スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

Vatternrundan 2008 (3) 天気も体調も絶好調

2008-06-19 03:04:11 | Vatternrundan:自転車レース

Grännaのデポにて(07:10頃)

80km地点であるGrännaのデポ(サービスステーション)を出発し、まもなくしてから、63歳のLarsが「先に行ってくれ」と言い残して脱落していった。その代わり、我々よりも2分前にスタートしていたSub-11グループから脱落したKimberlyという女の子が我々の隊に加わることになった。

時間は朝7時半頃。地面と大気の気温差のせいか、国道の両側に広がる農地からは湯気があがり、地表近くに立ち込めている。途中の上り坂を登りきり、下り坂を滑降すると、気温が急激に下がるのが分かる。高地と低地の温度差がもろに肌に感じられるのだ。

ヨンショーピン(Jönköping)の手前に大きな峠があるが、私は今年も上り坂が絶好調だ。そういえば最近何かで読んだのだが、体重が軽い人ほど登りが楽で、逆に重いと大変なのらしい。当然のことなのかもしれないが、考えたことがなかった。そんな考えを頭によぎらせながら隣を見ると、私の2倍は体重がありそうなMagnusという大柄の男性が苦戦していた。「Kämpa på! Bara lite till och sen kommer nedförsbacke hela vägen till Jönköping!(頑張れ、あともう少し! この坂が終われば、あとはヨンショーピンまでずっと下り坂)」と励ます。

その反面、私は下り坂が嫌いだ。スピードが出過ぎて怖いのである。だから、いつも慎重になる。そんな私の横をさっきのMagnusが軽快に追い越していく。なるほど重いとそのぶん重力の効果も大きいのか! と納得。

Jönköpingのデポ(109km地点)は通過。5回目の出場にして始めてこのデポを飛ばした。その直後にもまた大きな峠があり、それをクリアしてから数分のkisspaus(トイレ休憩)道端で取る。その後は高地を走っていくことになる。

それにしても、既に70km地点から上り坂で遅れを取るようになっていたEijaが、ちょっとした坂でもすぐに遅れるようになってきた。彼女の前に間が開くと「間隔が発生!!!」と後の者が声を上げて前方に伝える。すると隊の最前列の者はスピードを落とす。

この辺りの区間では、私は毎年のように睡魔に襲われる。寝不足だし、向かい風と上り坂でなかなかスピードが上がらず疲労が激しいためだろう。しかし、今回はこうしてグループで隊列を組んで走っているので、風の抵抗も少ないし、お互いに声を掛け合っているので、眠気なんて全然感じない

ペースが多少乱れつつも140km地点のFagerhultのデポに到着。8分ほど休んで再び先を急ぐ。


Fagerhultのデポにて(09:31頃)

Fagerhultを出てからは、Kristina(クリスティーナ)という女の子が隊列の一番後ろでgrindvakt(門番)役を務めてくれた。我々の隊以外のサイクリストが隊列に紛れ込むと「我が隊の後に付いてくれないか?」と促すのである。それから、回転運動を取りながら最後尾に達したメンバーに対しては「Du är sist, flytta till vänster!(君が最後だから左列に出るように)」と指示もするのである。門番役は言ってみれば「殿(しんがり)」でもある。それに、隊列が乱れてきたり、間隔が開き始めたりすると、てきぱきと指示を発する、いわば司令塔でもある。

走行速度は、平坦な道であれば時速35km前後で、そして下り坂では時速45kmを超えながら軽やかに進んでいく。あるとき、後方を一瞬だけ振り返ってみると、我々16人の二列縦隊の後ろに50~100人ものサイクリストが連なっていた。まるで「スイミー」のようだ。私は例年この「金魚の糞」の側にいるのに、今回はその先頭部分にいる。機関車のように皆を引っ張っていくのは非常に気持ちがよい。


司令塔であり殿(しんがり)を務めるKristinaと、大柄なMagnus

そんな我々の横をたまに「新幹線」集団が一列で、中央分離線ぎりぎりを走りながら、軽やかに追い越していく。あるときは「アメンボ」のような物体が「Höger!!!(右手に寄って)」と叫び声を上げながら、超高速で我々の横をすり抜けていった。思わずあっけに取られてしまったが、よく見ると体を横にして漕ぐ、車高の低く幅の小さい自転車だった。この手の自転車での出場はてっきり禁止されているのかと思ったけれど、そうではないようだ。しかし、事故になりやすいのではないかと心配だ。

天気が非常に良い。右手にはVättern湖が輝いている。前方には農園と森が果てしなく広がっている。あの地平線の向こうまで、このまま何百キロでも走れそうな、そんな気分がした。



【続き】
Vatternrundan 2008 (4) 後半戦のドラマ

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