マンションの屋上から

八柱から、常盤平に向かって写した。
遠くまでゴチャゴチャ見えて、「あの先はどこだ？」って判らない、筑波山は分かる。

若い頃は海に行って、あの水平線の先には何があるんだろうと、夢にときめいたもんだ。
今はあんな遠くに行ったら、帰ってくるのが大変そうだと、疲れることばかり気にしてしまう。
若い頃の俺の一番嫌いなタイプの人間だ。
その日暮し、行き当たりばったり、いつでもすぐに行動。
そんな人間に憧れた。

旅に出て、知らない街を転々として、野たれ死ぬ。
それが俺の夢だった。
それが、松戸から一歩も出ないで今になった。
俺は俺の一番嫌いな人間になった。
こんな人間が名曲を作るなんて出来るわけがない。
ショパンは名言を残している。
「音楽家が旅をしなくなったら、音楽ができなくなる」

俺が旅に出ない訳？
理由は明白。責任感があるからだ。
家族や職場、多くの予定や約束・・・・。
それを馬鹿正直に守ってきたからだ。
責任感ほど、人間をダメにするものはない。
人を裏切り、人に迷惑をかけて、人から逃げてしまう。
そんな人間が一番生きている幸せを味わっていると思う。
一番人間らしい。俺の憧れ。
一生できない根性無し。