スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

リンゴの木に挟まったヘラジカの真相 - 酔っ払い・・・

2011-09-10 15:47:45 | コラム
ヨーテボリから南に30kmほどの長閑な海岸部。森や林も多い地域だ。ここに一軒家を持つある中年男性は、火曜日の夜10時ごろ、隣の家の庭から響く低音の奇妙な呻き声に気づいた。外は暗く、大雨が降っていたために最初は良く見えなかったが、恐る恐る外に出て近づいてみると、大きなヘラジカが庭のリンゴの木の枝に挟まって、半ば宙ぶらりん状態となり、動けなくなっていたのだった。


この家に住む家族は休暇で留守だった。ヘラジカを発見した彼は、近所に住む狩猟愛好家を呼んで善後策を考えた。猟師は撃たずに助けてやりたいという。

しかし、このヘラジカ、よく見ると目が真っ赤で様子がどうもおかしい。ぐったりしているが、それはただ単に枝に挟まった状態で、もがいたことだけが原因ではないようだ。どうやら酔っ払っている・・・。この家の住人と猟師はそう判断した。この時期は、リンゴが枝にたわわに実っており、地上には熟したものからどんどん落ちてくる。それがそのまま腐って発酵していくわけだが、このヘラジカはそのように地上で発酵したリンゴをたらふく食ったと思われる。そして、それだけで飽き足りずに、まだ木に実るリンゴにも手を(いや足を)出そうとして、自慢の長い前足を木に掛け、上のほうの枝になるリンゴに背伸びしようとしたところで、酔いがほどほどに回ってしまい、バランスを失ったのか、それとも前足を滑らせたのだろう。そして宙ぶらりんという情けない格好となってしまったようだ。

夜の繁華街でグデグデに酔いつぶれている酔っぱらいおじさんの「ヘラジカ版」と言ったところだろうか。いや、ちなみにこのヘラジカは雌だった。

この家の住人はリンゴの枝を木って助けようと考えたが、酔った勢いでヘラジカが暴れても大変なので、警察に電話をしてみたが、警察の管轄ではないと断られた。そして、代わりにレスキュー隊(消防・救急)が出動することになった。現場に到着した彼らは、クレーン車を使ってリンゴの枝を押し曲げて折り、ヘラジカを無事救出した。

疲れ果てていたヘラジカは、地上に降ろされ、そのまま庭で一夜を過ごした。地元の新聞社が取材に訪れた翌日午前中には、まだ庭でぐったりしながら、庭の中をそのそと歩き回っていたという。人間で言うならば、二日酔いの状態だろうか。そして、ある程度回復したのか、その日の午後にのそのそと森のほうに歩いていったという。

地元紙のインタビューを受けたヘラジカ博物館の専門家によると、ヘラジカは甘い果物が大好きで、とりわけ果物が地上で腐って、周囲に甘い香りが立ち込めているようなときは、その香りを遠くからでも嗅ぎつけて、ご馳走を食べにやってくるのだとか。

ヨーテボリの地元紙(写真がいくつか)

このニュースは英米の英語ニュースを通じて、世界に発信された。
米ABC
英ガーディアン紙

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