クチナシの花が独特の強い香りを放っている。
20年ぐらい前の科学雑誌を見ていたら、興味深い記事に出会った。このクチナシの花を用いた実験がある。
例えばバラに含まれるシトロネロールという香料成分をクチナシの葉に吹き付けると、特定の反応がある、というのだ。つまりクチナシは、匂いを「知る」機能を備えているということだ。クチナシに限らず、程度の差はあれ、それぞれの植物がそれぞれの匂いに反応した。しかも極めて微量の匂いをかぎわける力をもっていることが分かった。この力を応用すれば、植物による匂い感知器が実現する。果物や魚肉の生鮮度を見抜いてくれる測定器などが出来るかもしれないという。「まだ夢のような話なんですよ」と専門家は言う。
植物は音にも反応する。騒音を流すと生体電位なるものに特定の反応があるし、音楽を流すと別の反応を示す。太鼓の音や雅楽のような音楽の時は反応が大きいが、モーツアルトの場合はむしろ少ないという。この差が何に依るのかは定かではない。
ただ、植物には「鼻」も「耳」もあるということは確かなようだ。
ポプラは虫に襲われると大気中に苦味をもったガスを出す。それを「知った」周りのポプラも苦味をもった物質を出して虫を防ごうとする。
こういった研究は20年ぐらい前のものであるが、その後研究はどのように進んだのであろうか。いずれにせよ、僕らは植物のことをもっと知る方がいいし、植物の立場をもっと尊重する方がいいことは確実である。