SHOUTS TO THE SOUL !!   岡崎 陽

根っからのネガティブ人間。
無能、ノミの心臓が語るブログ。

短編小説

2014年06月30日 08時36分41秒 | Weblog
          忘れ物

いつもの通勤電車の中。

もう30分以上立っている。

持病のヘルニアで腰が痛い。

駅で当駅始発電車を待つ余裕がなかった事が悔やまれる。

それもこれも、今朝目が覚めたのが遅刻ぎりぎりの時間だったからだ。

前に座る老人がそわそわと、カバンにメガネや、ポケトラジオを仕舞い込んでいる。

次の駅で降りる準備だろう。

俺はやっと座れるという安堵感でため息をついた。

駅に着くと、老人は足が不自由なようだ。

よろけながら席を立ち降りて行った。

俺は老人の座っていた席に早速座った。

数秒前まで座っていた老人の体温が残っている。

加齢臭のような、臭いも感じた。

そんなことよりも、座ったときに腰痛がスーッと消えた事に安堵したんだ。

そのまま、終点の上野駅についた。

俺は席を立とうとしたが、足に力が入らない。

手すりにぶら下がるように立って、足を引きずりながらホームに降りた。

老人が置き忘れた苦痛を拾ってしまったらしい。