ポケットの中で映画を温めて

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『ゲルニカの木』を観て

2017年07月05日 | 1970年代映画(外国)
『ゲルニカの木』(フェルナンド・アラバール監督、1975年)のDVDがブック・オフにあった。

内戦時のスペイン。
ファシスト反乱軍がスペインのほぼ全土を制圧する中、ゲルニカに近いラミロ村もファシスト軍に包囲された。
そんなラミロ村に、ゲルニカ大空襲を逃れた一人の女がやってきた。
彼女は村人たちを鼓舞し、徹底抗戦を呼びかける。
激しい戦闘が続き村人たちも善戦するが、ついに村はファシスト軍の手に落ちる。
そして、村人たちは、次々に処刑にかけられるのであった・・・
(DVDパッケージより)

1936年7月。
スペイン軍の将軍グループが、スペイン第二共和国政府に対してクーデターを起こす。
結果、スペイン内戦が勃発する。
翌年4月、ヒトラーのドイツ空軍が、フランコ側を援助するためゲルニカに無差別爆撃をする。
現在、ピカソの「ゲルニカ」として記憶に留まるこの事件では、市民数百人の命が奪われた。

かろうじて、ゲルニカ空爆を生き延びたバンダールは、危険が迫るラミロ村で反ファシズム運動に身を投じる。
民衆が立ち上がるのを、苦々しく思う村の伯爵。
その伯爵の息子ゴヤは、頼りない男だが反権威主義な考えを持っている。
その彼がバンダールに出会い、彼女の行動に共感する。

片や、このスペイン内戦において、教会はファシスト政権を容認している。
このことは結果、スペイン国民の間に宗教的、民族的対立を招くことにもなった。
それを踏まえ、この作品にはキリスト教批判もえげつない程に散らばっている。

かと思えば、ロバに乗ってラミロ村へ入村するバンダールは、イエスの投影だろうし、
ファシストに拷問されたゴヤを、悲嘆に暮れたバンダールが抱きかかえる場面には聖母マリアを連想し、キリストに対する憧憬も垣間見える。
いずれにしても、当時の実写を挿入してのパロディ的な映像は、ファシストに対しての痛烈な皮肉を練り混ぜる。

ラスト。ファシストの手から逃れて、ラミロ村を脱出するバンダールとゴヤ。
“再び、自由が訪れるまであきらめはしない。ゲルニカの木のように希望は永遠に生き続ける”という、力強いメッセージ。

自由の象徴として、現在は4代目オークの“ゲルニカの木”が、スペインはビスカヤ県の、そしてバスク地方全体の自治の象徴となっている、という。

作品としては、アラバール監督が、ホドロフスキーらと共に「パニック芸術運動」を起こし、その一連としての、どちらかと言えばマイナーな映画である。
でも、一風変わっていても、スペイン内戦の一寒村を舞台に、そこに暮らす人々を絡めて戦争の惨さを描こうとする態度は無視できない。
そして、あのホドロフスキーに影響を与えたというからには、やはり興味もそそられる。

その、ホドロフスキーについては、いずれどこかで書いておかないとまずいかな、とも思っている。

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