本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

暇と退屈の倫理学 國分功一郎

2012-08-26 | 評論

 消費社会は満たされなさという退屈を戦略的に作り出し、人々をその中に投げ込むことで生き延びていると言えるかもしれない。

暇と退屈の倫理学
國分功一郎
朝日出版社

 タイトルからして、もう少しお気楽な読み物かなと思ったのですが、とんでもない勘違いでした。

 とはいえ、読んでいて”退屈する”ような堅苦しい書き方もされておらず、私のような根性のない読者でも最後まで楽しんで読めました。

 暇と退屈をめぐる問題認識と、その歴史的、哲学的な考察、私たちが、暇と退屈を抱えながらどういきるかという方向性を示すという構成になっています。

 私にとって非常に興味深かったのは、やはり自分をも含む現代人の問題としての、消費と退屈の関係です。

 著者は、浪費と消費は違うといいます。

 浪費は、「もの」を受け取るのでどこかで満足する。けれど消費によって人が受け取るのは、「観念」なので、満足が得られない。だから人は、「ものを受け取る訓練」をし、「贅沢をとりもどす」必要があるというのです。

 最近流行りの、『断捨離』は、自分の周りに溢れるものを捨てて自由になろうということと理解していますが、その逆に見えるけれど、通じるところもありますね。

 確かに、食物を「消費」している国の人たちの怖ろしいほどの肥満は、食に対する退屈の象徴のようにも見えます。

 そして結論の中で著者は言います。

 <暇と退屈の倫理学>が向かう二つの方向性を結論として提示する。ただし、それらの二つの結論は、本書を通読するという過程を経てはじめて意味を持つ。

 論述を追っていく、つまり本を読むとは、その論述との付き合い方をそれぞれの読者が発見していく過程である。

 読者はここまで読み進めてきたなかで、自分なりの本書との付き合い方を発見したはずだ。それが何よりも大切なのである。

 

 人が人である限り何かに退屈させられたり、何をやっても退屈と言う気分になってしまうことは避けられない。それを解決する手立てが自分の外あると期待して探すだけでは何も見つからない。外部から来る「もの」を受け止める土台を自分の中にしっかり作ってこそ、奴隷にならずにそれを愉しむことができる。

 私が得た結論をまとめてみると、なにか至極当たり前で、以前からわかっていたことの様にも思えますが、上記に引用した通り、この本を読むという過程を経たということが大きいと思いたい。(笑)

 そして、50才という大台を迎えた今、これからの人生について、退屈を怖れるため、消費に走り、さらなる退屈に見舞われないよう、自分の周りの”もの”との付き合い方から見直していきたいと思ったのでした、


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銀のスケート ハンス・ブリンカーの物語

2012-08-19 | 小説

 スケート大会の一等賞のスケート靴と、記憶をなくしたお父さんが埋めたはずの千ギルダー。これらの行方をめぐってハンスとグレーテルの兄妹がオランダを舞台に繰り広げる感動的な物語。

銀のスケート―ハンス・ブリンカーの物語 (岩波少年文庫)
M.M.ドッジ作 石井桃子訳
岩波書店

 ホークさんにご紹介いただいた、19世紀のオランダを舞台にした、ジュニア向けの読み物です。

 アムステルダム近くのブルックという町に暮らす、兄のハンスと妹のグレーテル。父親は堤防で事故にあい、それいらい10年、話もできず、家族の事も分からない状況で、ふたりは母親を助けて貧しいながらも健気にくらしている。

 そんな風に始まるこの物語は、冒頭に引用した通り、スケート大会とお父さんが埋めたはずの千ギルダーの行方がクライマックスなんですが、実際には、その話とは全く関係ない、兄妹と同じ年頃の少年たちが、スケートでブルックからハールレム、ライデン、ハーグへと旅行をする話にからめてオランダの街並み、風物、歴史などを紹介していたりで、ちょっと戸惑いました。

 ジュニア向け小説といえば、一番最近に読んだのは、ハリーポッターですが、確かにメインのストーリーにはあまり必要とは思えないようなエピソードが結構あって、ちょっともどかしい感じがした記憶がありますから、もともとそういうものなんですかね。

 基本的にはおとぎ話でハッピーエンド、いじめもなく、読み終わった後味はすっきりですが、大人の読み物に慣れてしまった頭には多少物足りない気もします。

 とはいえ、読んでいて面白いのは、オランダの風景。

 凍った運河を道の代わりにしてスケートで行き来したり、船にスケートを履かせたような氷上船も行きかったりするのが珍しい。

 オランダ=寒い国っていうイメージはあまりなかったのですが、そういえば、結構、スケートが強かったなあって思って、ちょっとググってみたら、スピードスケートはオランダ発祥でした。そう思うと余計にこの本が面白く思えてきました。

 あとがきによると、この本の作者はオランダ人ではなく、オランダ系アメリカ人で、自身の息子たちに、オランダの歴史や地理を教えると同時に、家庭生活をおりこんだおもしろいお話をつくって聞かせはじめた、というのが、この『銀のスケート』の始まりなんだそうです。

 そして、

 この本を書いてからしばらくして、はじめて夫人は、ふたりのむすこをつれて、オランダに旅行しました。その男の子のひとりが、本屋にいって、「オランダの生活がいちばんよくわかるようにかいてある本はないか。」ときいたところ、「これです」と言って、本屋さんの出してきたのが、『銀のスケート』のオランダ語訳だったので夫人が大変喜んだという話は、有名です。

 とありましたが、作者の取材能力と想像力もさることながら、当時のアメリカに渡ったオランダ人の生活が本国の生活や人々の気質とさほど変わるものではなかったのだろうということも想像できて、こういうところから歴史を感じる楽しい読書でした。

 また、巻末の「岩波少年文庫発刊に際して」という1ページもなかなか味わい深い文章でした。 こちらに全文がありましたのでご興味のある方は、読んでみてください。


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図説 オランダの歴史 佐藤弘幸

2012-08-13 | その他

 ”ふくろうの本”シリーズの本をこんなにじっくり読んだのは初めてかも・・・。

 ノンフィクションは好きでも、こういう形式になっているとなんとなく、教科書のようでなかなか読み切れないのです。

 やっぱり自分が旅行に行こうと思うから、読み切れたのだとは思いますが、でも十分面白い本でした。

図説 オランダの歴史 (ふくろうの本/世界の歴史)
佐藤 弘幸
河出書房新社

 別に奇をてらうような書き方はされていないので、純粋にオランダの歴史が、非常に面白いと言えるのかもしれません。

 ローマによる支配の時代から、フランク王国による支配、ノルマン人の侵攻などの時代を経て、中世を迎える。ホラント伯家、エノー伯家、バイエルン候家、ブルゴーニュ候家などの領地となりながら、最後はスペイン支配下となり、近代を迎える。

 17世紀には、繁栄を誇ったオランダもイギリスやフランスといった大国の中で次々に戦争に巻き込まれ、貿易が落ち込み、また莫大な戦費の負担により18世紀には衰退が明らかになる。19世紀には、ベルギーも含めたネーデルランド王国が誕生し、国王ウィレム一世のもと経済立て直しに取り組む。社会インフラの整備や、近代的な銀行、商事会社なども設立したが、実際に破たんした経済を支えたのは、植民地から搾取して得たものであった。

 第一次大戦では中立を守り続けたため大きな被害はなかったが、第二次大戦では中立を宣言したものの、ナチスドイツに占領されたため、亡命政府は連合国側につくこととなり、終戦を迎える。 戦後もそのまま植民地支配をつづけようとしたが、結局は各植民地は独立し現在に到る。

 と、おぼろげな記憶で自分のためにまとめてはみたのですが、なかなかこれでは面白さが伝わらないですね・・・。

 でも、この本で一番私の記憶に残ったのは、あとがきです。

 ”オランダ人はなかなかレトリックに長けた国民であることもわかる。天才肌といってもいい。ある著名な日本人作家が残したオランダ紀行のように、ほとんど称賛だけに終始するのも一つの書き方ではあるが、本書はなるべくバランスを心がけながら、オランダの歴史の大づかみな流れを描いてみたつもりである。”

 これは、私も先日読んだばかりの司馬遼太郎のオランダ紀行への批判ですが、司馬さんにすれば、多分あちらでいろいろお世話になった方の事もあり、批判しにくかったのだろうなとはおもいましたが、かなりべた褒めで少し違和感はあったので、なんか読みながら自分のセンスを肯定してもらったようでニンマリしてしまいました。

 また、”知らんかったんかい!”と言われそうですが、アンネの日記の時代背景もよくわかって、改めて、隠れ家の皆で集まってイギリスからのラジオ放送を聞き、期待を膨らませたりしていたことや、ナチスの支配下にありながらも、普通のオランダ人がユダヤ人である彼女たちを匿ったという事実の背後にある感情も、少しは理解できたと思います。

 学生時代に、世界史はほんと苦手だったんだけど、もうちょっとちゃんと勉強しておくべきだったなぁ・・・とウン十年たって後悔しております。


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ベネルクス紀行 松村千恵子

2012-08-04 | 絵本

 最近、読書ペースが超スローになっております。  読み切れない本も多いし、読み終わっても感想がまとめられない本も・・・。  夏バテかしらん。  しかもオリンピック始まっちゃったし、ますます遅くなりそうです。

ベネルクス紀行―ベルギー、オランダ、ルクセンブルクへの誘い
松村千恵子
東洋出版

 さて、私のオランダ旅行まであと2か月を切り、 

 コースも決めて、ホテルもとりあえずは押さえました。

 私の中の盛り上がりも、ずーっと高止まりしている状況なんですが、

 うちの旦那のあごに皮膚がんが見つかってしまいまいた。

 検査の結果を聞いたとき、最初に思ったのが、

 ”旅行に行けるのかしら!?”

 だったことは旦那には内緒です・・・。

 ごく初期で、皮膚なのでお腹を切ったりするわけでもなく、日帰り手術。

 今のところは旅行には影響なさそうです。

 病院の帰りに、隣にある図書館で借りたのがこの本です。

 (鬼嫁でしょうか・・・)

 

 著者は、ご夫婦でよく海外旅行に行かれるようで、

 本書はベネルクス3国をご2週間程度旅行された際の紀行文です。

 読みやすい文章で、面白くないわけではなかったのですが、

 本にするほどのことかなぁ・・・っていうのが正直な感想です。

 プロフィールに年齢が書かれていないので、著者がおいくつなのかはわかりませんが、

 シニアライフの提案や健康に関する執筆が多いということで、

 本書が出版された2004年ころに50代後半か60代だったのではと想像します。

 だとすれば、その世代の人向けなのかもしれません。

 私は、真の大人(大人という定義は難しいが、ここでは年齢に関係なく、精神的に自立している人という意味)であれば敢えてカップルで行く個人旅行をおすすめしたい。理由は簡単「旅は道連れ」とは」よく言ったもので、旅での感動は、ひとりよりふたりの方がきっと大きいに違いないから。そして、その感動も、普段身近にいる者同士だからこそ分かち合えるものだと信じているからだ。

 私もこの年になったら、一人より道連れが欲しいし、気を使わない旦那と行けるのはほんと幸せだと思うので、著者のおっしゃることがわからないわけではないのですが、”大人ならカップルで”・・・と一般化しようとすのはどうかなぁと。

 私も、ツアー旅行より、個人で飛行機をとって旅行した回数の方が多いです。

 インドは一人で行く自信がなくて、ツアーにしたんですが、

 15人くらいのツアーで、そこで知り合った人たちとの交流もすごく良い思い出で、

 どっちがいいなんて比べられない。

 それに、本書を読んで思うのは、ご夫婦で動いておられるので、会話が二人で完結しちゃってあまり現地の人とも、旅行者の人とも殆ど会話らしい会話がない。

 ブリュッセルで同じ日本人の熟年夫婦と何度もすれ違っているのに、話をしようともしない。

 旅行記を書こうとしているのに、そういうところでもっと貪欲にいろんな人と話をしなければ、ありきたりの事しか書けないと思うんですよねぇ。

 そんなことを思いながら、プロフィールにあった著者の主宰する「世界の旅の情報サイト」もチェックしてみましたが、もはや存在せず、著者自身の情報もAmazonの本書のページしか見つかりませんでした。

 ま、そうだろうなぁと納得。

 とはいえ、来月からこの辺旅行すると思えば、それなりに、参考になる情報もありました。

 放置しすぎて、またまたランキング外・・・。

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