クリスマスの頃から続いていた寒波は年を明けてからさらに勢いを増し、ここヨーテボリでも零下15度に達するほどの寒さとなっている。雪も10~20cmほど積もっているが、寒さのために解けることがなく、小麦粉のように乾燥している。
スウェーデンでは、寒さは大きな問題ではない。建物の中は屋内全体を暖めるセントラルヒーティングだから屋内にいる限りは暖かいし、外に出るときの寒さも多くの人が慣れている。
それに対し、いま一番の問題は電力価格の高騰だ。スウェーデンの家庭では電気を直接熱に変えるタイプの暖房は90年代以降かなり減ったものの、いまだに使い続けている家庭もあり、寒さとともに電気の使用量が大きくなる。もしくは、熱源に電気を使わなくても暖房の空調を動かすために電気がいる。だから、今の厳しい寒波にあわせて電力需要が増え、価格が高騰している。
いや、正確に言えば、クリスマスから新年の最初の頃まではよかった。家庭の電力需要は高かったものの、鉄鋼や紙パルプなどの産業が休みだったために工業部門の電気需要が低かったからだ。しかし、今週月曜日に工業の生産活動が再び動き始めてから、電力の供給が需要に追いつかなくなってきた。結果として、電力価格が高騰する。昨年12月の平均電力価格が1KWhあたり0.50クローナだったが、今週水曜日には1.26クローナまで急騰した。
例年、ここまで大きな価格上昇はない。しかし、この冬は原発の一部が稼動を停止したり出力を落としているために、発電量が大きく減少しているのだ。スウェーデンには原発が10機あり、電力供給の約40%を賄っているため、原発の停止や出力低下は、国内の電力供給量に大きな影響を及ぼす。クリスマスの頃には複数の原子炉が停止していたために、10機の出力合計が通常の55%しかなかったというし、現在も2機が完全停止、そしてさらに2機が出力を大幅に落として運転している。
では、停止や出力抑制の原因は何かというと、メンテナンスや改良工事のためというではないか! 冬の寒さのために電力需要が増えると分かっているこの時期になぜ?と耳を疑ってしまう。スウェーデンやノルウェーでは毎年、春先に雪解け水のおかげで水量が増えて水力発電の発電量が大幅に上昇するから、その時期に原発のメンテナンスを行うものなのだけど。
だから、スウェーデンでも「意図的なものではないか」という憶測が囁かれている。というのも、発電量をこの時期わざと減らすことで電力価格を高く吊り上げることができ、収益がその分ふえることになるからだ。
この憶測が正しいかどうかは別として、現状の需給の不足分を補うために、ドイツなどから電力を輸入せざるを得ない事態に至っている。さらに、普段は使用しない予備発電施設の稼動も始まっている。スウェーデンでは石炭・石油・天然ガスを使用する火力発電は通常ほとんど使われていないが、この予備発電施設はこれらの化石燃料で稼動されるため、CO2の排出が増えることになる。
もう一つ、私自身が思っている憶測が別にある。スウェーデンでは最近、電力業界の原発ロビーが勢いを盛り返しており、政府や世論に対して「原発を増設すべき」というようなことを主張している。しかし、実際のところ、スウェーデンの年間の電力生産量と電力消費量はほぼ一致しているため、一時的な供給不足を補うために他国から電力を若干輸入するのを除けば、電力はほぼ国内で自給できているといってよい。だから、電力供給量を今以上に増やす必要性はほとんどない。むしろ、現在は風力発電所が各地で新設され、生産量が急激に増えているため、今後は電力が供給超過の状態になると見られている。原発ロビーが時たま「原発を作れば、スウェーデンはドイツの石炭火力で作られた電力を輸入する必要がなくなる」などということを言っているが、これも根拠の薄い主張なのだ。
だからこそ彼らは、世論や政府に訴えかける強力な論拠を必要としている。もし現状のように国内での電力供給が減り、他国から電力を輸入せざるを得ず、さらに化石燃料を利用した予備発電施設を稼動させないとならなくなれば、世論は「やっぱりスウェーデンは電力が足りていないんだ」というような印象を持つようになるかもしれない。そうすると、原発増設の主張も受け入れやすくなる・・・。
果たして、そんな目論見があって、発電量を減らしているのかどうか、本当のところは分からないが、スウェーデンにおける電力需給の現状をあまり知らず、現在の高い電気料金ばかりを気にする人であれば、そのような主張に流されるようになってもおかしくないだろう。
スウェーデンでは、寒さは大きな問題ではない。建物の中は屋内全体を暖めるセントラルヒーティングだから屋内にいる限りは暖かいし、外に出るときの寒さも多くの人が慣れている。
それに対し、いま一番の問題は電力価格の高騰だ。スウェーデンの家庭では電気を直接熱に変えるタイプの暖房は90年代以降かなり減ったものの、いまだに使い続けている家庭もあり、寒さとともに電気の使用量が大きくなる。もしくは、熱源に電気を使わなくても暖房の空調を動かすために電気がいる。だから、今の厳しい寒波にあわせて電力需要が増え、価格が高騰している。
いや、正確に言えば、クリスマスから新年の最初の頃まではよかった。家庭の電力需要は高かったものの、鉄鋼や紙パルプなどの産業が休みだったために工業部門の電気需要が低かったからだ。しかし、今週月曜日に工業の生産活動が再び動き始めてから、電力の供給が需要に追いつかなくなってきた。結果として、電力価格が高騰する。昨年12月の平均電力価格が1KWhあたり0.50クローナだったが、今週水曜日には1.26クローナまで急騰した。
例年、ここまで大きな価格上昇はない。しかし、この冬は原発の一部が稼動を停止したり出力を落としているために、発電量が大きく減少しているのだ。スウェーデンには原発が10機あり、電力供給の約40%を賄っているため、原発の停止や出力低下は、国内の電力供給量に大きな影響を及ぼす。クリスマスの頃には複数の原子炉が停止していたために、10機の出力合計が通常の55%しかなかったというし、現在も2機が完全停止、そしてさらに2機が出力を大幅に落として運転している。
では、停止や出力抑制の原因は何かというと、メンテナンスや改良工事のためというではないか! 冬の寒さのために電力需要が増えると分かっているこの時期になぜ?と耳を疑ってしまう。スウェーデンやノルウェーでは毎年、春先に雪解け水のおかげで水量が増えて水力発電の発電量が大幅に上昇するから、その時期に原発のメンテナンスを行うものなのだけど。
だから、スウェーデンでも「意図的なものではないか」という憶測が囁かれている。というのも、発電量をこの時期わざと減らすことで電力価格を高く吊り上げることができ、収益がその分ふえることになるからだ。
この憶測が正しいかどうかは別として、現状の需給の不足分を補うために、ドイツなどから電力を輸入せざるを得ない事態に至っている。さらに、普段は使用しない予備発電施設の稼動も始まっている。スウェーデンでは石炭・石油・天然ガスを使用する火力発電は通常ほとんど使われていないが、この予備発電施設はこれらの化石燃料で稼動されるため、CO2の排出が増えることになる。
もう一つ、私自身が思っている憶測が別にある。スウェーデンでは最近、電力業界の原発ロビーが勢いを盛り返しており、政府や世論に対して「原発を増設すべき」というようなことを主張している。しかし、実際のところ、スウェーデンの年間の電力生産量と電力消費量はほぼ一致しているため、一時的な供給不足を補うために他国から電力を若干輸入するのを除けば、電力はほぼ国内で自給できているといってよい。だから、電力供給量を今以上に増やす必要性はほとんどない。むしろ、現在は風力発電所が各地で新設され、生産量が急激に増えているため、今後は電力が供給超過の状態になると見られている。原発ロビーが時たま「原発を作れば、スウェーデンはドイツの石炭火力で作られた電力を輸入する必要がなくなる」などということを言っているが、これも根拠の薄い主張なのだ。
だからこそ彼らは、世論や政府に訴えかける強力な論拠を必要としている。もし現状のように国内での電力供給が減り、他国から電力を輸入せざるを得ず、さらに化石燃料を利用した予備発電施設を稼動させないとならなくなれば、世論は「やっぱりスウェーデンは電力が足りていないんだ」というような印象を持つようになるかもしれない。そうすると、原発増設の主張も受け入れやすくなる・・・。
果たして、そんな目論見があって、発電量を減らしているのかどうか、本当のところは分からないが、スウェーデンにおける電力需給の現状をあまり知らず、現在の高い電気料金ばかりを気にする人であれば、そのような主張に流されるようになってもおかしくないだろう。
ニュースをいつもわかりやすく訳して頂き
ありがとうございます。
語学がなかなか覚えられないので、YOSHI様の
ブログを毎日拝見させていただいています。
まだまだ寒い日が続くようですね。
お体に気をつけてお暮らしください。
寒い日が続きますね。でも、私としてはかなり気に入っています。今週は気温も二ケタから一ケタ台に上がるみたいですね