サーブ(SAAB)の売却交渉は、複数の候補の中からスウェーデンのスポーツカー・メーカーのケーニグセッグ(Koenigsegg)が選ばれ、将来の新しい所有者として買取交渉を進めていくことが6月上旬に発表された。しかし、年間の生産台数がサーブの半日の生産台数に過ぎないような超ミクロな自動車メーカーにサーブの再建ができるのかという疑問の声があちこちで聞かれた。
ケーニグセッグの社長、クリスティアン・フォン・ケーニグセッグ
よく輝いているので、どれが車でどれが頭なのか、よく見ないと分からない・・・ 写真の出典:Svenska Dagbladet
しかし、ノルウェー人やアメリカ人の事業家や資本家とともに資本グループ、ケーニグセッグ・グループ(Koenigsegg Group)を設立して、サーブ買収という野心に燃えるケーニグセッグの社長クリスティアン・フォン・ケーニグセッグは「資本は十分にあるし、経営再建もサーブの社長が打ち出している再建計画をもとに実現していく」と答えていた。その後、買取の第一ステップとして、ヨーロッパ投資銀行(EIB)への6億ユーロの融資申請、そしてEIBが融資認可の条件として提示しているスウェーデン政府からの融資保証を取り付けるための協議が続けられてきた。
スウェーデン政府の融資保証とは、EIBが新生サーブに融資を行い、もし新生サーブが倒れて融資が焦げ付いてしまったときに、サーブに代わってスウェーデン政府が返済をちゃんと肩代わりしますよ、というものだ。だから、スウェーデンの納税者のお金が直ちにサーブ救済につぎ込まれるわけではない。このような融資保証を実際に行うのは主に国債の発行や管理を行っている債務管理庁という行政機関だが、作業グループを作って保証の詳細をめぐる協議をサーブ側と続けてきた。
サーブの売却がうまく行き、新生サーブが無事離陸するかどうかは、EIBからの融資と、その条件であるスウェーデン政府からの融資保証にかかっているが、債務管理庁は融資保証の供与を拒むことはないだろうと見られ、その協議の進展が注目されてきた。
――――――――――
しかし、大きな懸念が浮上した。資本グループであるケーニグセッグ・グループ(Koenigsegg Group)の出資者の一人が、出資を取りやめると発表したらしいのだ。この情報は、スウェーデン産業省の政務次官(産業相の一番の側近であり、政府の代表としてSAABとの交渉を担当してきた)が明らかにしたものだが、それが誰なのかは明らかにされていない。ただし、その人物は「取りやめる」と決めた理由として「今回の買収計画が予想以上に注目を受けすぎて困っている」と述べているらしいのだ。
明らかになっている情報はそれだけだが、サーブ側も資本グループ側もコメントを控えているので、ネガティブな憶測が飛び交っている。注目を受けるということは、その資本の背景や詳細について鋭い分析の目がメディアなどから向けられるということだが、そのような批判の目に耐えられない、やましいことでもあるのではないか・・・? もしくは、収益性の見込みが薄い企業への出資に、この資本家が今になって恐れをなしたのではないか?という見方もある。
一方、産業省の政務次官は「この人物が出資を取りやめたことが、今後のサーブ買取交渉に影響することはない」と述べている。
大手日刊紙の一つは、記者個人の論説の中で「サーブの買取交渉は成立しない」と断言している。ただし、彼の判断の前提となっているのは、スウェーデン政府が結局は融資保証を行わない、と彼が見ていることであるが、既に書いたようにこの案件を担当している債務管理庁は、保証供与のための前向きな協議を進めていると(少なくとも公式には)伝えられているので、この前提が崩れれば彼の判断も崩れることになる。
別の大手日刊紙は、これも記者個人の論説として「トランプで作られた塔が崩壊するのは早い」というタイトルのコラムを掲載し、これまでのケーニグセッグによるサーブ買収計画が「砂上の楼閣」ではなかったか、と述べている。特に、ケーニグセッグ・グループ(Koenigsegg Group)の資本の詳細とその出どころが最初の段階から明らかにされていない上、彼らの意図や将来の見方が不透明である点を問題視している(ロシアの新興財閥の資本がかなり絡んでいるという見方が強い)。その上で、ポーカーに例えて「手に隠しているカードをすべてテーブルの上に広げるべきだ」と述べている。
ケーニグセッグ・グループの資本の構成 写真の出典:Svenska Dagbladet
ケーニグセッグの社長、クリスティアン・フォン・ケーニグセッグ
よく輝いているので、どれが車でどれが頭なのか、よく見ないと分からない・・・
しかし、ノルウェー人やアメリカ人の事業家や資本家とともに資本グループ、ケーニグセッグ・グループ(Koenigsegg Group)を設立して、サーブ買収という野心に燃えるケーニグセッグの社長クリスティアン・フォン・ケーニグセッグは「資本は十分にあるし、経営再建もサーブの社長が打ち出している再建計画をもとに実現していく」と答えていた。その後、買取の第一ステップとして、ヨーロッパ投資銀行(EIB)への6億ユーロの融資申請、そしてEIBが融資認可の条件として提示しているスウェーデン政府からの融資保証を取り付けるための協議が続けられてきた。
スウェーデン政府の融資保証とは、EIBが新生サーブに融資を行い、もし新生サーブが倒れて融資が焦げ付いてしまったときに、サーブに代わってスウェーデン政府が返済をちゃんと肩代わりしますよ、というものだ。だから、スウェーデンの納税者のお金が直ちにサーブ救済につぎ込まれるわけではない。このような融資保証を実際に行うのは主に国債の発行や管理を行っている債務管理庁という行政機関だが、作業グループを作って保証の詳細をめぐる協議をサーブ側と続けてきた。
サーブの売却がうまく行き、新生サーブが無事離陸するかどうかは、EIBからの融資と、その条件であるスウェーデン政府からの融資保証にかかっているが、債務管理庁は融資保証の供与を拒むことはないだろうと見られ、その協議の進展が注目されてきた。
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しかし、大きな懸念が浮上した。資本グループであるケーニグセッグ・グループ(Koenigsegg Group)の出資者の一人が、出資を取りやめると発表したらしいのだ。この情報は、スウェーデン産業省の政務次官(産業相の一番の側近であり、政府の代表としてSAABとの交渉を担当してきた)が明らかにしたものだが、それが誰なのかは明らかにされていない。ただし、その人物は「取りやめる」と決めた理由として「今回の買収計画が予想以上に注目を受けすぎて困っている」と述べているらしいのだ。
明らかになっている情報はそれだけだが、サーブ側も資本グループ側もコメントを控えているので、ネガティブな憶測が飛び交っている。注目を受けるということは、その資本の背景や詳細について鋭い分析の目がメディアなどから向けられるということだが、そのような批判の目に耐えられない、やましいことでもあるのではないか・・・? もしくは、収益性の見込みが薄い企業への出資に、この資本家が今になって恐れをなしたのではないか?という見方もある。
一方、産業省の政務次官は「この人物が出資を取りやめたことが、今後のサーブ買取交渉に影響することはない」と述べている。
大手日刊紙の一つは、記者個人の論説の中で「サーブの買取交渉は成立しない」と断言している。ただし、彼の判断の前提となっているのは、スウェーデン政府が結局は融資保証を行わない、と彼が見ていることであるが、既に書いたようにこの案件を担当している債務管理庁は、保証供与のための前向きな協議を進めていると(少なくとも公式には)伝えられているので、この前提が崩れれば彼の判断も崩れることになる。
別の大手日刊紙は、これも記者個人の論説として「トランプで作られた塔が崩壊するのは早い」というタイトルのコラムを掲載し、これまでのケーニグセッグによるサーブ買収計画が「砂上の楼閣」ではなかったか、と述べている。特に、ケーニグセッグ・グループ(Koenigsegg Group)の資本の詳細とその出どころが最初の段階から明らかにされていない上、彼らの意図や将来の見方が不透明である点を問題視している(ロシアの新興財閥の資本がかなり絡んでいるという見方が強い)。その上で、ポーカーに例えて「手に隠しているカードをすべてテーブルの上に広げるべきだ」と述べている。
ケーニグセッグ・グループの資本の構成