スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

バリ島の温暖化防止会議(COP13)

2007-12-09 08:29:48 | コラム
バリ島では現在、国連気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)が開催され、温暖化対策を世界規模でどのように取り組んでいくか、具体的には京都議定書が規定している2012年以降をどうするかポスト京都)、が話し合われている。

これまで国際的な取り組みに協力姿勢を見せず、非難を浴びてきたアメリカオーストラリアだが、最近大きな変化が見られるという。先日、総選挙が取り行われたオーストラリアでは、温暖化対策も重要な争点となり、これまで長年政権に就いてきた保守党に代わって政権を獲得した労働党政権は発足後すぐ、京都議定書に署名した。また、アメリカも今年に入ってから温暖化対策に関する国際交渉の場に復帰する意思を示し始めてきた。だから、今回のCOP13では先進国間でより積極的な取り組みを行っていくためのコンセンサスが生まれることを願いたい。と同時に、中国やインドなどの途上国も排出規制に加わって欲しい。

会議に先立っては、
・EUとアメリカ・カナダの11州が温室効果ガスの排出量取引市場の共通化を打ち出したり、http://www.asahi.com/special/070110/TKY200710290264.html
・EUが2020年までの削減目標を90年比-20%に定め、さらに、他の先進国が同意すれば目標を-30%に引き上げることを提案したり、
http://www.asahi.com/special/070110/TKY200710310298.html
・EU議会が域内に乗り入れるすべての航空会社に対し、温室効果ガスの排出を規制し、排出権取引市場に参加させる法案を可決したり、
http://www.asahi.com/special/070110/TKY200711140038.html
・UNDP(国連開発計画)が07/08年版の人間開発報告書のなかで、2050年までに80%減を提案したり、
http://www.asahi.com/special/070110/TKY200711270399.html

また、会議開催中においても
・ドイツ議会が2020年までに最大40%減を目指す諸法案を可決した(具体的には、風力・太陽光の発電割合の上昇; 自動車税を排気量でなく二酸化炭素の排出量で課税する; トラックの高速料金を有害物質の排出量に応じて課金、太陽光暖房に対する補助金etc)
http://www.asahi.com/special/070110/TKY200712060085.html
(ちなみにドイツは2005年時点で18.4%の削減を果たしている。ただ、旧東独地域の産業構造変化による貢献分もあることに注意)

と、主にヨーロッパを中心に積極的な政策提案や取り組みが打ち出されてきた。

スウェーデンにいるとなかなか日本のニュースに疎くなるが、日本政府の取り組みはどうなのだろうか? 二酸化炭素税の導入には消極的、とのことだし、他に目に付いたニュースとしては
京都議定書の目標達成のため、ハンガリー政府から余剰枠を購入http://www.asahi.com/special/070110/TKY200711250158.html
というのがあるが、これは自国の取り組みだけでは1.6%分足りないので、ハンガリーからその分、購入するというもの。積極的な取り組み、とは全然関係ない。

また、会議開催中も「先進国は25~40%の削減をすべき」との議長案に対し、 「日本などは『削減数値が入ると協議がまとまらない。欧州連合(EU)は入れたいのかもしれないが、多くの国が受け入れられないはずだ』(交渉担当者)などと反発している。」とのことだ。
http://www.asahi.com/special/070110/TKY200712080214.html
これは、合意形成を達成するためには数値目標を入れないほうがいい、というあくまで会議の成功を意識した現実的配慮なのか、もしくは、具体的な方策を取りたくない、という本心からのコメントなのだろうか?

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ちなみに12月10日はノーベル賞の授与式だ。温暖化対策への訴えが評価されたゴア氏とIPCCが平和賞を受賞した。この授賞式が、COP13の国際会議と時を同じくして行われることは大きな意味があることだろう。国際交渉に対する何かしらの圧力になってくれればいいが。(ゴア氏はノルウェーの後でCOP13にも顔を出すらしい。)


手がやけにでかいなぁ

ゴア氏は金曜日にノルウェーのオスロに到着した。国際空港からオスロ市内まではリムジンではなく、空港特急(鉄道)を利用したとのこと。パフォーマンス好きな彼らしい、と一笑する人もいるだろうが、彼のコメントにも一理あることを認めるべきだろう。彼曰く「空港特急のほうがタクシーやリムジンよりも速くて快適だと、私のノルウェー人の友達が教えてくれた。それに、これで環境汚染の防止に少しでも貢献できる。」

あと、私なら鉄道のほうが安いことも付け加えたい(空港バスはさらに安い)。だから、スウェーデンにしろノルウェーにしろ、日本にしろ、急いでいる場合を除いたら、市内と空港との行き来に タクシーやリムジンを使う必要など、全くないのではないだろうか?(要人の安全保証は別問題だが) だから、平和賞以外の賞が授与されるストックホルムでも、受賞者一行には空港からArlanda Express(空港特急)で来てもらうようにしたらどうだろう。

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1 コメント

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まったくもって (しょう)
2007-12-09 16:14:07
 このたびも数々の貴重な情報ありがとうございます。一市民としても一教職員としても大変参考になります。 
 それにしても、各国の積極的な動きにたいして、日本政府の対応はまったくもって情けない状況ですね。
自民党税制調査会では「環境税の08年度導入」の見送りが決定しました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071129-00000079-mai-pol
 しかし、この情けない状況から出発するしかないのも事実です。当面、道路特定財源の「上乗せ税率」の延長問題が争点になります。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071207-00000918-san-pol
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071205-00000117-mai-pol
 このあたりの状況を踏まえて「道路特定財源の環境税化」を強く主張していくことが大切ではないかと思っています。すでに約20名が連名で「要望書」の提出も行いましたが、さらに強い意思表示をしていく予定です。
 スウェーデンでの「炭素税論議」についても、教えてくださいね。
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