ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『バルド、偽りの記録と一握りの真実』を観て

2022年11月26日 | 2020年代映画(外国)
『バルド、偽りの記録と一握りの真実』(アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督、2022年)を観てきた。

ロサンゼルスを拠点に活躍する著名なジャーナリストでドキュメンタリー映画製作者のシルベリオ・ガマは、権威ある国際的な賞の受賞が決まり、母国メキシコへ帰ることになる。
しかし、何でもないはずの帰郷の旅の過程で、シルベリオは、自らの内面や家族との関係、自らが犯した愚かな過去の問題とも向き合うことになり、
そのなかで彼は自らの生きる意味をあらためて見いだしていく・・・
(映画.comより)

この作品は来月になればNetflixで配信されるが、イニャリトゥの最新作となれば観ておきたい気があって劇場へ行ってきた。
結論から言うと、正直相当しんどかった。
映像の面白さ、例えば幻想的な場面とかシュールな感じも漂わせたりするかと思えば、一転してスラップスティックなギャグがあったりして、目を見張るものがあった。
ただ、内容的には、観る側からの理解度意識は無視してのイニャリトゥの心情表現を強く出してくる。
なので、会話内容のイメージに付いていけなくって、瞼が重くなる時間が相当あり、2時間40分の上映時間はたぶんに苦痛を強いられる思いだった。

この作品雰囲気は、どこか『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)に近いものがあったりするが、
私としては『バベル』(2006年)や『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015年)のようなメリハリの利いた作品の方が好きだなと感じた。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ノベンバー』を観て

2022年11月20日 | 2010年代映画(外国)
『ノベンバー』(ライナー・サルネ監督、2017年)を観てきた。

エストニアのとある寒村。
貧しい村人たちの最大の悩みは、寒くて暗い冬をどう乗り切るかだ。
村人たちは“使い魔クラット”を使役し、隣人から物を盗み合いながら、必死になって生きている。
クラットは牛を鎖でつないで空中に持ち上げ、主人の農場に届ける。
クラットは農具や廃品から作られたもので、操るためには「魂」が必要となる。
「魂」を買うために森の交差点で口笛を吹いて悪魔を呼び出しては、取引をするのだ。
悪魔は契約のために3滴の血を要求するのだが、村人たちはそれすら勿体無いと、カシスの実を血の代わりに使い悪魔をも騙す。

時は「死者の日」を迎える11月1日。
死者が蘇り、家に戻ってご馳走を食べ、貴重品が保管されているかを確認する。
死んでもなお、欲深い村人たち。若くて美しい娘リーナも死者の一人である母親と束の間のひと時を過ごす。

リーナは村の若者ハンスに恋をしているが、強欲な父親はそんなことは露知らず、豚のような農夫エンデルにリーナとの結婚を約束してしまう。
一方、ハンスはドイツ男爵の美しい娘に一目惚れ、リーナには歯牙にも掛けない。
ハンスが別の娘に夢中なのを知ったリーナは、村の老いぼれ魔女に相談をする。
魔女はリーナに矢を渡し、これを娘の頭に刺せば脳みそがこぼれ出るだろうとほくそ笑むのだった。

ある夜、男爵の館の様子を伺っていたリーナは、館の屋根に夢遊病者のような状態で歩いている男爵の娘を発見する。
リーナは屋根から落ちてしまいそうな娘を黙って見過ごすことはできずに助け出す。
そんな時、ハンスは雪だるまのクラットを作り、3つのカシスを使い悪魔を騙そうとする。
その策略に気づいた悪魔はクラットの魂をハンスにくれてやる代わりに、ハンスの魂を奪い取る。
ハンスはクラットを使って男爵の娘を連れ出そうと試みる。
だが、クラットは「人間を盗むことはできない、できるのは家畜と命を持たない物だけだ」と悲しげに答えるのみだった・・・
(オフィシャルサイトより)

長々とあらすじを紹介した。
と言うのも、この作品はことの前後の説明は極力省略されていて、観ていてこれはどういうことかな、と疑問やら不思議に思うことがしばしばあった。
だから事前に内容を、それも具体的に知っていれば、より一層楽しめたのではないかと思った。
しかし映画は、なんの予備知識もなく観るのが本来の鑑賞の仕方ではないかと考えるので、やはり場面場面の繋ぎの説明を作品の中で教えてくれないとまずいなぁと思ったりもした。

だからつまらないかと言えばそうでもなく、なぜか不思議な魅力を持っていた。
これってなんだろうと振り返ると、それは映像美から来ているからではないか。
モノクロ画面の美しさは目を見張るものがあり、見ていて飽きが来ない。

東欧エストニアの、そこの神話に登場する「クラット」という使い魔、“すべてのものには霊が宿る”というアニミズムやキリスト教も絡んでの、村の娘と若者、それに男爵の娘のお話。
最高とは言わないけれど、貴重なものを観たという満足感も味わった作品だった。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする