「つまりこういうこと? あなたが答えを知っていたわけを理解するためには、あなたの人生全部を知らなければならない」
ぼくと1ルピーの神様 | |
ヴィカス・スワラップ | |
ランダムハウス講談社 |
これって、アカデミー賞をとった「スラムドッグ$ミリオネア」の原作ですよね・・・。(って誰に聞いているんだか)
こんな話だったんだ・・・。
というか、どんな話か具体的に想像してみたことがあったわけじゃないのですが、どちらにしてもとっても予想外な展開でした。
クイズで12問すべてに応えて、十億ルピーと言う大金を手にした青年は、スラム育ちで学校へも行っていないしがないウェイター。その彼が、今まで誰もできなかった全問正解を成し遂げた理由は・・・。それは、信じられない偶然で、彼の知っている問題が連続で出題されたからだったのです。
彼がクイズの答えを彼が知っていた理由を、1問づつ弁護士の女性に語るのですが、インドのスラムで過酷な状況を生き抜いてきた青年の人生そのものだということで、冒頭に引用した言葉となるわけです。
孤児だったラム・ムハマンド・トーマスは、8歳の時に育ての親であったイギリス人神父が亡くなった後、孤児院へ送られるが、その後連れて行かれた健康な孤児を障害者にして、詩や歌を教え込みカネを稼がせる組織から逃げ出すと、子供ながら工場で働いたり、外交官や女優のハウスボーイをしながら自力で生きてきた。その生活はたとえ彼自身が望まなくても、犯罪といつも隣り合わせだったのです。
一人の貧しい青年の半生記を、クイズ番組と結びつけるなんて、とってもぶっ飛んだ設定で、そこだけを見ると、リアリティに欠けるのですが、語られるインドの生活の方には、十分にリアリティがあるためか、許せてしまいます。
この本を読んで思ったのですが、一億総中流と言われた高度成長時代に育った私をはじめとして、多くの日本人はまだ、格差社会の現実というものを甘く見ているのかもしれません。
そして同時に、暗く見すぎているのかもしれません。
子供たちが、虐げられながらもどれほど強いか・・・。
太刀打ちできないですよ、日本の子供では。
とにかく、面白い小説でした。
インドと言う現実が背景になければ、なかなか描けない世界ですが、それでもユーモラスな作風で、とても読みやすかったです。
映画を少し前にTVでやっていたから、録画してたんだけど、なんか見る気になれなくて、結局ついこの間消したところで、それが残念。
とにかく、ありきたりでない構成がとっても新鮮で、主人公のキャラクターがとてもよくて、楽しい読書タイムでした。