スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

小説 ”I Taket Lyser Stjarnorna”(天井にかがやく星たち)

2005-01-25 07:38:23 | コラム

成人高校での「スウェーデン語B」で現代作家の小説を指定され、電車に乗りながら読んでいる。タイトルは ”I Taket Lyser Stjärnorna”(天井にかがやく星たち)といい、13歳の女の子が主人公だ。青少年文学といった感じで、とても読みやすいのだけれど、あなどってはいけない。テーマは重い。彼女のお母さんは乳ガンで日々弱っていく。その女の子とお母さん、そして周りの友人を巻き込んだ物語で、思春期の子供の感情を斬新な表現で見事に書き上げている。特に母親とのやりとりを書いた部分は涙なしには読めない。今日も、比較的混んだ電車の中で読んでいたら、思わず涙が出てきて恥ずかしくて仕方がないので、目を閉じて寝たふりをしていたら、いつの間にか本当に寝てしまっていた。

この小説はスウェーデンでの新人賞(直木賞だっけ?)に当たる「アウグスト賞」を2003年にとっている。作者は書いた当時20歳。小耳に挟んだところによると、彼女も母親をガンで失っており、その経験を三人称で書いているのだそうだ。だからこんなにありありと書けるのかと感心する。

印象に残る文章:
(母親との絆の象徴である蛍光色の星が、次第に衰弱していく母親の病室の天井に張られているのを見て娘がいう)
「ほとんど見えないじゃない。暗くなったときにしか存在しないよ。」イェンナ(娘)は母が首を振った気がした。「そうじゃないんだよ。」と母はいう。「実際には目に見えなくても、ちゃんとそこに存在する物もあるんだよ。心に留めておきなさい、イェンナ。」


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最近は寒いせいもあって、おなかが常に空いてしょうがない。一回にたくさん食べて満腹感が持続するようにしたいのだけれど、腹が減ってイライラしてくる。出費を減らしたいので、外での「買い食い」は極力減らしたいのだけれど、おなかが空いては頭も回らなくて眠くなるだけ。

背が高いくせに、朝はシリアルにヨーグルト、昼は軽くチョコチョコっと、夜もチョコチョコっとしか食べないでいて、平気な顔をしているスウェーデン人の友達が信じられない。彼らにとって、暖かい食事は一日に1回か2回取ればそれで満足なのだそうだ。日本ではたいてい一日3食とも、火の通った温かい食事をとり、簡単なサンドイッチやシリアルで済ますことはあまりない。僕が日本に住んでいたときに、朝食に温かいご飯と、目玉焼き、焼いた魚またはソーセージ、それにみそ汁を食べていた話をすると、あぁ可哀相に日本人は一日1食しか食べないのね、といった反応を示した人がいたけれど、いやいや朝食は一日の始まりに過ぎず、ちゃんと昼食も夕食も食べていることを念を押しておく。スウェーデン人の耳には日本人の朝食は、豪華な夕食のように聞こえるようだ。(ちなみに、スウェーデン人がチョコチョコとしか食べないと書いたのは、彼らがいつもチョコレートばかり食べているという意味ではなく、あれっもう終わったの? と人の気がつかないくらい早い食事の取り方をすること。量も少ない。)

最近は、あぁ多分、彼らの胃袋は燃焼効率がとってもよいのか、それとも原子力発電でもしているのかと思うようになってきた。それに比べて、僕のは19世紀の発明したての蒸気機関なのだろうな。

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2 コメント

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Unknown (アーンデション)
2007-08-12 22:36:35
こんばんわ。以前に何度か書き込みさせていただいた者です。
私も、スウェーデン留学中にこの小説を読みました。外国人向けのスウェーデン語の授業で教材として使用されていたのですが、母親が死を迎える場面や、母の死後に主人公が祖母に泣いて謝る場面では涙腺が緩んできてしまい、我慢するのに大変でした(笑)。
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Unknown (Yoshi)
2007-08-14 06:22:05
懐かしい書き込みにコメントを頂きました。

今から振り返ってみると、スウェーデン語学習の中級段階以降は、新聞や小説を読んでいくことによって、語彙力や表現力が飛躍的に付いていったように思います。

上の本は、10代向けの小説とあり、大変読みやすいうえ、的を得た心理的表現がたくさんあって、「こういう感情って、こう表現できるんだ」と何度もうなづいたものです。


ブログのリンクをクリックしてみました。北欧からの時事ニュースを精力的にアップデートされているみたいですね。お気に入りに加えさせてもらいます。
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