ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

フランソワ・トリュフォーの『あこがれ』を観て

2020年02月23日 | 1950年代映画(外国)
フランソワ・トリュフォー監督の短編『あこがれ』(1958年)を観た。

フランスののどかな田舎町。
若い女性ベルナデットが自転車で町や林道を颯爽と走る。
ひるがえるスカートからのあらわな脚。
少年たち5人は、ベルナデットが走るのを夢と欲望をもって見る。
ベルナデットが木に自転車を立て掛けていけば、走りよりサドルに鼻をつけ、彼女の匂いを嗅ぐ。
ときめきと官能のうずき。

ベルナデットの恋人ジェラールは、体育の先生をしている。
二人がデートしキスをしている所を見つけると、少年たちは追いかけ冷やかす。
5人にとって、二人の現場はとっておきの遊び場に変化する。

休日にテニスをする二人。
少年たちはそこへ行って、短スカートからベルナデットの脚がむき出しになるのを楽しむ。
ボールが柵を越え、彼女が近づいてくると、汗ばんだシャツの匂いに気が遠くなるほどの陶酔を味わう。
その瞬間の幸福のために、彼らは毎週集まる。

5人は、ジェラールとベルナデットの幸せそうな様子を見て、敵意を抱くようになる。
そして、木の幹、橋の手すり、壁へ二人の婚約をばらすために書き散らす。
その心理が、本当は恋だとはまだ幼くて分からず、二人に復讐したつもりでいた。

敵意はさらに増し、映画館で二人がキスした時に騒ぎ立て、大いに打撃を与えたつもりで逃げた。

8月の午後。
恋人たち二人は、近くの森に自転車で出かけた。
5人は、不意を襲って恥ずかしめようとする。
抱き合う二人にそっと近づき騒ぎ立てる。

駅のホーム。
ジェラールは、「3ヶ月後には戻って結婚式を挙げよう」と言い、列車で出発する。

少年たちの夏休み。
5人は、二人の幸福をぶっ潰し、復讐の決着をつけようとする。
男と女がみだらに抱き合う絵ハガキを買い、思いつく言葉を書いて郵便受けに入れる。

ジェラールが山の遭難事故で死亡する新聞記事を読む。

ジェラールの死は遠ざかり、忘れられた頃の10月のある日、黒衣のベルナデットが目の前を通る。

思い出は、今でも切なくよみがえる。
少年期の自分たちから消えた、彼女の面影、さわやかに走る自転車、ひるがえるスカート。

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