プルサーマル計画を憂慮する有志の会

原発問題に関して投稿します。

腑に落ちぬイタイイタイ病の「全面解決」

2013-12-18 11:05:55 | 日記
 「神通川流域カドミウム問題の全面解決に関する合意書」が、神通川流域カドミウム被害者団体連絡協議会と三井金属との間で交わされました。(患者さん側の悲願だったそうですが)「健康管理支援」名目での(60万円の)一時金がカドミウム腎症の患者さんに支払われ、三井金属が正式に「謝罪」しました。(以下・引用・参照は『朝日新聞』)長きに渡る裁判闘争や交渉・協議に、(最早これ以上協議し続けるのは困難だったのでしょう)1つの区切りがつきました。

 ただその「合意書」(要旨)ですが、(第2条2項)「・・・土壌汚染及び農業被害に関する問題は全て解決されたことを確認する」、(第3条2項)「協議会は、健康管理支援制度の創設をもって、健康被害及び健康影響に関する未解決の問題が一切解決したことを認める」、(第4条1項)「・・・合意書に定める義務を履行する限り、今後請求を行なわない」、(同条2項)「同社は協議会に対して、本カドミウム被害の全面解決に伴い、解決金を支払う」(同条3項)「両者は、本合意書の締結とその履行をもって、(神通川流域カドミウム問題が)全面的に解決したことを確認する」となっています。

 この繰り返される「全面解決」という文言に、(尽力された方々には申し訳ないのですが)とても「違和感」を覚えます。「全面解決に伴い」被害者団体に支払われた(賠償でも慰労でもない)「解決金」という文言も引っ掛かります。(金額は両者とも公表していません)元滋賀大学学長の宮本さんは、「これまで救済対象外だった患者に、原因企業から一時金が支払われることは一歩前進だが、それだけでは公害病の解決とは言えない」、「患者の救済を遅らせているのは、国の厳しい認定基準」で、(イタイイタイ病を含む)「公害病の認定対象を大幅に拡大すべき」だと指摘しています。本来なら患者として認定しなければいけない「患者」さんが、(骨粗しょう症を伴う骨軟化症の立証など)認定基準の壁に阻まれているのが現状です。

 ちなみに、これまでにイタイイタイ病の患者として認定がされたのは、わずか196人、(ご存命の方は3名だということです。また、要観察者と判定され認定されなかった患者さんは405人で、ご存命なのはお一人です。原因企業側は兎に角、この「合意書」で全て幕引きにしたいということなのでしょうが、多くの患者さんが取り残されたままの「全面解決」は、全く腑に落ちません。宮本元学長は、公害病の第1号として認定されたイタイイタイ病の(きちんと患者認定をした上での)「解決」を、現在及び今後の公害病の解決の「指標」とすべきだったと言われます。(勿論、これは国や企業の責任で、患者さんに求めるべきものではありません)イタイイタイ病だけでなく、原爆症でも、アスベスト禍でもそうなのですが、本来救済されなければならない患者さんの救済からは遠い「全面解決」のように思うのです・・・

P.S. 宮本さんは、「今の基準は、短期間の内に、高濃度の中毒になる『労働災害』をもとにしており、長期にわたって体内に汚染物質が入る『環境災害』の視点が生かされていない」と指摘されています。被曝に当てはめれば、放射性線による外部被曝だけで、内部被曝を(殆ど)考慮しない、今の「被曝」の見方に繋がります。(今日は触れませんが)原爆症の新基準を見ても分かります。(兎に角、患者認定を減らそうとの)恣意的な国の認定基準が、多くの患者さんを見捨ててきたということだと思うのです・・・

P.S.2 イタイイタイ病の認定基準には、「汚染地域に居住」とありました。問題はその汚染の「レベル」です。(数値のデータはないので分からないのですが)放射能汚染の数値から考えても、戦前の汚染の「定義」は、さらにもっと高いと想像できます。「汚染地域」以外の「汚染地域」が広大にあったと考えられます。水は流れます。汚染地域の上流でも、下流でも、当時は多くの方が飲用水として飲み、田畑に引いて米や野菜を作っていたはずです。(海にも流れます)こうして「限定」された汚染地域だけが「対象」となった認定基準があり、膨大な健康被害者を切り捨ててきたということだと思うのです・・・

P.S.3 嫁ぎ先の母親が激痛の中亡くなった若林さんは、イタイイタイ病資料館で「語り部」をされています。その若林さんは今回の「全面解決」について、「これで終わりではない。風化させてはいけない」と、今後も同公害の被害を語り継いでいかれるそうです・・・

by「プルサーマル計画を憂慮する有志の会」 (平成25年12月18日)