como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

龍馬伝 感想再録 第33話

2010-11-30 21:24:55 | 過去作倉庫07~10
 はい、先週が、あまりにもメタメタしょうもねえ内容で足踏みした分、今週は一気に緊迫し、歴史的にもひとコマ進みました。重畳重畳。みんなカッコイイし、群像劇としてもスタイリッシュで、熱くて、幕末劇はこーでなくちゃあ!!
…ただし、龍馬以外
 いや、もう、ゴメン!!ホントすんません。こと龍馬に関しては、先週くらいの緩くてバカバカしい内容のほうが柄に会ってて違和感なかった、とか、酷いこと思っちゃったの。なんかね、この龍馬さんって、いちばん違和感ないのは実家の坂本家、ついで寺田屋のお登勢さんとお龍に挟まれてる場面だったりして、つまり女子供を相手にしてるととっても自然なのだけど、錚々たる幕末スターキャストを相手に回してしまうと…… 「誰あんた?」状態で。先週、いみじくも、上川隆也が龍馬に見えてしまった、みたいなもんです。いや、こーゆーことになるのを、実は前から案じていたんですけどねえ。
 でもまあ、みんながみんな寄ってたかって、根拠もないのに龍馬をヨイショしマンセーし倒すような内容よりも、主役の演技力の無さのボロがでるくらいのほうが、ドラマの内容としては誠実なのかもしれません。じっさい、龍馬がものすごい影薄く、演技も下手で見てられんくらいの回のほうが、内容的には見ごたえある…という、ヘンな屈折が生じていますしね。
 てなわけで、今週は、コゴローちゃんと次郎さん、惣之丞ちゃんと長次郎、長州のお神酒徳利、そしてアランことグラバーと、そしてそして、なんつっても万年青…じゃなくてお元…蒼井優ちゃん主役の回です!!

 第33話「亀山社中の大仕事」

 先週、薩長会談をドタキャンした西郷の誠意を見せるため、経済封鎖されている長州のかわりに薩摩名義で、倒幕戦のための軍艦・および武器弾薬一式を購入する、その仲介および取引交渉一切を、亀山社中がやりますき!(…という流れは、あれだけの不親切な説明で、幕末基礎知識の無いヒトにもわかったんでしょうか?)…という段取りになりました。んで、いよいよ亀山社中が営業に動き出すんですけども、これが、まったく根回しもなにもない、飛び込み営業もいいところで、「軍艦売ってくれ、金の出所は言えんし現ナマもココにないけどオレら信用して売ってくれ」って、これじゃアランが青筋立てて切れるのは無理ない気がする。
 とにかく、売買契約をするにあたって薩長の名前を出せなくて、信用してくれってほうが無理!と気づいた社中のメンバーは、長崎の路上で、人に聞こえるでっかい声で「どーするがじゃー、薩摩と長州の誰かが出てこないとまとまらんぜよー!」って、オイオイ……。それ極秘でもなんでもないだろが。
 で、案の定それを、幕府隠密の芸者お元が、たまたま居合わせ、たまたま耳にするわけですね。なんたるご都合主義。
 がしかし、そのご都合主義をご都合主義にしない、蒼井優ちゃんの演技力と存在感でして。なんか、ものすごい綺麗だよね、この人。この世のものではないような美しさ。じっさい、お元はこの世のものではないものを半分見ながら生きている…ということがわかってくるんです。

 慶応元年(この前年ですね)に、長崎では、フランス人の手によって浦上天主堂が建立されまして、それをきっかけに、300年も潜伏していた浦上隠れ切支丹の集団が「実は…」と名乗り出て保護を求める、という事件が起こっています。これはキリスト教文化圏に大きく伝えられ、極東の奇跡として世界を感動させたのですけど、これで幕府の切支丹禁制が緩和の方向に向かったかというと、逆だったんですね。実は、これによって切支丹狩りや弾圧がいきなり過酷になったらしいです。
 ですので、このときお元が感じている切迫した不安感というのは、けっこう、史実に沿っているんではないでしょうか。
 グラバー邸で行われた、大浦お慶さんのお誕生パーティに出席したお元は、廊下にさりげなくキリスト磔刑像が飾られているのを見てしまいます。切支丹として、こういうものを見たら素通りすることは出来ないので、お元はササッと周囲に目を配ると、サッと十字を切ってお祈りをするのですが、それを、窓の外から見ている男と目が合っちゃう。龍馬です!
 グラバー邸に侵入した龍馬は、はい、大河ドラマの主役のお約束、「単身・丸腰で・敵地に乗り込み」、「両手をついて大見得を切り誠意を示す」 、という、時代背景に関わらず受け継がれてきた大河ドラマ伝承芸の一連を演じるわけなんですが……。う……こーゆーのって、あれだわね、大河主役の不滅のワンパターンなんだけど、ドラマももう大詰めに近い段階で、これがなんだかすげー青臭く、こっ恥ずかしく感じてしまうのって、やっぱり問題だと思うのね。
 てか、このくらいの段階になったら、主役にはある種のシタタカさとか、喰えない感じが備わっていて欲しいと思いますよ。シチュエーション的にも、のるか反るかの大勝負だったりして、やっぱ若造の頃とは変わっててくれないとね、とか、つい思っちゃうんですが…望みすぎだったかな、そこまでは。
 で、龍馬はアランと交渉の場を持ち、乱入したお慶さんも交えて、これは薩摩名義で長州が武器を買って倒幕戦争を起こすっつう話だ、アンタ時勢の風を読むより、積極的に歴史を変えるっつう立場になってみて、ボロ儲けする気はないか…と、大風呂敷を広げるわけですね。
 この話の大きさにハレーションを起こしたアランは、やります、やらいでか!!と、この密輸劇に噛むことを約束。薩長同盟は一歩前進するのでした。
 まあ、いいんだけど、間に立つ龍馬が「仲介手数料ゼロ円!」でグラバーを驚かせ、「志には私心があってはいかんがじゃき」と言うところ、あーーー!!ここもうちょっと龍馬に大きさっていうか、シタタカさと邪心のなさが拮抗するような、清濁併せ呑むような感じがあればーーーー!!って、もうこういうところに一番イラつく。いいセリフだし、ある意味、龍馬って人をサッと説明できるような場面だっていうのに、ただ単に青臭いだけにみえて、セリフも右耳から左耳へ抜けていってしまった。もんのすごい残念!!

 かくして、亀山社中の仕事は、交渉から実務レベルに進むのですが、ここで龍馬は後ろにさがって、実務のほうは沢村惣之丞ちゃんと、饅頭屋長次郎にまかせることになります。
 でね、いい仕事をするんですよ、惣之丞ちゃんと長次郎が。要潤が、幕末の浪士って本当こんな感じだったんじゃないかみたいな、熱くてギラギラしてて、でもなんか目が澄んでいる感じ、絶妙なのよ。んでもって、さらに大泉洋の、大きな仕事をこなしている充実感というか…来週のこと考えると特に…見ているだけで涙もんなのよ。
 長次郎が、実は英語は「ナイストゥミーチュー!」しか喋れない、ってとこも味があったよね。なにがなんでもナイストゥミーチューで押し通し、そこから派生する知識欲や、外国への憧れとかね。来週のこと考えると…ううううっっ。

 惣之丞ちゃんと饅頭屋がいい仕事をしている間に、龍馬はなにをしてるかというと、芸者お元に口説かれてます。龍馬が薩長のあいだを立ち回ってなにかしていると嗅ぎつけたお元は、グラバー邸で十字架を拝んでいたのを忘れてくれたら自分も奉行所に密告しない、と取引を申し出るんですね。
 ここで、お元が隠れ切支丹だということを告白するんですが、いや、実はお元が切支丹という設定はやりすぎじゃないかと思ってたんですけど…考えをあらためました。ここはすごい良かったです。切支丹バテレンにすがらなくてはならない彼女の悲しさが、じつに切々としてましてねえ。
 お元は、奉行所のタレコミ屋をして小金を溜めているのは、自由になるためだと言います。遊郭から自由になるって話じゃなく、出て行きたいのはこの国だ、と。この国に居てもよかことは何もない。だから出て行きたいという切実な話は、遥かなるヌーヨーカだとか、にいちゃんねえちゃん姪っ子を船に乗せて世界を…とかいう話がてんでアホに見えるような、それはそれは切実なものなのでした。
 それでもまだ、ワシが目指しているのはお前のような女が笑顔で暮らせるハッピーな世の中じゃき、みたいなKYなお題目を垂れ流してしまう龍馬なのですが…。お元は、この龍馬に思いっきりシニカルに「お目出度かお方」と言い放ち、その場を去るのでした。
 いや~、蒼井優ちゃんは完璧だわ。この美しさ、透明感、暗さ、辛らつさ。素晴らしい!できれば彼女は龍馬の長崎妻なんかにならないで、最後までこの態度を貫いてほしいもんです。

 さてさて、饅頭屋の努力で交渉はまとまり、長州の御神酒徳利とともに成功を分かち合い、亀山社中の初仕事は成功裡に終わります。よかったですね。
 あまりにも良かったんで、来週の展開を考えると、もう、今から胸が胸が……うううううっ。
 来週はハンカチを用意しなきゃあ…。 .