本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

戦場のニーナ なかにし礼

2008-01-11 | 小説
戦場のニーナ
なかにし 礼
講談社

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 会話が多いので、どんどんページが進み、あっという間に読めます。ロシアでの唯一の日本人残留孤児である、ニーナ・ポリャンスカヤという女性の人生をモデルにしているだけあり、心を打つものがあります。

 

 だけど、なかにし礼って、こんなに不自然な文章を書く人だったかなぁと不思議に思うほど、会話が不自然なんですね。説明なんです。「長崎ぶらぶら節」や「赤い月」を読んだときはそんなに違和感を感じなかったのに、不思議でたまりません。

 

 それでも読み終えると、十分心を打つんですが、どうも腑に落ちない一冊でした。

 


アジアの雷鳴 日本はよみがえるか!?

2008-01-09 | 評論
アジアの雷鳴―日本はよみがえるか!?
ニコラス クリストフ,シェリル ウーダン,Nicholas D. Kristof,Sheryl WuDunn,田口 佐紀子
集英社

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 実は私は、経済学部出身。しかもゼミは国際経済なのに、こういう本を読んでこなかったなぁとつくづく感じました。

 

 本書は、ニコラスとシェリルという夫婦であり、ニューヨークタイムズの記者である2人のアジアの経済の現状や展望に関する評論記事集です。2000年秋にアメリカで出版されたということで、主に1997から98年頃の状況からの考察が多いようでした。よって約10年前頃に書かれたものということで、タイや韓国の経済破綻なども生々しく描かれているものの、そのなかから這い上がる人々のたくましさも十分視野に入っていて、なかなかの洞察力だなと関心しました。

 

 日本に関しては、私が旧財閥系大企業の関連会社で働くものとして日常的に感じている”本気で変わろうとしない”事に関する苛立ちを、見事に別の視点から描いてくれてそうなんだなと共感もできますが、反面確かにこの10年で日本人も結構変わってきたよなとあらためて実感しましたし、外国からはこんな風に見えるんだなと、あらためてわが身(わが国)をみなおすことができました。

 

 著者の一人であるシェリルは中国系アメリカ人ですし、ニコラスにしてもアジアを外から見るというより、深く入り込んだうえで、外部の人間として発言していると思います。外部の視点は、違和感もあり、最初は読みながらちょっと嫌な気持ちにもなりましたが、ものごとは、より多面的に見た方が、本質が見えてくると思うので、私のような人間にとっては、とてもためになったように思います。

 

  

 ある意味で日本は市場経済をとるには、礼儀正しすぎるのかもしれない。日本が経済を復活させるためには、どうあっても敗者を作り出す必要がある。・・・(中略)・・・しかし、日本は敗者を作るという考えに強い不信感を抱く。

 

 日本は、相変わらず、根本的なレベルで、ある優しい非効率性にのめりこんでいる。

 

 日本における容赦ない効率という新しい波が経済にとってのたくましい兆候となるだろうが、しかし今のところ日本がその魂を売って生産性を高めようという兆候は殆どみられない。

 

 

 今、ワーキングプアや格差が話題になっているということは、この本が書かれて10年の間に、日本が少しは効率を優先させた結果だったということですね。そして敗者が生まれたということは日本の経済が復活する兆しくらいは見える時期にきているということなのでしょうか。小泉改革とはこのことだったのか・・・。やはり小泉さんはアメリカに近い視点で動いたんですね。

 

 そうかぁ・・・。

 

 私は今、日本の経済が再生する兆しが見えないのでよけいに思うのかもしれませんが、アメリカの論理が時代遅れと笑えるような、そんな新しい価値観で誰でも(どの国でも)よいから成功してくれないかなぁ。ま、それが日本だと一番すばらしいのだけれど、今の日本の社会に、それは期待できないから、誰かが成功してくれればそれに追随することくらいはできるんじゃないかなと、姑息なことを思ったりしたのでした。