五月は日本三大祭りなど各地で大小様々な祭りが行われる月。僕は秋祭りの方に親近感を覚えるが、それでもやはり子供の頃の血が騒ぐ。
宵に寝てまた醒めし祭かな 中村草田男
子供の頃の思い出の句であろう。近くのお宮のお祭りで、笛太鼓の祭囃子が聞こえてくる。御神輿も出た。いつもはひっそりしている町並みも今日は賑やかだ。幼い日の作者は朝からはしゃいでいた。お兄ちゃんたちがかつぐ子供御輿の樽みこしの行列について歩いたり、神社の境内に並ぶ物売りの店をのぞいたり、一日中、遊びほうけた。
日の暮れ、軒先の祭提灯に灯が入る頃にはすっかりくたびれている。「子供は早く寝るんですよ」と言われるとすぐ寝床に入った。気持ちはたかぶっているのだが、疲れでいつの間にかぐっすり眠ってしまったのだった。ふと目が覚めて、もう朝かと思ったのに、隣の茶の間にはあかあかと電灯がともり、外を通る人の声や足音が聞こえてくる。まだ宵の口なのだった。子供は祭りの賑わいが気になって仕方がない。大人たちは何をしているのだろう。起きて出たいのだが、親に叱られることが分かっているので、一所懸命、目を閉じてもう一度寝ようとするのだった。
子供の頃の懐かしい思い出である。