ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『フィリピンパブ嬢の社会学』を観て

2023年12月15日 | 日本映画
来年2月から封切られる『フィリピンパブ嬢の社会学』(白羽弥仁監督、2023年)が、ご当地作品のために先行封切りされている。
舞台が隣町ということもあって、興味津々の思いも絡んで観てきた。

2010年代の愛知県。
大学院で国際関係学を専攻する翔太は、在日フィリピン人を理解しようとの思いからフィリピンパブでのフィールドワークを思い立つ。
研究計画を読んだ指導教員から好反応を得て、名古屋市の繁華街・栄にあるフィリピンパブへと足を踏み入れるが、
そこは「ゆとり世代」の翔太の想像をはるかに超える「事情」を抱えたパブ嬢たちが待つ場所だった・・・
(パンフレットより)

翔太は修士論文の研究論文のために、見慣れないフィリピンパブへ足を踏み入れる。
そこで接客してくれたのがミカ。
翔太は研究のためにミカに質問責めをするが上手にはずらかされ、挙げ句、翌日からはミカの営業電話が掛かって、指名してまで行くことになる。

学生の翔太にとってパブの料金は大きな出資である。そこへまたミカから電話が入る。
金がない翔太に千円でいいから店に来て、とミカは誘う。
それっぽちの料金のはずはない、騙されたつもりで七夕パーティー行った翔太に、会計料金は本当に千円のみだった。
ホッとした翔太は、お礼にミカをデートに誘う。

このようにして二人に徐々に信頼が芽生え、心が溶け始めて互いに恋心が募り出す。

作品は、二人のほのぼのとした愛に向かっての、その背景にある、外国人がなぜ日本で稼ごうとするのか、
その裏での本人たちに対する制約・掟もヤンワリ提示する。
それと対になって際立つのが、フィリピン人と日本人の物事に対する思考の違いと家族関係の違い。

苦境の中にあっても、何事に対しても明るいミカは言う「大丈夫、何とかなる」。
それを聞いて、「ああ、そうだね、あんまり物事くよくよ考えちゃダメだね」と観ている我々も背中を押される。

ご当地作品という言葉、なぜか軽さを感じるところもあるが馬鹿にしてはいけない、とっても心暖まるいい映画だった。

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『法廷遊戯』を観て

2023年12月12日 | 日本映画
1週間前になるが、『法廷遊戯』(深川栄洋監督、2023年)を観てきた。

弁護士を目指してロースクールに通うセイギこと久我清義(きよよし)と、同じ学校で法律を学ぶ幼なじみの織本美鈴、
2人の同級生でロースクールの学生たちが行う「無辜(むこ)ゲーム」と呼ばれる模擬裁判を司る天才・結城馨は、
共に勉強漬けの毎日を送っていた。

無事に司法試験に合格し、弁護士となった清義のもとに、ある時、馨から無辜ゲームをやろうという誘いがくる。
しかし、呼び出された場所へ行くとそこには血の付いたナイフをもった美鈴と、すでに息絶えた馨の姿があった。
この事件をきっかけに、3人をめぐる過去と真実が浮かびあがっていき、事態は二転三転していく・・・
(映画.comより)

結城馨はすでに司法試験に合格しているのに敢えてロースクールに残り、なぜ模擬裁判「無辜ゲーム」を執り行ったのか。
その目的が、後々で徐々に掘り起こされていく。

久我清義と織本美鈴は、親からの虐待により同じ児童養護施設で育ち、支え合ってきた仲だった。
そんな美鈴が、そこの施設長から性的暴行にあう。
それを目撃した清義は、ある時行動に移す。

高校生の頃、電車の中で痴漢された美鈴は、なかったことにして欲しいと相手から金を掴まされる。
それをキッカケとして清義と美鈴は痴漢のゆすりを働いていく。

ある日、美鈴が痴漢を仕向けた相手は現役の警察官だった。
しかしその警官は、痴漢をしたと社会的に葬られ、挙げ句は精神を病み自殺する。

この警官が他でもない馨の父親だったという事実。
だから馨が何を目的として、「無辜ゲーム」以下を行なったのかが明らかにされていく。

しかし物語は、平坦な単純化にはされない。
もう一癖あって、成るほどそうなのか、と最後になる。

この作品の原作本は読んでいないが、それにしてもよく出来た見応えのある満足できる映画だった。
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