本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

ドラゴンタトゥーの女

2010-08-13 | 小説
The Girl with the Dragon Tattoo

Quercus Publishing Plc

このアイテムの詳細を見る

 

 スウェーデン初の話題のミステリー、3部作の第一巻です。

 

  7月にオーストラリアに行ったときに、知り合いが、目をキラキラさせて推薦してくれたので、帰りにゴールドコースト空港で購入しました。

 

 もともとスウェーデン語で書かれていて英語版は翻訳なんだから、英語で読むこともないんだろうけど、日本語版になると上下巻で各1700円だし、この本は25ドルくらいでかったから、安かったという事でと自分を納得させていました。が、Amazon.co.jpで買えば1000円以下じゃないですか。12,13ドル・・・う、日本で買ったら半額で済んだのね・・・。

 

 ま、それはそれとして、物語です。

 

 ある財界人のスキャンダルをあばいたため、名誉毀損で有罪判決を受けた経済ジャーナリストのミカエルの元に、スウェーデンの大財閥の元オーナー、ヘンリック・ベンゲルからある依頼が舞い込みます。

 

 それは、1966年に突然消えた孫娘(正しくは彼の兄の孫娘)ハリエットについての調査だった。

 

 40年たっても何の音沙汰もないことから彼女は殺害されたと思われるのだが、いつどうやって、そして死体はいったいどこにあるのか全くわからない。

 

 途中から、リズベス・サランダーという謎めいた女性と協力し、このなぞに挑んだミカエルが、真実に少しづつ近づき始めるのですが・・・・。

 

 話は想像通り、だんだんオドロオドロシくなっていくのですが、そうなるとやっぱり出てくるのが、”聖書”・・・。そして、”ナチ”。ヘンリックの兄弟二人は、かつてはナチのメンバーで、戦後もその精神を持ち続けていたのです。

 

 このキリスト教とナチズムというのは、ヨーロッパ人の精神を理解するうえではキーになるものなのかもしれません。

 

 どちらも恐怖で人の心を支配する。

 

 そして、それを信じる人間には、信じない人間を罰する権利があるのだと容易に信じこませてしまうのですね・・・。

 

 実はここがこの本のダヴィンチコードよりも面白いと私が感じたポイントでした。

 

 そして、その上、セックスとか、株の世界なんかの現代的な要素も織り交ぜて、もう本当に、お腹いっぱいになりそうな構成です。

 

 登場人物もとても個性的でストーリー展開だけでも十分面白いのですが、そういう背景的なことを感じられると、(英語のため)読むのに3週間もかかってしまったこの時間も決してもったいなくないかなと思えた1冊でした。

 

 ところで、スウェーデン語の名前や場所をどう読むのかわからず、なかなか頭に入れるのに困りました。それに、ハヤカワなんかだと必ずある、登場人物とかのリストもないし(いや、一応本文中にあるにはあるんですけどね。名前だけなので・・・)。場所の位置関係もよくわからなくて、まあとりあえず気にせず読み飛ばしましたが、読後にグーグルマップで調べてみても、HedestadとかHedeby Islandなんかが見つからず、存在しない場所なんですかね。

 

 (そして、つい続きを買ってしまったため、またこのブログの次回の更新までに時間がかかってしまうかもしれません)


身の上話 佐藤正午

2010-08-07 | 小説
身の上話
佐藤正午
光文社

このアイテムの詳細を見る

 

 図書館から、予約の本が届いていますとメールがあったので、取りに行ったらこの本を渡されました。

 

 予約した覚えゼロ・・・。雑誌でもみて、ふっと衝動的に予約したのかなぁと読み始めましたが、書評を見て予約したのであれば読めば何か思い出すかと思いましたが、まったくなんの記憶も蘇りませんでした。(苦笑)

 

 ある女性の地方の町で、本屋に勤める平凡な女の子が、勤務時間中のふっとした衝動で、恋人について東京へ行ってしまうところから身の上話がはじまります。

 

 そして、その一連の出来事を語っているのは、その女の子本人ではなく、彼女の夫。

 

 彼女が東京へ行く前に、同僚から頼まれて買った宝くじが当選したことから、彼女の人生が狂い始めるのです。と、書くと大金に目がくらんで派手な生活を始めたことから転落していく・・・というありがちな展開を想像しますが、ちょっと違っていて、そこが面白いところです。

 

 若さゆえのほんのちょっとしたわがままと2億円が、彼女を取り巻く男性3人の男性の運命を変える。その嵐に巻き込まれながらも、2億円の預金通帳と、小さな良心だけをリュックサックにいれていつも持ち歩きながら、彼女自身は主体性を持って何かをすることはなく、ただオロオロしているだけなのです。

 

 話の展開からは、平凡な人物を想像させる語り口のこの夫と彼女がいつどうやってめぐり合い結婚したのかということが最後まで全然想像つきませんでした。

 

 そして、あぁ、そういう設定だったのか・・・と最後まで読んで、この”身の上話”というタイトルの意味がわかったのでした。

 

 日常に対するちょっとした反乱が、どんどん悪い方に進むということで、この話とはテイストが全然違うのですが、「ファーゴ」という映画を見た後に感じた驚きをちょっと思い出し、久しぶりに見てみたいなぁと思ったのでした。