![]() |
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838) |
ディヴィッド・ベニオフ著 田口俊樹訳 | |
早川書房 |
何かで書評を読んで、図書館に予約していたんだと思うのですが、
すっかり忘れた頃に、私の番が回ってきました。
裏表紙には、
「若者たちの友情と冒険を描く、歴史エンタテインメントの傑作」
とあります。
読む前は、?って思ったけれど、
ほんと、その通りでした。
1941年大晦日の夜のレニングラード
17歳のレフは、落下傘で落ちてきたドイツ兵の死体からナイフを盗み、騒いでいたところをつかまってしまう。
即刻銃殺を覚悟していたのだが、翌朝、軍隊を脱走してつかまったコーリャとともに、
6日後の大佐の娘の結婚式用の卵を調達を命じられる。
ドイツ軍に包囲され、人々は本の表紙をはがし、背表紙の部分の糊をキャンディーするほど餓えているこの地で、
卵なんてどこにあるのか想像もつかない中、とにかく、二人は、歩きはじめる。
小説は、年老いたレフが、孫に戦争の話を聞かせてほしいと言われて語る構成で、
少年のレフが動き、その時の気持ちを年老いたレフが「わし」という一人称で語る
これが、ほんといい味を出しています。
悲惨で絶望的な状況の中でも、いつも人を喰ったような態度のコーリャと
小柄で純情なレフ。
二人がくぐりぬける修羅場は、ファンタジーのようではあるけれど、
レニングラード包囲戦という歴史的な背景を考えると、どう読めばよいのかと戸惑いながら半分までは読んでいて、
実のところ面白さもよくわからず、ギブアップしかかったのですが、後半に入ってグングン引き込まれます。
戦争がいかにばかばかしいもので、人がいかに醜く、悲しい存在かが、
コメディタッチの中に、巧く織り込まれていて、
それでも、冒険の結末で二人が友情を認識し、戦後の後日談から、
現在のレフおじいちゃんの暮らしに線がすーっと結びついていく、
作りが、ほんと巧い!
フィクションの醍醐味を感じました。
読み終わってみると、ほんと読んでよかった…と思った作品でした。
ところで、この本を読みながら思い出した映画があります。
「ノーマンズランド」
コメディタッチが、戦争の無意味さを、強調するという点で、共通する点があると思いました。
レニングラードと言えば、ジュード・ロウの映画があったなぁってずっと思いながら読んでましたけど、今調べたら、それは、「スターリングラード」でした・・・(汗)。