ヨルダン川西岸といえば、ニュースなどでも良く聞く地名。フランス語でシスヨルダンと呼ばれるその地区のある村で生まれ育ち、19歳のときに制裁として家族の手によって焼殺されそうになったという壮絶な過去をもつ一人のスアドという女性の手記です。仮面を被ったその女性の顔(と言っても見えるのは目だけですが)が大写しになったカバーに、興味はひかれていたのですが、”キワ物”かもしれないとなかなか買う気にはなれませんでしたが、文庫化されたのを機に、買って読んで見ました。
彼女が家族により殺されかけたその理由は、近くの若者に恋をし妊娠したため。それは家族にとっての最大の恥であり、そんな娘を制裁することは”名誉の殺人”と呼ばれるのだそうです。そして、世界中で年間6000人もの少女が”名誉の殺人”の犠牲になっているのだそうです。
スアドは、全身火達磨で逃げ惑うところを、運良く通りかかりの車に助けられ、その後、町の病院に収容されていたところを、さらに助けられてヨーロッパに渡り、今は結婚し、子供も2人と暮らしています。
村での生活は、想像を絶するものです。普段は娘を大事にしているが、そういうふしだらだけは許さないと言うのではなく、女の子にはなんの価値もないと信じて、学校にも行かせず、ただただこき使い、暴力が日常化しています。奴隷以下の扱いですね。一人で外出することも許されず、テレビや新聞をみることもありませんから、、彼女の記憶は、驚くほど曖昧なところがあます。例えば、自分の姉妹の生まれた順番がわからなかったり、ものごとがどの順番に起こったかが思い出せなかったり。そりゃそうですよね。物心がついてから、毎日家で同じようなことばかりさせられていて、去年と今年の違いなんてないのですから。
”カラーパープル”という、アメリカの黒人女性の生涯を描いた小説がありましたが、それを思い出しました。どちらも、どうしたらいいの・・・・としかいい様のない話ですが、そういう現実が今もあるという事実は忘れてはいけないのだと思います。その後どう行動するかは、読んでしまったものに対する重い宿題です。私はまだ何も行動していないし、今後どうするかも全然わかりませんが、この宿題は忘れないで、時々考えてみようと思いました