上発地村から

標高934mぐらい日記

遥かなる雲南の旅 最終幕(帰国編)

2018年06月07日 | Weblog
中国滞在最後の朝、昆明の街はまだ暗く静まっていた。寝坊できないプレッシャーは多少あったものの快適なベッドのおかげでゆっくり休めた。毎回一緒に夜を共にするS氏に自分のいびきがうるさいことを申し訳なく思ってるってことあるごとに言っていたのだが、彼は一向に気にしていない様子で「全然大丈夫だよ、まったく気にならない」って言ってくれてた。本当にたいしていびきをかいていないのか、お互い疲れすぎていて眠りが深くなりいびきが聞こえないのか、もしかするとそういうことで旅が気まずくなるのを避けてS氏が遠慮して我慢してくれていたのか…
まあ今回の旅ではS氏の懐の深い対応に終始助けられた。
俺は洗面所で一通り身支度し、ミネラルウォーターを一口飲んでから最終的で究極的で強固な荷造りにとりかかった。結局俺の手荷物は合計3つ、一つは持ってきたリュックでもう一つはS氏に借りた大き目の黒のボストンバッグ、そして竹の背負いカゴとなった。俺のプランでは竹の背負いカゴに買い込んだお土産品などを詰め込み上の口の部分を強固に覆ってひとまとめにし2つに収めようとしたのだがS氏がそれに苦言を呈した。「空港でチェックしたり、荷物がばらけたりしてトラブルが起こると、乗り遅れたりする原因になるからやめたほうがいい」と言うのだ。俺は結構自信があったのだがここは旅慣れている彼に従ったほうが無難だろうとS氏の言うとおりにした。そのS氏はコーヒーを飲んでから髭を剃りゆっくり出発の準備をしている。七時半発の飛行機なので六時までには昆明国際空港に着いていたい。万全な帰り支度でなければならないが少しスピード感も必要、ただ二人のタイミングは比較的息が合っていて、どちらかが「おいはやくしろよ!」といったような気分になることはほとんどこの旅ではなかった。ただこれもS氏の計らいがあったのかもしれないのだが…
ホテルを後にし空港に向かうためタクシーを探す。朝早いので少し手こずるかとも思ったが比較的すんなりタクシーは捕まえられた。上海の時もそうだったが、最終日の空港行きの交通手段はタクシーと決まっている。中国旅行ではこれが飛行機に乗り遅れないための最適な手段といっていい。順調にタクシーは空港に到着、停車場には同じようなタクシーであふれかえっていた。
空港に入ってからチェックインを済ませ黒のお土産バッグだけを預けた。その後手荷物検査を受けなんのトラブルも無く出発ロビーへ、順調にゲートに向かい時間も十分余裕をもって出発を待っていた。土産店で最後のお土産チェックをしながら、この調子だと楽勝で帰国だなとS氏と高を括っていた。
北京行のエアチャイナの搭乗時刻になり我々はゲートに向かったのだが、入口でチケットを見せると女性グランドスタッフが「北京行はあっちです!」と左手奥のゲートを指さした。同じ出発時刻だったので俺もS氏もちょっと勘違いしていたようだったので「了解了解!」みたいになって北京行のゲートに小走りで向かった。ところがそっちはバスに乗って飛行機まで行くゲートだったようで乗客はもうすでにバスに乗り込んでいるらしくゲートにはもう誰もいなかった。俺たちはちょっと出遅れた感じになっていたので少し慌てて男性グランドスタッフにチケットを渡すとちょっと待ってと何事かS氏と話していた。出遅れて焦ってパニくっていたこともありどうも話がうまく通じない。僕らが乗るのがこの飛行機じゃないのかとも思ったがそういうことでもないらしい。どうやらチェックインカウンターにS氏がプリントアウトした予約表を忘れてきてしまっているらしく、カウンターの女性から男性スタッフの電話に連絡があったらしかった。再度こちらから連絡しなおしその予約表はいらないから大丈夫ですという返事をして、僕らはゲートを抜けバスに乗り込んだ。どうやらスタッフがS氏に予約表を返し忘れたのが事の発端で、S氏ももう要らない予約表っていう頭があったので、貰い忘れてしまったらしい。出発直前のトラブルだっただけにかなり焦ってしまった。どこに落とし穴があるかわからない、最後まで気の抜けない旅だとここで気を引き締める。
バスは五分ほど走りエアバスの近くで僕らを降ろした。タラップは大混雑で強めの朝の風が乗客に吹き付けていて、太陽はまさに地平線から顔を出しはじめていた。こういう乗り込み方は気分がいい、まさに旅立ちっていう感じでワクワク感が半端ない。
北京行のエアチャイナはすこぶる順調、乗ってすぐに朝ごはんが出てきた。銀のホイルをめくると温かい朝粥、黍(きび)が少し入っていてすごく美味しい。そういえばミーセンばっかの朝メシがようやくここで終わる、だんだん現実に近づいていくのが感じられた。三時間ほどで翼の下には北京の街が現れる、天気は上々、降り立った北京の空港も暑くもなく寒くもないちょうどいい気候、この旅で服の選択が一度も間違ったことが無かったというのは画期的だったかもしれない。もっていった服が全く過不足なく活躍し、パンツも今はいているのが最後の一枚となっている。
それはどうでもいい
今回ここ北京での乗り換え時間はわずか一時間半、ここでミスするとえらいことになるので、とりあえずサクサクと行動することに徹した。預けた荷物を素早くピックアップし素早くチェックインカウンターをみつけ素早くバッゲージドロップ、出国審査も手慣れた様子で受け、もう女性入国審査官の過剰なボディタッチにも動揺しなくなっていた。羽田行のエアチャイナもエアバス、同じようにバスで移動しタラップでの搭乗になった。ここではじめて日本人ビジネスマンに会い、完全に少数民族が周囲にいなくなってしまった。

今回の旅の本当の目的とは何だったのか?途中から何となくうすうす感じてはいたものを俺はあえてそれを最後まで口にすることはなかった。
かみさんは帰ってから「中国に一週間も行っててなにしてたの」と問いかけるも俺は明確にそれに答えることができなかったし、実際どういう旅だったのか総括することがいまだにできていない。
ただこの旅行が俺の中で中国の旅の総仕上げだったってことは何となく感じているのだ。

出会ったことのない少数民族に出会うことはリアルポケモンゴーのような感覚が少なからずある。もっとすごい服を見たいだとか、もっと珍しい暮らしぶりを見たいみたいなことにはまっていくのはちょっと違うんじゃないかって旅の途中から疑問に感じてしまっていたのだ。
ありのままを見てありのままに受け入れる。そこにこうなってたらもっといいとか、このままでいてほしいとか、対象物に過度に感情移入するのはよくないってことがこの旅で何となくわかった気がした。
レアな暮らしぶりやレアな風景、レアな少数民族を探し求めて奥地へ奥地へと行くのはレアなポケモンを探しに立ち入り禁止場所に入って行ってしまうのに似ている。

帰ってきてからS氏から一度だけ連絡があった。「今度また雲南の行ってないところに行く予定になったよ」と言っていた。俺は「そうか、気を付けてな」とだけ言って、その後借りていたバックを奥さんに返しに行っただけで連絡していない。竹の背負いカゴは羽田行の飛行機の中でかなり邪魔者扱いされ、頭上のバッゲージスペースには収まらず、CAさん用のスペースに何とか入れてもらい羽田に無事到着した。

   かへりなんいざ 田園 まさに蕪(あ)れなんとす 胡(なん)ぞ帰らざる ……

畑を放り出して一週間がたった。軽井沢が恋しくなっていた。ただその前に東京の素晴らしくシステマティックな京成電車に感動していた。
やはり日本は素晴らしい国だ。外国人が褒めてくれるのもうなずける。ただ座っている乗客はどことなく疲れている気がする。みんなが目いっぱい働いてるから日本というこんなにも立派な国になっているのだろう。

   かえりなんいざ…

その前にお刺身が食べたくなった。来るときに泊めさせてもらった妹夫婦のマンションに行く途中で海鮮丼を食べた。この海鮮丼を食べ終わった瞬間に俺の中国旅行は終わったっていう気がした。っていうかそれを食べて日本を確認したのだ。とても美味しかった…



    終幕






  



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1 コメント

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