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数学ができないけれど、数学に憧れのあるミーハーな私が、飛びついてしまうタイトルです。
数学的には天才なのだけれど、癲癇の発作に頻繁に見舞われるため大学講師の職を続けられなくなったケインは、その能力をギャンブルにのみ向けて生活していた。ポーカー中、大きなチャンスでその発作に見舞われ正常な判断ができなくなった彼は大きな借金を背負ってしまう。その借金を返すためにある脳研究者の実験台となり投与された物質の影響で、彼が持っていた将来起こることが見えてしまうという能力が開花してしまう。そのため、彼を使って自分の利益にしようとするいくつかの組織や個人に追われることになる。
数学と、脳神経学、それと量子力学などのエッセンスと、ハリウッドアクションの要素が加わり、”ノンストップ・サスペンス”と帯に銘打たれているように、スピーディーに話は進んでいきます。きっとこの手の小説を書く人は、きっと子供のころからハリウッド映画を見て育ったんでしょう、スクリーンの絵面が目に浮かぶようです。
いろんなどんでん返しを含め、最後の最後までどういう結末にするのか想像がつかず、読み終わった時には、もちろん単純に面白かったと思うのですが、それ以上に、“過去”と”未来”って何だろうと考えさせてくれるストーリーでした。
もしもある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、かつもしもそれらのデータを解析できるだけの能力の知性が存在するとすれば、この知性にとっては、不確実なことは何もなくなり、その目には未来も(過去同様に)全て見えているであろう。(By ウィキペディア)
と、フランスの物理学者が主張した決定論。”ラプラスの魔”と呼ばれるそうですが、つまり未来は、完全に予言可能であるが、ただ、ある瞬間におけるすべての物質の力学的状態と力を知ることができないので、現時点で人間は未来が見えないということなんですが、ケインはこのラプラスの魔を見る力を得てしまったのです。
でも、ケインが見たのは、確定した未来ではなく、様々な可能性。だから、彼は予言するのではなく、選択するんです。
だけど、未来を選ぶなんて、そんなこと、一人の人間が担えるような責任ではないともちろんケインもビビるのですが、そこには良い選択も悪い選択もないという事が、うまくは言えませんがなんとなく納得させられるように描かれています。
でも、でも何となく納得できないような気もするんです。
それは多分私が、数学や物理が全く駄目だからなんでしょうね