スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

鉄道の次は、海上交通でも

2010-03-07 18:21:44 | コラム
この冬は例年以上の寒波のために、鉄道が麻痺していることは以前、書いた。ストックホルムとヨーテボリを結ぶ幹線は、既に再開されているものの、切り替えポイントの多いHallsberg(ハルスベリ)駅付近では修復工事が今でも続いているため、特急X2000は2時間おきの間引き運転が行われている。

交通麻痺は、鉄道だけではない。海運交通もストックホルムとオーランド島(フィンランド)の間で麻痺している。3月に入ってずいぶん暖かくなり、地域によっては春の兆候すら見られる時期なのになぜ? 答えは、流氷だ。

気温が少しずつ上昇していくにつれ、バルト海北部のほうで海面を厚く覆っていた氷に亀裂が入り、流れ出すようになる。そして、その氷の大軍が北風に押されて南下をし、ストックホルム沖合いの群島海域に到達している。その力は相当なもので、大型フェリーですら立ち往生してしまうという。

先週は、すでに火曜日の段階で、ストックホルムとフィンランドのオーランド島の間を行き交う旅客フェリーや貨物船が流氷に阻まれ、立ち往生してしまった。砕氷船が急行し、航路の「こじ開け」が行われたものの、一部のフェリーはストックホルム入りできず、オーランド島に引き返す羽目となった。

写真の出典:沿岸警備隊


そして、木曜日。この日は同じ海域で、40から50の数の旅客フェリーや貨物船が立ち往生してしまった。この中には、フィンランドとスウェーデンを結ぶ定期航路を運行するViking Line(ヴィーキング・ライン)社の「Amorella号」(乗客700人)と「Isabella号」(乗客1150人)もあった。しかも、Amorella号は流氷の力でコントロールが利かなくなり、近くで立ち往生していた貨物船と接触してしまった。幸い船体にかすり傷が付く程度で済んだようだ。

写真の出典:沿岸警備隊

スウェーデンやフィンランドの沿岸警備隊や海上交通庁などが多数の砕氷船を出して救出作業を行ったものの、この時は流氷の勢いが強く、砕氷船自体も一時は立ち往生してしまった。

砕氷船によって航路をこじ開ける作業が、夜を徹して行われた。乗客は船内で夜を明かすことになった。そして、旅客フェリー2隻は翌日になって入港することができた。

写真の出典:沿岸警備隊

海上交通庁によると、流氷の勢いがここまで強いのは14年ぶりだという。先週はフェリー各社に対して「航行を取りやめるように」との警報を発令していたものの、一部の旅客船や貨物船はそれが届いていなかったのか、もしくは、「たいした事ない」と甘く見たようで、海に乗り出してしまったのだ。大型船となると、船体も丈夫であるから「乗り切って見せるさ」と船乗りの意地が冒険に駆り立てたのかもしれないが、14年ぶりの分厚い流氷とあって、後悔したときには手遅れだったに違いない。


テレビの映像(上をクリック)