人とウイルス 果てしなき攻防 中原 英臣,佐川 峻 NTT出版 このアイテムの詳細を見る |
またまた、解りやすく楽しい本でした。
伝染病の歴史、顕微鏡の発明から、細菌の発見、ウィルスの発見、ワクチンの開発、耐性菌の出現、遺伝子組み換えなどのバイオテクノロジー、そしてウィルス進化説まで、楽しい歴史の読み物といってもよい内容です。
ヨーロッパでのペストの大流行が、人々の神への不信感につながり、ルネサンスへの扉を開き、キリスト教から自然科学へと歴史を動かしていったということなど、物知りの方にとっては当たり前のことかもしれませんが、学校で習った世界史も殆ど頭に入っていなかった私にはとても新鮮でした。
歴史は人がつくるものだなんて、思い上がりなんですねぇ。
そして、19世紀になり有名なパスツールをはじめとして、リスター、コッホ、フレミングというような人たちのミクロの世界への執念が、世界中の多くの人を数々の伝染病の恐怖から開放したこと。そして、現代は、薬剤耐性菌が現れ、HIVなど新しいウィルスが次々と生まれていることなどが説明されます。
また、遺伝子の運び屋として、遺伝子組み換え、遺伝子治療といった分野でウィルスが活躍しているという意外な事実の必然が良く分かりました。
本書は1995年の出版ですので、その後、もっともっといろんなことが解ってきているに違いありません。
この前、更年期障害の症状で病院の先生と話をしたときに、ホルモン補充用の新しい薬について少し紹介されました。そのとき先生は、”今までの薬は、馬のエストロゲンなどを使っていたけれど、これは人のものです”と言われて、そのときは何も思いませんでしたが、本書で、大腸菌を使ってインシュリンの大量生産が可能になったということが書かれていたのを読んで、あの薬もそういう遺伝子組み換え技術を使っていたのではと思います。
ほんと、実はとっても身近な話だったのですねぇ・・・。
この手の本を読んでも、基礎のない私には体系的に理解できたわけではないのです。身近な出来事の裏のからくりも、知らなければ知らないで別に困りはしないし、知っていたからといってどうということでもないのですが、それでも本で読んだことが、日常の出来事に偶然結びついたとき、自分の脳のシナプスがピピッとシグナルを出して新しい回路を作ったような気がして、ささやかな幸せを感じるのです。
そして、私の祖母のことをふっと思い出しました。彼女は、10歳の時にコレラで親兄弟をなくしたため、田舎から町へ奉公に出たのですが、そんな世代の人たちにとって、伝染病は常に身近にあったのですよね。祖母の人生や価値観を、なくなって40年近くたった今、もう一度新たな気持ちで見直してみたい気持ちになりました。
ホント、読書は楽しい・・・・。
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