スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

2号機、核燃料が炉外漏出か(英紙ガーディアン)

2011-03-30 22:49:20 | コラム
イギリス・ガーディアン紙によると、2号機の燃料棒の溶融した一部が漏出しているという可能性があるとのこと。日本の原子力安全・保安院はこの可能性までは言及してこなかったが、スウェーデンの放射線安全庁はすでに先週金曜日(3月25日)の段階で、その可能性が十分にありうるとの見解を述べていた。

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福島2号、核燃料が炉外漏出か 英紙で専門家指摘

 29日の英紙ガーディアン(電子版)は、福島第1原発2号機で、核燃料の一部が溶融して原子炉格納容器の底から漏れ出しているとみられると、複数の専門家が指摘しているとし、現地での大量の放射線放出の恐れが高まっていると報じた。

 2号機では建屋内で高い放射線量のたまり水が見つかった。原子力安全委員会は原子炉圧力容器が破損した可能性があり、溶融した燃料と接触した外側の格納容器内の水が直接流出したとの見方で、燃料自体の漏出までは言及していない。

 同紙によると、福島原発の原子炉を開発した米ゼネラル・エレクトリック(GE)社で福島原発建設時に同型炉の安全性の研究責任者を務めた専門家は、少なくとも溶融した燃料が圧力容器から「溶岩のように」漏れ、格納容器の底にたまっているようだと説明。

 その上で同紙は格納容器も爆発で破損し、核燃料が容器外に出ている可能性を示唆した。(共同)
2011/03/30 18:42 【共同通信】

イギリス・ガーディアン紙原文 "Japan may have lost race to save nuclear reactor"

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もう一つは、読んでとても悲しかった記事。

朝日新聞 2011年3月29日5時30分
福島の野菜農家が自殺 摂取制限指示に「もうだめだ」

 福島県須賀川市で24日朝、野菜農家の男性(64)が自宅の敷地内で首をつり、自ら命を絶った。福島第一原発の事故の影響で、政府が一部の福島県産野菜について「摂取制限」の指示を出した翌日だった。震災の被害に落胆しながらも、育てたキャベツの出荷に意欲をみせていたという男性。遺族は「原発に殺された」と悔しさを募らせる。

 自宅は地震で母屋や納屋が壊れた。ただ、畑の約7500株のキャベツは無事で、試食も済ませ、収穫直前だった。遺族によると、男性は21日にホウレンソウなどの出荷停止措置がとられた後も「様子をみてキャベツは少しずつでも出荷しないと」と話し、納屋の修理などに取り組んでいた。

 23日にキャベツの摂取制限指示が出ると、男性はむせるようなしぐさを繰り返した。「福島の野菜はもうだめだ」。男性の次男(35)は、男性のそんなつぶやきを覚えている。「今まで精魂込めて積み上げてきたものを失ったような気持ちになったのだろう」

 男性は30年以上前から有機栽培にこだわり、自作の腐葉土などで土壌改良を重ねてきた。キャベツは10年近くかけて種のまき方などを工夫し、この地域では育てられなかった高品質の種類の生産にも成功。農協でも人気が高く、地元の小学校の給食に使うキャベツも一手に引き受けていた。「子どもたちが食べるものなのだから、気をつけて作らないと」。そう言って、安全な野菜づくりを誇りにしていたという。

 遺書はなかったが、作業日誌は23日までつけてあった。長女(41)は「こんな状態がいつまで続くのか。これからどうなるのか。農家はみんな不安に思っている。もう父のような犠牲者を出さないでほしい」と訴える。(西堀岳路)

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11 コメント

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Unknown ( )
2011-03-31 10:45:34
自分は最近欧米諸国の"自殺は罪"という考え方が理解できるようになった。この男性は気の毒だとは思うけど、程度はどうあれいずれは政府から支援かあるはずなんだし、なんたって家族がいるんだから、なんとか生きていくべきだったと思う。もっとも、この男性の事情とか心情は赤の他人から推し量りきれないものだから、この男性個人を非難するのは間違いだけど、でも社会が彼が自殺したことを擁護したり、東電が彼を自殺させた、と考えるのは間違いだと思う。
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なぜこのような (つつじ)
2011-03-31 11:17:18
東北の片田舎で原発の危機におびえながら暮らしています。
この農家の自殺を擁護したり、東電が自殺させたなどと語る人は誰1人いません。
ご遺族も何も語っていません。
どうして独りよがりに勝手なコメントを書くことができるのですか。
見ず知らずの人から気の毒だなどと思われたくもないはずです。
政府からの支援がなんだというのですか。
貴殿は死者に対して失礼です。
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死にたくて死んだわけではない (つつじ)
2011-03-31 14:26:17
絶望して死ぬしかないと考えるまで追い詰められた農家の気持ちを理解することなく、"自殺は罪"と切り捨てられる人の気持ちがわかりません。

大震災、巨大津波、さらに原発事故。
情報の混乱、日常品の不足、例年にない寒さ。
水道水汚染、土壌汚染、大気汚染。

必死に生きようとしてもがいてももがいても襲ってくる不吉な兆しに絶望するしかない人のことをそんなふうに勝手に解釈しないでほしい。

なんとかして一刻も早く原発の危機を終息してほしい。しかしもう二十日も過ぎようとしているのに事態は悪化する一方で光が見えない。
この大きな不安を理解できないその感性が信じられません。
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汚された土 (midori)
2011-03-31 15:00:24
はじめまして。遠国からの情報、頼りにさせていただいております。

私もこの農民男性の自殺には胸が痛みました。この方は長年有機農法を実践して来られたそうです。つまり、長い年月をかけて御自分の畑の土を育てて来たのです。

作物そのものよりも、その土が彼の手塩に掛けた子供であり、掛け替えのない仲間のようなものであったのだろうと思います。それが半月足らずのうちに、取り返しのつかないもので汚染されてしまいました。畑の土はただの土ではないのです。簡単に代替えの利くものではありません。

仮に補償が受けられても、汚染された畑の土をすべて取り替えて、元のような土に戻すには気の遠くなるような時間と作業が必要でしょう。そして、今の事態が続く限りはそれに着手するともできません。

ただご冥福をお祈りするばかりです。

(すでに私の住む地域でも土も水も空気も徐々に汚染されて来ています。テレビに出てくる専門家の方々は「この程度ではまだ健康には影響はない」と言われるのですが・・・)
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Unknown (blue_water)
2011-03-31 23:09:53
>自殺は罪
「生きてさえいれば」という主旨であれば
悪意に基づくものではないと思うのですが
その人が抱える苦しみは相対化できないですしね…。

ただイスラムやキリスト教社会の場合は、
戒律や罰への恐れや、個人でどうしようもない問題は
最後には神に丸投げできるという宗教的な問題以外にも、
より現実的なレベルの話として、喜捨や社会的な相互扶助の
システム(自殺を防ぐセーフティーネット)がある部分が
大きい気がします。だから死なずに済むというか。

もちろんより厳格なイスラム国家でさえも
大きな格差や賎民への差別、爆弾テロや殉教など実質的な
自殺は存在しているように、全ての問題に機能しているわけ
ではないし、宗教的な色合いの強い社会が善としてしまうと
浅いグローバリズムになるので決して思わないけれど。

人は他人の苦しみを100%理解できるとも思えないので
亡くなった方のことを想像しようとすればするほど
ご冥福を…とは簡単には言いにくい部分もありますが
こういう問題は何とかならないのか、とは強く思います。

私も阪神淡路で被災して家を失いましたが
津波も原発問題もなかった分、はるかにマシでしたし。
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Unknown (blue_water)
2011-03-31 23:13:39
>原発
たった2ヶ月で流れは180度変わった観がありますが、今年の1月25日の
読売新聞で「環境先進地・北欧を歩く 核最終処分場建設着々と」
という題で、"先進的な"北欧各国の取り組みに日本も習え…という
よくある感じの特集記事がありました。

その記事中で、スウェーデンでも処分場誘致を決めたエストハンマル市の
副市長へのインタビューを通して、再生可能エネルギーの遅れで世論の
75%が原発利用を肯定(過去のエントリでも言及されているように思想や
立場によって異論あると思いますが)に至った流れや、そのために行った
情報公開などの取り組みの解説がありましたが、
現在はどのような感じになっているのでしょうか。

世界的な空気としては脱原発という流れに傾いているように、個人的には
感じますが、化石燃料やバイオディーゼルへの依存が増すのはCO2や窒素
酸化物などの面で問題もあります。
また露などの影響力が増す政治的な問題もあるし、再生可能エネルギーも
コストや風力発電などのように環境への負荷の問題を思うと、どれも
マジックバレットではならず…道は遠い気はします。

個人的には被災地の方への負担はもちろんのこと、事故発生時のコストから
考えても代替エネルギーの普及や、脱原発が加速して欲しい気はしますが…
スイスでの爆弾騒ぎのように過激な暴力や、原発推進派のレッテル貼りや
攻撃に執心する環境原理主義的な思想、偏った思想を掲げる政治団体を
利することになる面もあると思うと正直、危惧もあります…。
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Unknown ( )
2011-04-01 01:06:31
一つ目のコメントを投稿した者です。批判を受けて自分のコメントの陰惨さに気づいて後悔しています。

自殺はすべきでないという考えは変わりません。この考えは自分の経験から得ました。自分もかつてかなり辛い時期があり、何度か自殺を考えたことがあります。こういう時期は外側のどんなものもなんら頼りと思えず、とにかく今は生きようというかすかな意思だけが命綱でした。峠を越して振り返ってみると、今自殺など考えず生きているのは、何か状況が劇的に変わったからでなく、あの時生きようと思ったからに他ならないという気がしています。欧米の"自殺は罪"という考え方はここから来ているんだと思います。つまり、自殺は罪だ、と自殺する人を切り捨てるぐらいじゃないと乗り越えられない時期というのはあるんです。"自殺は罪"という考え方はその時の為の心理的防衛なんだと思います。受けた批判の中に「必死に生きようともがいてももがいても襲ってくる不吉な兆しに絶望するしかない人の気持ちが理解できないのか」というものがありますが、自分が批判したいのはまさにこういう意見です。この意見は「必死に生きようともがいてももがいても襲ってくる不吉な兆しに絶望するしかない人は自殺してもやむ方ない」という、暗に自殺を擁護する意見だと思います。これは間違いだと思います。例えどんな状況でも生きなくてはいけないという原則があると思います。

一方で、自分の書いたコメントはあたかも自殺したこの男性が罪人であるかのような書きぶりで、これは完全に間違いだったと思います。また、男性が大変な苦境にいたことをもし自分が本当に理解していれば、男性が自殺したという記事のコメント欄の中で自殺という行為の云々について書き込んだりはしなかったはずだと思います。明らかに理解を怠りました。男性や遺族の方に申し訳なかったと思っています。
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Unknown (つつじ)
2011-04-01 10:22:41
私は自殺を肯定するためにコメントしたのではありません。
間違えないで下さい。
短絡的に結論づけないでください。
新聞記事の1つを読んだぐらいで、他人の自殺を否定したり肯定したりする前に、よく状況を理解し、その人の心情に寄り添ってやったらどうかと言いたくてコメントしただけです。
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危機は続く (つつじ)
2011-04-01 10:53:41
東北のとある原発のビジターセンターで説明を受けたことがあります。

英国のブレア元首相が、福島原発事故を受けて、原子力エネルギーをクリーン・エネルギー源として利用することに、偏見を持つべきではないなどと言ったそうですが、原発はクリーンではありません。

原発内で使ったら、ぞうきん一枚すら放射性廃棄物で簡単には処分できない現状をビジターセンターの係員が正直に説明してくれました。

原発は発電はしますが、発電を続けるためには常に電力が必要です。
発電量の何割かは自己消費で、今回のような事故が発生したら外部から電気の供給がないと危険物以外の何ものでもなくなります。
原発実は、非効率的な発電システムなのではないですか。

ではなぜ地球温暖化の切り札みたいな扱いになったのか。
マスコミの力が大きいと思います。

東電会長の記者会見の折、原発爆発当日何をしていたか記者に聞かれて、複数の大手マスコミ幹部OBと一緒に中国に旅行していたことが露見しました。旅費はほぼ全額東電負担だそうです。マスコミ対策は、東電経営陣の大きな仕事の1つだったようです。

この地にいるかぎり、もしかしたらまもなく国からヨウ素安定剤の服用を義務づけられるかもしれません。

福島県内の大学では、入学辞退者が相次いでいます。難関だった医科大学の入学者にまで辞退者がいるのです。理由は放射能というのが大半。

クリーンエネルギーがほしい?
その前に電力使用量を減らしたらいい。
こんな小さな島国で生きているという現実を考えたら、ないものねだりはしない方がいい。
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Unknown (Yoshi)
2011-04-02 07:29:35
化学肥料や農薬などを使わず30年以上もかけて土壌改良を行い、化学物質を含まず安心して食べられる農作物を消費者に提供しようとしてきたこの農家の方の思いが、放射性物質の拡散によってすべて水の泡になったことを知ったときの、この方の気持ちというのは想像を絶します。今回の地震・津波に伴う災害で、これまで長い間築いてきた生活基盤を根こそぎ奪われた人は、この方だけではもちろんありません。ただ、もっと苦労している人がいるとかいないとかという比較の問題ではなく、いろいろな形で影響を受け、苦労している人たちがいるということに耳を傾けるべきだと思います。

こと、原発の問題に関しては、これまで安全性のみを強調し、このような事態に絶対に至らないと主張し、その一方で隠れたところでは安全性の確保をないがしろにしてきた人たちがいることも震災後の報道などで明るみになってきています。そのような人々に、命を絶ったこの農家の方がどのような思いだったのかをしっかり考えてもらいたいです。

自殺は罪、という考え方は私自身はいまいちピンと来ません。欧米やキリスト教圏といっても一口に言い切れない部分もたくさんあります。もしかしたら、自己責任の考え方が強い、ということかもしれませんが、一方で「自殺は本人だけの問題に帰してしまうのではなく、それをとりまく社会の問題でもある」という考え方をスウェーデンで生活する中で強く感じるように思います。
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