上発地村から

標高934mぐらい日記

打鐘

2009年11月09日 | 行事
朝6時半の携帯タイマーで目覚めた。憂鬱な朝だ。
今日から秋の火災予防週間が始まり、火災警報発令信号を発信しなければならない。
ようは火の用心の鐘をたたくのだ。

鐘をたたくためには「火の見やぐら」に登らなければならない。地上から10m以上はあるだろうか
高所恐怖症の俺としては、お金を払って誰かに代わってもらいたいくらいだ。

大抵この時期は霜が降りていて、梯子(はしご)が滑りやすくなっている。手袋なんかは
くっついてとれなくなってしまうのだ。今朝はまだ凍ってなくてよかったのだが・・・

7時ちょうどにたたかなければいけない。
あまり早くに登ってしまうと、上で待っている時間が長くて怖い。
かといってギリギリだと慌てて梯子を踏み外す可能性がある。
ということで毎回6時56分に登り始める事にしている。
このタイミングは15年の消防人生で体得したものだ。

自分の手と足を確実に梯子に掛け、一手一手、一歩一歩登っていく。
「自分の手と足を信じろ・・」 そう心に呟く。

無事頂上に到着。左腕で細く錆びた鉄柱をガッチリ抱え、右手で携帯の時計を見た。6時58分。
携帯をポケットに押し込み、その手で掛けてあった木槌をギュッと握りしめた。

しばし冷たい北風(たぶん)にふかれながら沈黙・・・  まだか・・・

直後、遠く隣村からの鐘の音が聞こえた。
ちょっと慌てたが、遅れまいと右手に握りしめた木槌を勢いよく振る。
「かぁ~ん」 イイ音だ、今日は調子がいい。

無事任務は終了した、しかし充実感に浸っている暇はない。下に降りねばならないのだ。
登山家の野口健の「山は登るより下りるほうがずっと難しい」という言葉が一瞬頭をよぎる。
「大丈夫いける・・」 錆びた梯子をしっかりと掴み、意を決し頂上を後にしました。

(これはフィクションではありません。本人の実感を忠実に表現しています)

今日の一曲 カプセル ”Jelly"
http://www.youtube.com/watch?v=Sj5-uSBZRPc&feature=related

最新の画像もっと見る

コメントを投稿