スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

グスタフ・フリドリーン 「議員が一生の仕事であってはならない」(その1)

2010-11-08 01:12:53 | スウェーデン・その他の政治
今回の国政選挙で18歳の国会議員が誕生したことは少し前にここでも書いたが、若者の政治への関与について語る上でどうしても触れておきたい人がいる。グスタフ・フリドリーンという27歳の若者だ。


振り返ること8年前、2002年の国政選挙において19歳という若さで国会議員に当選した男の子がいたが、それがグスタフ・フリドリーンだった。小さい時から環境問題に関心を持った彼は、11歳のときに環境党の青年部会のメンバーになり、党内でのアイデア形成に子どもの立場から積極的に関わっていった。そして、16歳のときにこの青年部会の代表に選ばれ、そして19歳から国会議員となったのだった。

ただし、任期4年の間に国会議員として様々な経験を積んだり、同僚の議員や他の党の議員と仕事をしていくなかで「国会議員という身分が一生涯の職となるべきではない」と考えるようになり、2006年の国政選挙では立候補しないと表明した。彼の考えは、政治という場はあくまで我々が生きる社会の現状を捉え、その社会を変革していくためのベースに過ぎないのだから、そこで仕事をする政治家は現実社会との接点を失ってはならない、というものだった。

過去の記事:2005-09-22:19歳の国会議員

理想的な政治のあり方とは、なるべく多くの議員が政治家という仕事それ以外の仕事の間を行ったり来たりすることだ。1期4年の任期を終えた彼は政治の世界から退き、それまで関心を持っていたジャーナリストという仕事に就くことを選んだ。そして、民放のテレビ局において社会問題を扱う番組の制作(Kalla fakta)に携わったり、ドキュメンタリー映画の制作を手がけたりした。中でも環境問題(飛行場・航空路線が抱える様々な社会的・環境的費用)を扱った作品は一定の評価を受け、環境ジャーナリスト大賞にノミネートされたりもした。

また、“民衆”高等学校(大学とは別に、議論や討論をベースとしながら社会的素養を身につけるための教育機関)で講師として働くための学位を大学で取得していた彼は、社会科や歴史の講師を務めたりもした。さらに、その傍らでは本の執筆も進め、2009年春に『騙された! - 歳出削減が生み出した一つの世代』として刊行された。この本のテーマは80年代生まれの若者世代だ。若い世代と中高年の世代との対立が常にそうであるように、80年代生まれの若者たちも社会の大人たちからは「新人類」だとか「怠け者の世代」だと冷ややかな目で見られてきた。そのような社会の目に対して、自らも80年代生まれであるグスタフ・フリドリーンは、自分たちの世代の声にも社会は耳を貸すべきだと声を上げたのだった。そして、この本のなかで、1990年代初めの経済危機とその後の歳出削減が80年代世代にいかに大きな影響を与え、彼らの明るい将来が打ち砕かれ、様々な問題が生まれたかを説明したのだった。まさに自分たちこそ大人たちに騙された(blåsta)世代だ、という訳だ。

このように様々なことにチャレンジできる意欲を持ったマルチな彼だが、2010年の国政選挙を9ヵ月後に控えた昨年暮れに、彼は国政にカムバックすることを表明したのだった。環境党に再び戻った彼は、党内での人気も高かったために支持をうまく勝ち取り、比例代表の上位に名前を連ねることとなった。そして、見事再選を果たしたのだった。(続く・・・)


少し生意気げにこうやって議場の席に座って討議に参加する若い議員がいてもいいでしょ?(5~6年前の写真)