スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

朝日新聞(5月12日)「原発を突き放す国の『常識』」

2011-05-13 00:43:56 | コラム
5月12日付の朝日新聞・朝刊をご覧ください。
14ページ目の社説余滴という欄に「原発を突き放す国の『常識』」という記事が掲載されています。スウェーデンで取材された論説委員の記者の方の記事です。

スウェーデンの現在のエネルギー政策のあり方として、再生可能エネルギーを国が経済的にも積極的に後押ししながら「持続可能な社会」の構築に向けた道しるべを示し、一方で原子力に関しては「国は一切支援はしないけれど、電力会社がコストの面で割に合うと考えるのであれば、新規原子炉の建設を政府として止めはしないよ」という、冷めた態度を取っていることが分かりやすく説明されていると思います。

※ ※ ※

以下は、この記事に関連して私が考えたこと。

原子炉の新設の是非に関する議論とは少し離れるが、このように国が市場の枠組みを整備した上で、実際の行動の判断は各経済主体に任せるというやり方は、スウェーデンの様々な政策に一貫している哲学とでも呼べるものかもしれない。

環境税(二酸化炭素税)や、所得税をはじめとする各種税制、さらには空き缶・ペットボトルのデポジット制度などもそうであるが、国がまず望ましい社会のあり方(持続可能な社会、とか、化石燃料をなるべく使わない社会、とか、より多くの人が労働市場で働く社会、etc)を示し、人々がそのような行動を取ればその人にとって経済的に得になるような誘因(インセンティブ)を制度の中に埋め込んだ上で、あとは各経済主体の判断に任せる、というやり方はスウェーデンが非常に得意とするところだ。

上記のエネルギー政策においても、原発を絶対作ってはだめとか、既存のものをすぐに廃炉にしろ、とは言っていない。そうではなく、スウェーデン政府は、原子力産業には一切お金を与えない一方で、再生可能なエネルギーには積極的な経済的支援を行っているのである。つまり、市場における価格やコスト構造に国として手を加えて「望ましい」フレームワークを整備したうえで、あとは各経済主体(この場合、電力会社や新規参入者など)のコスト意識に任せて行動を選ばせる、というものだ。

「個人」の意思決定に主眼を置いた政策設計とでも言えるだろうか。

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