台風が接近している日、10人の乗客と2人の運転手を乗せたバスは、東京から萩に向けて出発するが、大阪を過ぎた頃、乗客の一人にバスジャックされる。他の乗客が気づいたときには既に、一人の運転手は殺害され、その後バスは、何かに突っ込み、10人は闇の中に残される。夜が明けるまでの間に、乗客たちの間に連帯感が生まれて来る・・・・。
殺人はありますが、ミステリー的な要素はありません。乗員や乗客たちのプロフィールと、それぞれがお互いに助け合うようになるプロセスをがメインです。解説や、あらすじにも”それぞれの事情をかかえて”とか、"それぞれの人生を背負って”とありますが、たいした事情ではなく、ありがちなプロフィールですが、その分、一人一人がなんか自分の身近にいる人にたとえられそうな妙なリアリティもあります。
ただ、会話からうかがい知れる乗客一人一人の性格表現とは裏腹に、シチュエーションにはリアリティがなくて、すこしバランスが悪い。この内容で、250ページはちょっと短いのではないでしょうか。どうも消化不良でした。解説ではこの長さを、”無駄が無い”と表現されていて、それはそうかもしれないのですが、一人一人のプロフィールも中途半端で誰にも感情移入できないのですよ。どうもこの解説者自身。どこを褒めたらいいのかなぁと苦労して書いたようにも読めるのは、穿ち過ぎでしょうか。
最近、こういう小説を読んで”おもしろい!!!”と思えないのは、自分に原因があるのかなぁ。あー、面白いミステリーを読みたい。