自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

美しき五月

2012年05月12日 | Weblog

  美しき五月という常套句がある。
 美しき五月のなかでも美しいのは陽光に輝く若葉であろう。

   朝の髪結ふ肘高く柿若葉   岡本 眸

 主婦が割烹着姿で手を拭きながら見上げる柿若葉。柿若葉は、楓の若葉などと異なり、庶民的な若葉だ。やや分厚な葉が不透明な緑の影をつくる。農家の庭にあったり、裏庭にあるのがふさわしい。その他に、盛り上がるような樟若葉も美しい。楢や橡などの雑木林がいっせいに芽吹き、若葉するときの美しさには喜びを感じる。
 五月の味覚では蚕豆(そらまめ)。冷凍や温室栽培の多いなかで莢(さや)のついた蚕豆は天日のあたる畑で収穫された野菜だ。ひとかかえにもなるのを買ってきて、莢をむく。

   そら豆はまことに青き味したり   細見綾子

 蚕豆は甘く煮たり、飯に炊き込んだり、いろいろの食べ方があるが結局は塩茹でに限る。魚では初鰹。鯵もしゅんに入った。

 ところで、美しき五月という常套句は、本来は冬が長く、春が来るのが遅い北国の言葉だろう。日本ならば北海道。梅、桃、桜、ライラックなどがいっせいに咲く五月。メーデーも本来は冬が去り春が来たことを喜ぶ、英国の春祭だ。英国の清教徒が初めて米国に渡った船の名がメーフラワー号。メーフラワーとはサンザシの花だそうだ。

 心も身体も快い五月、空気も乾いていて風も明るい五月、のはずが、今年は天候不順でやたらに暑かったり、雨の日が多かったり、緑の風が薫らない。これから先の五月に期待する他はない。