本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

無芸大食

2010-05-24 | 小説
無芸大食―Tanabe Seiko Collection〈6〉 (ポプラ文庫)
田辺 聖子
ポプラ社

このアイテムの詳細を見る

 

 本好きの友達がおいて言ってくれた1冊です。

 

 自分で本を選ぶと、貧乏性の私は、どうしても”自分の血肉になりそうな”ものをなんて思ってしまって、結局、偏食気味になっちゃうので、こういう一種、押しかけ的に私の手元にきた本を読むのもいいなぁというのが感想でした。

 

 

 食にまつわるお話を、若いとはいえない男女のちょっとした機微みたいなものと絡ませて、田辺聖子ってあんまり読んだことないんだけど、やっぱり美味い(って言う字になるような内容です)!

 

 定年まで数年というよくできた独身OLの話や、課長からヒラに降格になって、嬉々としている中年男の話、離婚して男やもめの人暮らしになっても、”それなり”にちょこっと料理なんかをして満足して暮らしている男など、世の中では、”負け組み”と言われそうな”小市民”が主人公の短編集です。

 

 ”あとがきにかえて”ということで、著者のインタビューを編集したような文章がのっているのですが、そこで、

 

 ”日本の小説は色気があまりないのね。色気っていったら、あっちの方ばっかりになっちゃうけれど、そうじゃなくて、ただ男と女が二人いても色気はでるもんなんです。そういう色気を書く人があまりいないわね。二人だけのときにたちこもる色気、とか。浸りで「食べようかこれ、おいしそうやないか」「でもひとつしかないねん」「割ったらええやん」ってね。”

 

 って語っておられます。確かに、こういうのを色気というのかどうか分からないんだけど、これから高齢化社会になって連れ合いをなくした人、結婚しない人、離婚した人などシングル率が増えていっているこの社会で、今更結婚でもないけど、一緒にご飯食べる異性がいたら、ちょっと嬉しいって、その程度の色気が必要よ!っていう感じ、わかる気がします。 

 

 さらさらって読めちゃって、後味もいいけれど、絶対に勝間和代は読まない本というか、カツマー的には絶対に目指してはいけない姿かも。(とはいえ私自身が勝間和代は読まないことにしているので、噂から勝手に想像しました。) 


ラジオキラー セバスチャン・フィツェック

2010-05-22 | 小説
ラジオ・キラー
セバスチャン・フィツェック
柏書房

このアイテムの詳細を見る

 

 うわぁ、面白かった!

 特にこれといって読む本がなかったので、この前読んだ”治療島”が結構面白かった著者の本で図書館を検索してみたら、この本が予約入っていなかったので借りてみただけなのです。だから 全然期待していなかったので、すっごく得した気分です。

 これぞノンストップ!

 ラジオ局のスタジオに人質をとって立てこもった犯人は、生放送で自分の犯罪を中継します。犯人の要求は、消えた恋人を探してつれてくること。それまでの間に、1時間に1度無作為に電話をして、電話に出た人がパスワードをいえなかったら人質を殺すというゲームを始めます。

 誰が嘘をついているかは、私のような鈍い読者でも割りと早くに見破れるのですが、それでもストーリー展開が読めない。

 犯人だけでなく、交渉人となったイーラと自殺した娘ザラの間に何があったのかも知りたくて、ページをどんどんめくってしまいました。

  治療島も心理学者(というか精神科医だったかな?)が主人公でしたね。よくわかりませんが、著者自身がそちら方面のバックグラウンドがあるのでしょうか。

 とはいえエンターテイメントですので、読み終わってみたら深い何かがあったというわけではなく、 また心理学、医学的な見地からみて信憑性があるのかどうかもよくわかりませんが、それでも読んでシチュエーションに入り込めて、あー面白かったですっきりとして終われるし、またこの人の本読んでみようと思いました。

 なんとなく、ドイツ系の本、最近面白くなってきたような気がします。


えっヘン 藤田紘一郎

2010-05-09 | エッセイ
えっヘン
藤田 紘一郎
講談社

このアイテムの詳細を見る

 

 医療関係の本には結構興味があります。

 

 帯には、

 ●病院によって80%の差が開く、がんの「生存率」

 ●ついに出た!「精液アレルギー」の女性

 ●風邪に抗生物質を処方する医者と金儲け

 

 なんてことが書かれており、お!なんか面白そうと思って借りて読んでみました。

 

 著者自身は、ちょっと変わり者のお医者さんです。1939年生まれですから、今年71歳。というと、まあそんなに”おじいちゃん”ではないのですが、読んでいくと、最初は痛快で面白いのですが、後半に行くに従い、やや年寄りの繰り言っぽくなってきて、読後感はあまりよくなかったです。

 

 別にわざわざ選んだわけではないのですが、この間読んだ、”カビの常識、人間の非常識”という本の内容と結構重なっていて、人間に備わっている自然治癒力を支える免疫力が、いまの日本人の清潔志向で、どんどん弱まっているというのが著者の信念で、それに照らして考えると、今の日本の医療現場やまた日常生活で、”ヘン”なことがいっぱいあるということで、どこかにエッセイとして連載されていたのをまとめられたのが本書ではないかと思います。

 

 お勉強ができるから医学部を受験して、医者になるという現在の状況ではできあがった医者がヘンなのは残念ながら必然ですね。

 

 もっともっと免疫力をつけるために、子供たちはもっと自然や泥んこの中で遊ばせて、そこそこ虫に刺されたり、多少は悪いものを食べて、食あたりして食べられるものと食べられないものを経験から覚えていけというのは本当だと思うんですよね。

 

 私もね、昔、インドに行ったときに、人間はこれでも生きていけるんだと実感し、日本の清潔さはある意味、異常だなぁと感じたものです。

 

 でも、じゃあどこで線引きをすればいいんでしょうか。そこを教えてほしい。

 

 ”不潔な”環境で生きることや、抗生物質をなるべく使用しないことで、全体として免疫力は上がり、アレルギーも減るだろうし、少々のことで病気にならない体になるだろうという事は同意したとして、でも、それでも少数ながら重症化して死んでしまう人は残るわけですよね。

 

 こういう人は、”運が悪かった”で、済ませられるのでしょうか。少なくとも他人事ならできそうですが、自分の子供だったりしたときに、あきらめられますか。

 

 医療に限らず、そういう少数派を切り捨てられないことが、全体として社会を”ヘン”な方向に向かわせてしまっているというのはあるんじゃないでしょうか。

 

 それに、藤田先生、キレイ好きが、現在の少子化の原因だとまで言い切るのはどうも・・・。確かに、家に帰って石鹸で何度も手を洗うような潔癖症の人とセックスってどうも結びつかなさそうですし、それに、生まれてきた子供たちが、食中毒や感染症で結構死んでいく社会なら、きっと日本人でも動物的本能でもっと子供産むんでしょうが・・・。

 

 テレビのトンデモ科学的健康情報の怪しさについてもいろいろ批判されているのですが、先生自身が本書の中で示された様々な説(”笑わない赤ちゃんが増えてきた”、”すぐにケガをすることもが増えてきた”、”ストレスによる舌痛症が激増”など)も、どういう調査を行って出てきた結果なのかが示されておらず、”藤田先生の言う事だから正しい”という判断以外では信用できない情報をさらっと書いておられるんですよね・・・。

 

 そういうところが、鼻について、前半のいろいろおもしろかった主張も忘れてしまったという残念な読書でした。

 

 


告白 湊かなえ

2010-05-08 | 小説
告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)
湊 かなえ
双葉社

このアイテムの詳細を見る

 

 これって、去年の本屋大賞受賞作ですね。1年遅れで入手しました。

 

 最近、ベストセラーは敢えて読まないようにしてましたが、なんとなくこの本はずっと気になっていて、GW直前、休みの間に読もうと購入しましたが、1日目で読み終わってしまいました・・・。

 

 衝撃的と聞いていましたが、構成は、ある事件を巡って、何名かの関係者の目からみた状況を独立した章立てにして書いていくというもので特に珍しいものではありませんが、設定の方は確かにかなり衝撃的でした。

 

 ある女性教師の娘が学校で殺され、彼女は学校を去るその日に、娘はこのクラスの生徒に殺されたんだと教壇で淡々と話す。犯人を知っているのになぜ警察へ言わないのか、また恨んでいるならどうして直接対決しないのか・・・。

 

 そんな疑問を抱きながら読んでいくと、事件はいろんな様相を見せてきます。

 

 当たり前のことだけれど忘れがちなこと。ひとつの出来事も、見る人の目によって様相は全く違う。そういうことを地味に楽しみながら読んでいくと、最後にどーん!とこれぞエンタテーメントという展開になっちゃいます。

 

 うゎ・・・こう落とすかと、ある意味新鮮で驚きましたが、ある意味ちょっと物足りないというんでしょうかね。それまでのいろんな人物の事情からくる心の動きなんかが全部頭から飛んでしまって、最後は単純にビックリでした。

 

 とはいえ、すごく読みやすくて、飛行機や新幹線なんかで移動時間が長いときなんかに一押しの作品です!

 

 私が買った本の帯には映画のPR用に主演の松たか子を中心に、木村佳乃と岡田将生という若い俳優の写真がのっておりました。木村佳乃って、犯人(中学生)のお母さん役!? えぇもうそんな年な・・・んだ。ちょっとショックです。そして、見たこともない(スミマセン)岡田将生クン、写真から生徒かと思ったけど先生だった・・・。いやぁ、熱血先生といえば山下真司かと思った・・・なんて古すぎですね。


世界日本誤博覧会

2010-05-05 | その他
世界ニホン誤博覧会 (新潮文庫)
柳沢 有紀夫
新潮社

このアイテムの詳細を見る

 

 笑えます。

 

 海外で見かけるヘンな日本語の大博覧会。

 

 1992年”日本語でどづぞ”と書かれた看板をオーストラリアケアンズで見つけて以来、著者はそのおかしさのとりこになったんだそうです。この本の前に、そのものずばりの”日本語でどづぞ”という本を出版されて、本書はそれに続く第2弾のようです。

 

 いろんなバージョンがありますが、単純な文字の間違い、例えば、「高級つジン服」(婦人服)とか、”ハイゲレード”(ハイグレード)、”おいしさアツつ”とか、短くてもパンチが効いていて、個人的には好きです。

 

 私も以前、ベトナムで、”ビスケトツ”というのをお菓子屋さんの店先でみつけたことがあって、写真にもとりかなり土産話として長い間活用させていただきましたが、いろいろあるもんですねぇ。

 

 すごいのは、台湾土産のCDにあった、”知尿旅情”

 

 まあ”尿”と”床”は似ているといえば似ているから仕方ないかとも思うんだけど、ひらがな、カタカナならいざしらず、漢字だから分かりそうなもんじゃないのかなぁ。

 

 また、正しいとか間違いとか言うレベルをはるかに超えているのが、中国製さきいか”のパッケージに印刷されたコピーの数々。

 

 ・ニホンの風情 タコふりかけ   

  -- いや、タコじゃなくてイカで、ふりかけじゃないし・・・

 ・新鮮ないわしを   

  --いや、いわしじゃなくて、イカなんですって、しかも いわしどうしたのよ?

 ・本かつお風味  

  -- かつお風味のさきいかは、ぎりぎり ありですか?

 ・こざかないっぱい 

  -- いや、小魚じゃなくてイカですから

 

  と、ここまでは、なんか勘違いしちゃったのねと、のほほんとした気持ちにもなるのですが、最後に

 

 ・ふっくらと炊き上げた紫芋を、まろやかなパイ生地で包んだ風味豊かなお饅頭です

 

 何度も書きますが、さきいかのパッケージ。著者もどうしてこんなことになるんだろうと、自分の周囲にいる中国人に聞いて回ったところ、"ニホン語”の雰囲気がでていれば、誰も意味なんかわからないからいいんじゃないの?というような反応だったそうで、恐るべし中国人!

 

 つまり内容なんてどうでもよくて、日本製の食品のパッケージについていたコピーそのものを適当にパクッてるってことですね。 

 

 さすが、コピー大国。

 

 それぞれの日本語に著者が突っ込んでいるコメントもおかしくて笑えます。

 

 とはいえ、ニホンにも未だにヘンな英語コピーがあるし、地元の結構有名なフランスパンのお店に書かれたフランス語を読んで、フランス語をかなり話せるベルギー人が、へん!といってましたから、人の振り見てわが振りなおせということかもしれないし、まあそんな風に纏めなくても、ゲラゲラ笑ってすっきりすればいいんだとおもいます。

 

 とにかく、笑いたいときにお勧めの一冊です。  


カビの常識 人間の非常識

2010-05-04 | 評論
カビの常識 人間の非常識 (平凡社新書)
井上 真由美
平凡社

このアイテムの詳細を見る

 

 著者は1918年生まれで、本書は2002年に出版されておりますので、御年80歳頃に手掛けられた著作ということになるのでしょうか。

 

 お名前からして、女性だと思われますが、今ではもちろん女性の研究者といって驚くことはありませんが、このお年で北海道大学農学部農芸化学科卒業にはじまり、1967年に井上微生物災害研究所設立という経歴を読むと、本の中身より著者の人生の方に興味がわいてきてしまいます。

 

 カビについての常識がいかに認知されていないかということをいろいろな実例を挙げて説明されています。

 

 今では、カビをはじめとする最近や微生物類が人間が健康に生きていくためにいかに重要かということについては結構社会的認識は高まってきていると思うので、この中で指摘されていることはそれほど目からウロコというような内容ばかりではありません。

 

 が、やはりまだまだ、非常識ははびこっているからこそ、アトピーやアレルギーの子供たちが巷にあふれているんでしょうし、この分野の研究がどんどん進んで、著者も指摘しているように10年、20年後には、がんやアルツハイマーをはじめとする、各種の病気に対するアプローチがころっと変わっているのかもしれません。

 

 あまりきれい好きではない私としては、社会全体がクリーンルームみたいな近未来ではなさそうだなぁと思えるだけでも希望の持てる本でした。