
どこかで書評を読んで、読みたいなぁと思っていましたが、やっと図書館で見つけました。久しぶりの篠田さんの作品でした。
東京から距離的には近いけれど、高速道路からは遠く、温泉も出ないし、これといった目玉のない田舎町の若くもない青年会のメンバーの、町おこし奮闘記です。派手さはないけれど、とても面白い小説でした。
町おこしをするといってもこれといった目玉がなく、なかなかうまく行かない。ところが、ひょんなことから、UFOが出没する四次元空間おかしな噂がたち始め、インターネットで噂をかぎつけた若者がぽつりぽつりとやってくるようになる。最初はその噂に強烈な抵抗感を感じていた旅館きぬたやの息子靖夫もだんだんと乗り気になり、青年会は、様々な企画を実行に移していく。最初は雑誌で、次にテレビに取り上げられ、村の頭の古い年寄り達の意識も変わり始めた時、今度は世間からのバッシングが始まる。
私小説は書かないと、何かのインタビューで応えていた篠田さんらしく、とても面白いところに目をつけて作品を作られたなぁと思います。田舎町をなんとか盛り上げようとする人たちと、文句ばかりいって実際には何もしようとしない年寄り。中央から予算を取ることしか考えない役所。そんな関係がとてもリアル。UFOで町おこしという少し喜劇的な要素やちょっとありえない設定と、背景のリアルさがほどよくマッチして、いい味に仕上がっています。
しかし、会社という組織ではなく、それぞれの利害や目的が様々に違う”町民”という立場で、まとまってプロジェクトに取り組むのは本当に難しいのでしょうねぇ。そうおいう日本の田舎が抱えるジレンマが、喜劇風にかかれていることにより、何か希望が感じられるのです。
そんなに甘いもんじゃないと、きっと当事者の方達はいわれるでしょう。でももし、魅力のある日本の田舎町が増えて活気づけば、日本はもっともっと面白くなるような気がしてきました。グローバル化なんてくそくらえです。
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