之)が出奔します。待機の間に地元の村娘と深い仲になり、駆け落ちしてしまったのですが(この村娘役、武豊騎手の奥さんになった佐野量子さん!)、すぐ見つかって連れ戻されます。その申し開きは、「人を殺すのが嫌になりました、殺す相手にも親も妻子もあるというのに…」と、これが今年の主人公の言い草ソックリで吹いてしまったんですが、ことしの主人公って、「政宗」でいえばこのパシリ侍レベルなんですね。そりゃ貫禄がないわけだ(つうかパクリ? 笑)。小僧の青臭いヒューマニズムに、小十郎(西郷輝彦)ら伊達家中の大人は、戦勝で領地を増やすのは国の民百姓のためなのだよと噛んで含めるように説明し、小僧の亡き父・遠藤元信の功績にめんじてとくに不問となります。
そんな具合でどうも緩んだ名古屋待機組、現地の戦況もよくなく、さらに秀吉(勝新太郎)が帯同していた淀殿(樋口可南子)が懐妊し、秀吉の興味はそっちに行ってしまいます。
やがて政宗は渡海し、朝鮮は晋州の前線にでます。現地の状況は厳しく、風土病に冒されて、若き忠臣の原田左馬之助(鷲生功)が亡くなってしまいます。政宗は、出陣にあたって、お東の方あらため保春院(岩下志麻)に殊勝な手紙を書きました。これが今生最期の便りになるかもしれないので…母上にはいついつまでもご健勝で、という手紙に、涙をながす保春院。一時は発狂しかけたものの、すっかり落ち着き、仏のような顔になった保春院は、政宗を召還させるためありったけの金品を出す、といって運動をはじめます。母は有難いですね。
お母さんの努力の甲斐あって政宗は現地から比較的早く召還されます。そのころには、後に秀頼となるお拾い丸が生まれており、秀吉は完璧に朝鮮出兵に興味をなくしてしまってたんですね。
お拾い誕生で、複雑な立場に置かれることになったのが現関白の秀次(陣内孝則)です。陣内さんの挙動不審な演技が非情に強烈で、これを超える秀次役者はまだいないかも(笑)。殺生関白とあだ名されるパラノイア状態の秀次は、政宗と最上義光(原田芳雄)、蒲生氏郷(寺泉憲)をあつめて「太閤と決裂したらそのほうら奥羽勢を頼む」と迫ったりします。さらに、義光の末娘の駒姫(坂上香織)のことも忘れてなくて、さっさと差し出せえ!と脅された義光は、やむなくまだ13歳の娘を側室に提供することに。
こうして駒姫は父親につれられ、聚楽第にあがるのですが、13歳の側室にのっけから目が血走ってる、キモさ全開の秀次に、娘を託して下がる義光の手は震えています。そして、聚楽第の廊下ですれ違った石田三成(奥田瑛二)に、「義光殿…さぞご無念でございましょうな」と耳元で囁かれ……。
そんなおり、政宗の嫡男・兵五郎が母から離れて上京してきますが、時を同じくして愛姫(桜田淳子)の懐妊が発覚。嫁入り以来15年目の快挙に、愛姫をお姫様抱っこして、半狂乱で喜ぶ政宗でした。
兵五郎の将来について、政宗は三成に親切ごかしたアドバイスをされます。関白の花見で出会ったとき「御曹司を関白の小姓に出すのはやめたほうがよい。お拾い様の小姓に上げるのがよろしかろう、なんならこの三成が推挽の労をとりますぞ」とか言われますが、政宗は三成が大大嫌いですから、嫌悪もあらわに、いかなるご存念にて候や、倅の進退は当方にて決め申す!とバッサリ断るのでした。
月満ちて、愛姫は出産の時をむかえます。かねて政宗の風流好みが気に入らない成実(三浦友和)に、国に帰って弓矢の稽古に励まないとフヌケになりますぞ、と苦言を呈され、古いなお前!とか言って口ゲンカしているときに、もたらされたのは「姫君誕生」の知らせでした。がっかりする政宗に、成実は「武芸を蔑ろにした報いじゃ」と毒舌を吐きます。
が、生まれた娘の顔をみる政宗の顔は、もうメロメロなんですね~。「最初は姫でよいのだ~」とか言って。まだ若いのに人の親のこの顔。いいなあ~(笑)。
第32話「秀次失脚」
愛姫(桜田淳子)の産んだ政宗の長女は、「五郎八」姫と名づけられました。ゴロハチって!と、いかつい男名前に憤慨する愛姫でしたが、この名前には、イロハのイからはじまってたくさんの子供に恵まれてほしい、そして出来れば男の子を…という政宗の願いがこもっているのでした。
都では、秀吉(勝新太郎)が、一粒種のお拾丸(=秀頼)を溺愛するあまり人格が崩壊してしまい、秀次(陣内孝則)との不仲が囁かれるようになっています。秀次と仲のよい大名達は微妙に居心地が悪く、政宗も岩出山に一時帰国することになりました。帰国する政宗に、秀次は「オレの娘とお拾様の縁談もあり、将来お拾様の舅になるオレの立場は安泰なのだ!」と大風呂敷をひろげ、笑いながらもすがるような必死な目をして「政宗、オレを裏切るな!」とダメを押すのでした。その秀次の傍らには、最上義光(原田芳雄)の娘・駒姫(坂上香織)が愛妾としてはべっています。
帰国した政宗は、まず新領地に改葬した父・輝宗の墓に詣でます。その墓前で、何年ぶりになるのでしょうか、恩師の虎哉和尚(大滝秀治)と再会します。
和尚の前にでると素直に謙虚になれる政宗は、オレは人間が小さくなったのではないか、権力に媚びてダメになっているんではないか…と胸の内を吐露します。和尚は、「自分を小さく感じるのは、人間が大きくなったから。つまり世界が広がったからです」と悠然と力づけます。うわーうわー。なんていいこと言うんだあ!! 殿は骨肉の枷を断ち切り、自灯明を得て歩いているではありませんか。人間として大きくなるには骨肉の枷を断ち切らなければならなかったのですよ…と、政宗の過去の苦しみを全肯定して、力強く励ます和尚。ここ、なんか政宗の気持ちになってジーンときちゃう。
で、和尚は政宗を、改葬された小次郎の墓に案内します。はじめて弟の墓に手を合わせ、悩まされた亡霊からも開放された政宗。仏の導きのように、墓前で出会ったのはお東の方あらため保春院(岩下志麻)でした。
虎哉和尚が間にいることもあり、落ち着いた気持ちで向かい合う母子、ですが、やっぱりどこかぎこちない。母上を岩出山に迎え、孝養をつくしたいと申し出る政宗に、おかあさんは首を横にふり、「わが子を殺したいなどと思い、実行した罪は一生消えない。わたしは忘れて生きていくことはできないのです」と…。わだかまりではなく、ただ自分の罪と真剣に向き合いつづけている保春院の姿は…いまどきの不心得な親に見てもらいたいよね。政宗は、母の気持ちを汲んで強いてそれ以上はいいませんが、なんともいえず寂しいような、ほっとしたような、陰影のあるな表情が印象的でした。
政宗が帰国している間に京都では騒ぎになっています。関白秀次が逮捕されたんですね。これが石田三成(奥田瑛二)の讒言で、秀次が朝廷に度を越した付け届けをしている、伊達政宗などと組んで武装も進めていて、謀叛を企ておること疑いなし。太閤殿下を追い落とし、お拾様を生害におよぶかも……と話を誇大に秀吉に吹き込んだのですね。
そして秀次は高野山に蟄居させられ、頭も丸めているのですが、高野山で切迫した目をして、ヤケ食いをしている秀次が何か凄かった。短いシーンなのですが、殺される秀次の狂気と凄みは絶品で、陣内さんはいまだに最高の秀次役者かもしれません。
秀次が切腹させられると、その妻子や、側室、女中にいたるまで連座させられ、みせしめの処刑が言い渡されます。牛車にのせて市中を引き回し、河原に四角にすわらせて秀次の晒し首を拝ませて一人ずつ殺して…と、処刑のプランを秀吉にじっくり語る三成の、妙に高揚してるような顔のムカツクことったらなく、具合悪くなるくらい!!
過酷な処分に取り乱した義光は、愛姫をたずね、北の政所(八千草薫)にとりなしてお駒を助けてくれないかと手をついて頼みます。が、秀吉は「義光め、政宗のオカカに頼みおるとは女々しい奴じゃ」と嘲笑い、かわいいお拾の将来のために、秀次の血は一滴たりと残すことはできないと言い切ります。すでに目がイッちゃってます。
そして、あわれ駒姫は15歳の命を刑場に散らします。義光は半狂乱になりながら秀吉を呪い、権力に媚びて振り回された自分を責めるわけです。虎哉和尚と政宗の対話と、駒姫の悲劇のシーンは、実は対になってる。おなじ秀吉の権力に振り回されたのでも、媚びて振舞った義光と、毅然とたちむかって自分の肥やしにした政宗との、コントラストが鮮やかです。
が、三成のいやがらせは周到で、政宗は、秀次と組んで謀叛を企てた張本人に仕立てられていまってます。命令されて上洛する途中にも、どんどん欠席裁判で立場が悪くなっていく政宗。浅野長政(林与一)も、保身のために政宗を突き放してしまい、主だった味方も居ない中で…人格崩壊した秀吉を敵に回して、政宗はどう立ち向かいますか?
(つづきます)
なるほど、このスピード感と、内容の濃さが、無類の面白さに繋がったんだなあ…と思うと感慨深いものがあります。視聴者に分かりやすいように内容を薄め、ダラダラとテンポを緩くすれば見易く面白いかというと、それは全然ちがう!
というわけで、31話と32話です。この2回のなかで、朝鮮出兵や、秀頼の誕生、五郎八姫の誕生、母との再会、最上義光の娘・駒姫の悲劇、関白秀次の失脚、壊れゆく秀吉、政宗にかけられた嫌疑…などなど、滔々と流れる水のように展開していきます。これぞ「大河」ドラマ!?
第31話「子宝」
名護屋で待機している政宗(渡辺謙)の陣から、若い側近の遠藤文七郎(中村繁之)が出奔します。待機の間に地元の村娘と深い仲になり、駆け落ちしてしまったのですが(この村娘役、武豊騎手の奥さんになった佐野量子さん!)、すぐ見つかって連れ戻されます。その申し開きは、「人を殺すのが嫌になりました、殺す相手にも親も妻子もあるというのに…」と、これが今年の主人公の言い草ソックリで吹いてしまったんですが、ことしの主人公って、「政宗」でいえばこのパシリ侍レベルなんですね。そりゃ貫禄がないわけだ(つうかパクリ? 笑)。小僧の青臭いヒューマニズムに、小十郎(西郷輝彦)ら伊達家中の大人は、戦勝で領地を増やすのは国の民百姓のためなのだよと噛んで含めるように説明し、小僧の亡き父・遠藤元信の功績にめんじてとくに不問となります。
そんな具合でどうも緩んだ名古屋待機組、現地の戦況もよくなく、さらに秀吉(勝新太郎)が帯同していた淀殿(樋口可南子)が懐妊し、秀吉の興味はそっちに行ってしまいます。
やがて政宗は渡海し、朝鮮は晋州の前線にでます。現地の状況は厳しく、風土病に冒されて、若き忠臣の原田左馬之助(鷲生功)が亡くなってしまいます。政宗は、出陣にあたって、お東の方あらため保春院(岩下志麻)に殊勝な手紙を書きました。これが今生最期の便りになるかもしれないので…母上にはいついつまでもご健勝で、という手紙に、涙をながす保春院。一時は発狂しかけたものの、すっかり落ち着き、仏のような顔になった保春院は、政宗を召還させるためありったけの金品を出す、といって運動をはじめます。母は有難いですね。
お母さんの努力の甲斐あって政宗は現地から比較的早く召還されます。そのころには、後に秀頼となるお拾い丸が生まれており、秀吉は完璧に朝鮮出兵に興味をなくしてしまってたんですね。
お拾い誕生で、複雑な立場に置かれることになったのが現関白の秀次(陣内孝則)です。陣内さんの挙動不審な演技が非情に強烈で、これを超える秀次役者はまだいないかも(笑)。殺生関白とあだ名されるパラノイア状態の秀次は、政宗と最上義光(原田芳雄)、蒲生氏郷(寺泉憲)をあつめて「太閤と決裂したらそのほうら奥羽勢を頼む」と迫ったりします。さらに、義光の末娘の駒姫(坂上香織)のことも忘れてなくて、さっさと差し出せえ!と脅された義光は、やむなくまだ13歳の娘を側室に提供することに。
こうして駒姫は父親につれられ、聚楽第にあがるのですが、13歳の側室にのっけから目が血走ってる、キモさ全開の秀次に、娘を託して下がる義光の手は震えています。そして、聚楽第の廊下ですれ違った石田三成(奥田瑛二)に、「義光殿…さぞご無念でございましょうな」と耳元で囁かれ……。
そんなおり、政宗の嫡男・兵五郎が母から離れて上京してきますが、時を同じくして愛姫(桜田淳子)の懐妊が発覚。嫁入り以来15年目の快挙に、愛姫をお姫様抱っこして、半狂乱で喜ぶ政宗でした。
兵五郎の将来について、政宗は三成に親切ごかしたアドバイスをされます。関白の花見で出会ったとき「御曹司を関白の小姓に出すのはやめたほうがよい。お拾い様の小姓に上げるのがよろしかろう、なんならこの三成が推挽の労をとりますぞ」とか言われますが、政宗は三成が大大嫌いですから、嫌悪もあらわに、いかなるご存念にて候や、倅の進退は当方にて決め申す!とバッサリ断るのでした。
月満ちて、愛姫は出産の時をむかえます。かねて政宗の風流好みが気に入らない成実(三浦友和)に、国に帰って弓矢の稽古に励まないとフヌケになりますぞ、と苦言を呈され、古いなお前!とか言って口ゲンカしているときに、もたらされたのは「姫君誕生」の知らせでした。がっかりする政宗に、成実は「武芸を蔑ろにした報いじゃ」と毒舌を吐きます。
が、生まれた娘の顔をみる政宗の顔は、もうメロメロなんですね~。「最初は姫でよいのだ~」とか言って。まだ若いのに人の親のこの顔。いいなあ~(笑)。
第32話「秀次失脚」
愛姫(桜田淳子)の産んだ政宗の長女は、「五郎八」姫と名づけられました。ゴロハチって!と、いかつい男名前に憤慨する愛姫でしたが、この名前には、イロハのイからはじまってたくさんの子供に恵まれてほしい、そして出来れば男の子を…という政宗の願いがこもっているのでした。
都では、秀吉(勝新太郎)が、一粒種のお拾丸(=秀頼)を溺愛するあまり人格が崩壊してしまい、秀次(陣内孝則)との不仲が囁かれるようになっています。秀次と仲のよい大名達は微妙に居心地が悪く、政宗も岩出山に一時帰国することになりました。帰国する政宗に、秀次は「オレの娘とお拾様の縁談もあり、将来お拾様の舅になるオレの立場は安泰なのだ!」と大風呂敷をひろげ、笑いながらもすがるような必死な目をして「政宗、オレを裏切るな!」とダメを押すのでした。その秀次の傍らには、最上義光(原田芳雄)の娘・駒姫(坂上香織)が愛妾としてはべっています。
帰国した政宗は、まず新領地に改葬した父・輝宗の墓に詣でます。その墓前で、何年ぶりになるのでしょうか、恩師の虎哉和尚(大滝秀治)と再会します。
和尚の前にでると素直に謙虚になれる政宗は、オレは人間が小さくなったのではないか、権力に媚びてダメになっているんではないか…と胸の内を吐露します。和尚は、「自分を小さく感じるのは、人間が大きくなったから。つまり世界が広がったからです」と悠然と力づけます。うわーうわー。なんていいこと言うんだあ!! 殿は骨肉の枷を断ち切り、自灯明を得て歩いているではありませんか。人間として大きくなるには骨肉の枷を断ち切らなければならなかったのですよ…と、政宗の過去の苦しみを全肯定して、力強く励ます和尚。ここ、なんか政宗の気持ちになってジーンときちゃう。
で、和尚は政宗を、改葬された小次郎の墓に案内します。はじめて弟の墓に手を合わせ、悩まされた亡霊からも開放された政宗。仏の導きのように、墓前で出会ったのはお東の方あらため保春院(岩下志麻)でした。
虎哉和尚が間にいることもあり、落ち着いた気持ちで向かい合う母子、ですが、やっぱりどこかぎこちない。母上を岩出山に迎え、孝養をつくしたいと申し出る政宗に、おかあさんは首を横にふり、「わが子を殺したいなどと思い、実行した罪は一生消えない。わたしは忘れて生きていくことはできないのです」と…。わだかまりではなく、ただ自分の罪と真剣に向き合いつづけている保春院の姿は…いまどきの不心得な親に見てもらいたいよね。政宗は、母の気持ちを汲んで強いてそれ以上はいいませんが、なんともいえず寂しいような、ほっとしたような、陰影のあるな表情が印象的でした。
政宗が帰国している間に京都では騒ぎになっています。関白秀次が逮捕されたんですね。これが石田三成(奥田瑛二)の讒言で、秀次が朝廷に度を越した付け届けをしている、伊達政宗などと組んで武装も進めていて、謀叛を企ておること疑いなし。太閤殿下を追い落とし、お拾様を生害におよぶかも……と話を誇大に秀吉に吹き込んだのですね。
そして秀次は高野山に蟄居させられ、頭も丸めているのですが、高野山で切迫した目をして、ヤケ食いをしている秀次が何か凄かった。短いシーンなのですが、殺される秀次の狂気と凄みは絶品で、陣内さんはいまだに最高の秀次役者かもしれません。
秀次が切腹させられると、その妻子や、側室、女中にいたるまで連座させられ、みせしめの処刑が言い渡されます。牛車にのせて市中を引き回し、河原に四角にすわらせて秀次の晒し首を拝ませて一人ずつ殺して…と、処刑のプランを秀吉にじっくり語る三成の、妙に高揚してるような顔のムカツクことったらなく、具合悪くなるくらい!!
過酷な処分に取り乱した義光は、愛姫をたずね、北の政所(八千草薫)にとりなしてお駒を助けてくれないかと手をついて頼みます。が、秀吉は「義光め、政宗のオカカに頼みおるとは女々しい奴じゃ」と嘲笑い、かわいいお拾の将来のために、秀次の血は一滴たりと残すことはできないと言い切ります。すでに目がイッちゃってます。
そして、あわれ駒姫は15歳の命を刑場に散らします。義光は半狂乱になりながら秀吉を呪い、権力に媚びて振り回された自分を責めるわけです。虎哉和尚と政宗の対話と、駒姫の悲劇のシーンは、実は対になってる。おなじ秀吉の権力に振り回されたのでも、媚びて振舞った義光と、毅然とたちむかって自分の肥やしにした政宗との、コントラストが鮮やかです。
が、三成のいやがらせは周到で、政宗は、秀次と組んで謀叛を企てた張本人に仕立てられていまってます。命令されて上洛する途中にも、どんどん欠席裁判で立場が悪くなっていく政宗。浅野長政(林与一)も、保身のために政宗を突き放してしまい、主だった味方も居ない中で…人格崩壊した秀吉を敵に回して、政宗はどう立ち向かいますか?
(つづきます)
スピード感+内容の濃さ=面白い、レビュ丸も同感です!! この2話は確かに内容盛りだくさんでしたが、詰め込み過ぎにならず、それでいてテンポが良かったですね。あくまで主人公・政宗の視点から「斜陽の豊臣家」について描かれたぶん、話の軸もしっかりしていて、分かりやすかったです。何よりも、政宗が秀次事件に連座するまでの経緯がちゃんと伏線として引かれていたこともあり、不自然さを感じることなく、自然にドラマに入り込むことができました。全くもって当然のことなのですが、「伏線」って本当に大切ですね(笑)。
32話の政宗と保春院との対面の場面、まるで小次郎が引き合わせてくれたかのような演出に、作り手の「優しさ」のようなものを感じました。あれから何年が経ったのでしょう。すべてを水に流そうとする政宗の大きさ、涙を浮かべつつも、穏やかな表情でそれを断る保春院・・・。かつて修羅場を演じた二人を静かに見守る、虎哉和尚の優しげな瞳・・・。母と子、師匠と弟子との関係を超えた、人間味のある真心のこもったこの場面、現在のところ、『独眼竜』のなかでレビュ丸が最も好きな場面となりました。
狭量で、次第に精神が崩壊してゆく秀次を、陣内さんは本当に好演されていました。「最高の秀次役者」、同感です!! そして秀次事件に連座し、愛娘を失った義光の哀れなまでの憤り・・・。あの非情な義光が、娘のためにああも取り乱してしまうのか・・・と思うと、ここにも親心のひとつの形を見たような気がしました。
>全くもって当然のことなのですが、「伏線」って本当に大切ですね
ほんとに、このドラマをみて伏線の大切さと、その伏線を出来るだけ長く引っ張ることが、大河ドラマにおいてはとくに大切ということがよく解りました(笑)。
伏線をやたらあわてて解決したり、引っ張ると断線してしまうという、軟弱な今年のドラマのことはもうあきらめましたので(笑)来年からの製作者には本当に良く考えて欲しいと思います。
>作り手の「優しさ」のようなものを感じました。
お母さんとのことがあんなに穏やかに解決したのも良かったですが、亡き小次郎の存在を巧みに絡めたのもほんとうに素晴らしかったですね。
で、小次郎の墓前で追い腹を切った家臣と、秀次に連座させられた家臣と、もと小次郎の守役ふたりが運命を分けたのも、サイドの薬味としてさりげなく添えてある。なんて行き届いているんでしょう(笑)。
そういえば小次郎の元家来の伏線も、ほんとうに長く埋めてありましたよねえ…。