遠い昔、そう、物心がついたころ。
そのころの記憶、覚えているかい?
普通は殆ど忘れていると思う。
もしも、覚えていると言っても、おぼろげに・・いや、自分勝手に事実を曲げているかもしれない。
俺はある出来事を鮮明に覚えているんだ。
あの日はお正月だった。
近所の人が集まって、餅つきをした。
そして、突きたての餅をみんなで食べていたんだ。
俺は近所の友達と遊んでいた。
そんなときに突然近所のおばさんが大声で「どうしたのよ、なにやっているのよ・・」
その叫び声が聞こえた方を見ると、近所の人が全員が寄り添うように固まっていた。
俺はその様子を遠巻きに見ていたんだ。
そのうちにその人たちの中から、さかさまにされたおじいさんが出てきた。
おじいさんは口からあんこをダラダラと、垂らしていた。
そう、おじいさんはあんこ餅を喉に詰まらせたんだ。
みんなお騒ぎで背中叩いたり、揺さぶったりしていたけど、そのうちにおじいさんはピクリとも動かなくなってしまった。
救急車が来て、運ばれていった。
そのとき、臭ったんだ。
餅の匂いでもない、たき火の匂いでもない、独特な嫌な臭いだった。
おじいさんは亡くなった。
その後、ときどき、年に数回、あのときと同じ嫌な臭いがしたことがあった。
それは町の中、多くの人とすれ違う時に臭った。
俺が小学生のときに近所のおばさんと会ったときに、おばさんからその匂いがしたんだ。
おばさんは化粧香のような香水のような香りに混ざって、あの嫌な臭いがしたんだ。
その3日後、おばさんは亡くなった。
俺は子供心にあの匂いは死の匂いだと、気が付いたんだ。
その後も、時折、その匂いをかいだ。
時には老人、時には若い人と、様々だけど、だからって、その匂いを発する人が死ぬかどうかなんて、知りたくもなく、ただ臭うだけのことだ。
きっと家族や、身近な人から臭ったら、気を付けろとか、体の具合悪くないか?などと言うのが精いっぱいだろうけどな。
「あんた死ぬよ」なんて口が裂けても言えないよな。
そのころの記憶、覚えているかい?
普通は殆ど忘れていると思う。
もしも、覚えていると言っても、おぼろげに・・いや、自分勝手に事実を曲げているかもしれない。
俺はある出来事を鮮明に覚えているんだ。
あの日はお正月だった。
近所の人が集まって、餅つきをした。
そして、突きたての餅をみんなで食べていたんだ。
俺は近所の友達と遊んでいた。
そんなときに突然近所のおばさんが大声で「どうしたのよ、なにやっているのよ・・」
その叫び声が聞こえた方を見ると、近所の人が全員が寄り添うように固まっていた。
俺はその様子を遠巻きに見ていたんだ。
そのうちにその人たちの中から、さかさまにされたおじいさんが出てきた。
おじいさんは口からあんこをダラダラと、垂らしていた。
そう、おじいさんはあんこ餅を喉に詰まらせたんだ。
みんなお騒ぎで背中叩いたり、揺さぶったりしていたけど、そのうちにおじいさんはピクリとも動かなくなってしまった。
救急車が来て、運ばれていった。
そのとき、臭ったんだ。
餅の匂いでもない、たき火の匂いでもない、独特な嫌な臭いだった。
おじいさんは亡くなった。
その後、ときどき、年に数回、あのときと同じ嫌な臭いがしたことがあった。
それは町の中、多くの人とすれ違う時に臭った。
俺が小学生のときに近所のおばさんと会ったときに、おばさんからその匂いがしたんだ。
おばさんは化粧香のような香水のような香りに混ざって、あの嫌な臭いがしたんだ。
その3日後、おばさんは亡くなった。
俺は子供心にあの匂いは死の匂いだと、気が付いたんだ。
その後も、時折、その匂いをかいだ。
時には老人、時には若い人と、様々だけど、だからって、その匂いを発する人が死ぬかどうかなんて、知りたくもなく、ただ臭うだけのことだ。
きっと家族や、身近な人から臭ったら、気を付けろとか、体の具合悪くないか?などと言うのが精いっぱいだろうけどな。
「あんた死ぬよ」なんて口が裂けても言えないよな。